『豊中智樹はしたり顔 第一話甲子園が泣いている!反則野球部と恐怖のコルクバット!の巻』前編

街外れの山の上、そこにぽつりと建つ学校!

      『由北高校』
 
 部室棟二階の一番奥、彼はいつもそこに居る!
    
   彼こそがこの物語の主人公!
  その名を 「豊中 智樹」(とよなか ともき)

新聞部部長!豊中智樹の体当たり取材が今始まる!

1話
 
 甲子園が泣いている!反則野球部と恐怖のコルクバット!


<部室棟>

部室棟二階新聞部部室、豊中智樹は写真を見つめていた。
年頃の彼だが別に意中の相手というわけではない。
その写真は野球部部長「ガメラ 梅井」のものだ。
机に壁、部屋中に野球部の写真やプリントされたニュースサイトの記事が散乱している。

「おかしい・・・うちの野球部がこんなに強いはずがない」

由北高校はお世辞にも野球が強いとは言えない。
創立からそれなりに歴史はあるが甲子園はおろか地方予選を通過したためしもなかった。


そう、絵に描いたような弱小高校だった・・・梅井が部長になるまでは。


梅井の代になるやいなや、近隣の高校を千切ってはなげ千切っては投げの快進撃。
瞬く間に地方予選の決勝まで駒を進めた。

「間違いない!こいつは”黒”だ!俺の直観が告げている!!!」

由北高校野球部部長「ガメラ梅井」!次の取材相手は彼に決まりだ!

<グラウンド>
 翌日
野球部は昼休みもいつも練習している。
後輩を一列に並べてバット片手に熱心な指導する坊主頭。
傍らには女子マネージャーを付け、いかにもスタァといえる。          

「あんたが野球部部長ガメラ梅井かい?」

豊中智樹はいつも偉そうだ。一応敬語は使えるのだがそれも形だけである。
そんな彼の座右の銘は
         
         『俺が悪いわけがない』
                    
世界広しといえども、一点の曇りなくこの言葉を掲げられるのは彼ぐらいのものだ。
「なんだおまえはいきなり」
当然の対応である。

「こいつぁ失礼、俺は新聞部部長2年A組豊中智樹ってもんさ」
「新聞部?なんだい取材か、へへずいぶんと遅せぇじゃないか。もうとっくに地方新聞もニュースサイトにも載ってるってのによ」
「生憎俺は腰が重くてね。あんたらが持ってるバットみてぇに軽かったらいいんだが」

部長が握るバットを指さす。それと同時に周囲の空気がガラリと変わる。

「予選はすべて一回戦敗退、たまに二回戦に行ったかと思えば基本は不戦勝。お情けで貰ったシード枠でも333対4の大差で負ける始末。そんな弱小高校がなんでいきなり強豪高校も初戦で打ち負かすほどになったのか、ぜひ聞かせてもらいたいね」
「おまえ・・・まさか俺たちが不正でもしてるっていいたいのかい」
「そんなことこれっぽっちも思っちゃいないさ、ただあまりにあんたらが軽そうに素振りしてるんでね。中身が詰まってんのか気になってんのさ」

失礼な客の登場に加えこの挑発、ガメラ梅井は組織を治める立場であるが堪らず怒る。

「いいかブン屋さんよぉ、俺たちはな来る日も来る日も朝から晩まで厳しい練習をしてるんだ。その部員たちの努力を否定するってんなら許すわけにはいかねぇぜ」
部長が右手を上げると部員たちが集まってきた、これが由北高校野球部のハンドサインだ。
「おい野郎ども!この生意気なブン屋さんに俺たちの練習を体験をしていただけ!」

  ヘヘヘ・・・カリニュウブダァ・・・                 
                   コロセェ・・・コロセェ・・・   
          シンダゼオマエ
   ヒサシブリニチガミレルゼ        ナイタッテユルサネェカラナ

豊中はグラウンドの中央に連れていかれた。

「それで?俺は何をすればいいんだい?素振り一万回?うさぎ跳び3時間かい?」

豊中を取り囲む野球部員たちは何も言わない。ただニタニタと嗤う。

「おっ来たぜ・・・へへへ地獄のはじまりだぁ」

部員たちの壁が割れる.

その奥からなんと一台のジープが現れたでありませんか。

グラウンドを均すためのトンボを後ろに括り付けた特製ジープのエンジンが吠える!!!

     ブロロロロロロロロロロロロロロロロロ!!!!!!!!!!

        ジープは豊中を目掛けアクセル全開!
    
          しかし我らが豊中寸前で躱す!

          「うぉ!安全運転しなよ!」

 
部長はグラウンドの外から不敵に笑う。

「せいぜいがんばってトンボ掛けしてくれよ新聞部・・・おい!おまえら死体はいつもみたいに焼却炉に放り込んでおけ。俺は少し席を外す」
部長は闇に消えた・・・

一方グラウンド

 ウワアアアアアアアア    
           コロセェエエエエエエ
   ヒキニクニシテヤレェ!

ヤッチャエヤッチャエ!!        ニゲロニゲロォ!

豊中はジープをギリギリで躱し続ける!

だが豊中も人間、体力は徐々に削られていく。

「ほれほれどうしたぁ!どんどん元気がなくなってるぜブン屋さんよぉ!」

ワァァァァァァァァァッァァッァァァァァ!!!!

早急に勝負をつけなければ。
豊中は避けながら拾ったバットとボールを手にジープの前に立ちはだかる。

「なんだぁ?そんな棒っ切れと硬球でジープに勝つつもりかよぉ!!」

豊中は無言でただ前だけを見つめる。

 ザワザワ
             バカナヤツダゼ
     オイオイイカレチマッタノカァ

ボールを天高く投げ上げる。

オッオイ       ヤルキカヨォ
    アイツマジカヨ

ザワザワ

バットが球を捉えた。
カァン!

打球はジープのフロントガラスを掠め惜しくも後方へ消え、

バァン!ガァァァッァァァァァァン!!!!
国旗を掲げるポールをへし折りました。

「へっへへ、いい球だったが俺には届かなかったみたいだな・・大人しくあの世に行きやがれぇ!!!」

ウォンウォンウォンウォンウォンウォン!!!!

エンジンを踏み込む野球部員、しかしどうしてジープは1ミリたりとも前には進まない。

「なっなにぃ!いったいどうしたってんだポンコツゥ!!」

ざわつく野球部員たち、ひとり眼鏡の部員が震える口を開いた。

「おっ俺は目がいいんでやんす・・・だから、だから見ちまったんでやんすよぉ・・」
「いったい何を見たんだ亀田!説明しろ!!!!亀田!!!」
亀田と呼ばれた部員は眼鏡を怪しく輝かせながら話す。
「あいつの球は外れたんじゃないんでやんす・・・”跳弾”・・あいつは球をポールに当てて跳ね返った球でトンボを地面にめり込ませたんでやんす!!」

「「「「「「「「なにぃ!!???」」」」」」」」


特製ジープの後方を見る部員たち、そこにはなんと。
ロープで括り付けられたトンボが埋まり地面にT字のクレーターができているではありませんか。

バァツバケモンダ・・・          
         コイツニンゲンジャネェ
 

したり顔のまま運転席に近寄るは、我らが豊中智樹。

「いい運転だが俺には届かなかったな、それじゃ俺はもう行くぜ」

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。

つづく!!!!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?