ラジオ局用法定同録装置を作ってみる
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一般的な放送局は、放送法により放送した番組を3ヶ月間保存しなければならない事になっている。この法定同録装置がまた結構高額で、たとえばSCA社が販売しているProFilerという製品は40万円程度の価格となっている。そんなわけでこの記事では、もう少し安価になんとかできないか、ということでRaspberryPiを利用した法定同録装置を作ってみる。
RaspberryPiとは
Raspberry Pi(ラズベリー パイ)は、ARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータ。イギリスのラズベリーパイ財団によって開発されている。日本語では略称としてラズパイとも呼ばれる。
教育で利用されることを想定して制作された。IoTが隆盛した2010年代後半以降は、安価に入手できるシングルボードコンピュータとして趣味や業務(試作品の開発)等としても用いられるようになった。
(Wikipediaより)
つまり、「メチャクチャ安価に購入できるワンボードマイコン」で、たとえば、OSとしてLinux(RaspberryPi OS)をインストールすることで、デスクトップPCやサーバーとして利用可能である。
用意するもの
法定同録装置を作るには、以下のものが必要となる。この他、モニターやキーボード、マウスが必要。
・RaspberryPi 4B(2GBモデル、他のモデルでも可)
・オーディオインターフェース(UAC対応のもの)
・外付けUSBハードディスク(バスパワーで動作するものは要注意)
・インターネット回線(アプリのインストールに必要)
なお、本稿ではRaspberryPiの初期設定(OSのインストール等)は割愛し、すでにRaspberryPi上でRaspberryPI OSが最新の状態で動作しているものとする。また、UAC対応のオーディオインターフェースでも、RaspberryPiで認識されないものもあるので、注意。
オーディオインターフェースの接続
RaspberryPiはオーディオ入力端子を持っていないので、オーディオインターフェースの接続が必須となる。本稿ではたまたま手元にあったIK Multimedia製のiRig Streamを利用する。
接続は単純で、iRig StreamとRaspberryPiをUSBケーブルで接続するだけで完了する。接続が完了すると、iRig本体のランプのウチ「Low(入力レベル過小)」の青いランプが点灯し、通電されたことがわかる。また、RaspberryPiの画面右上にあるオーディオアイコンを右クリックすると、「Audio Inputs」の項目に「iRig Stream」が表示される。
この状態になれば、iRigからの録音が可能となっている。この状態を確認したら、iRigのINPUT端子(RCAステレオ)に、録音したい音源を接続する。その後、LEVELのつまみを12時の方向に合わせておく。
外付けHDDの接続
SDカードで動作するRaspberryPiには録音データを保存する容量がないので、外付けHDDを接続して保存用ストレージにする。こちらもUSBを接続するだけで認識する。
づづけて「ファイルマネージャーで開く」を選択して「OK」をクリックすると、ファイルマネージャーが起動し、いま接続した外付けHDDが表示される。下の図では/media/pi/DATAというパスにマウント(接続)されていることがわかる。ここに同録した音声データを蓄積することにする。
このときに付与されるフォルダ名は、Windowsで設定したボリューム名が割り当てられる。たとえば、今回「DATA」という名前になったのは、Windowsでフォーマットした際にボリューム名をDATAに変更していたためである。
BUTTのインストール
続いて、BUTTをインストールする。このアプリは本来Icecastやshoutcastといった音声配信サーバー用のエンコーダーであるが、同録機能も備えているため、今回はこの同録機能を利用する。インストールにはaptコマンドを利用する。画面左上のほうにある黒字に[>_]と書いてあるデザインのアイコン(LX Terminal)を起動しておく。
まず、本体に登録されているリポジトリ(インストールのための情報)をアップデートする。(パスワードを聞かれることがあるので、RaspberryPiにログインする際のパスワードを入力する)
sudo apt update
続けて、BUTTをインストールする。
sudo apt install butt -y
すると、おおむね次のような流れでインストールが終了する。
pi@raspberrypi:~ $ sudo apt install butt -y
パッケージリストを読み込んでいます... 完了
依存関係ツリーを作成しています
状態情報を読み取っています... 完了
以下のパッケージが新たにインストールされます:
butt
アップグレード: 0 個、新規インストール: 1 個、削除: 0 個、保留: 0 個。
288 kB のアーカイブを取得する必要があります。
この操作後に追加で 603 kB のディスク容量が消費されます。
取得:1 http://deb.debian.org/debian buster/main arm64 butt arm64 0.1.17+dfsg-1 [288 kB]
288 kB を 1秒 で取得しました (266 kB/s)
以前に未選択のパッケージ butt を選択しています。
(データベースを読み込んでいます ... 現在 91223 個のファイルとディレクトリがインストールされています。)
.../butt_0.1.17+dfsg-1_arm64.deb を展開する準備をしています ...
butt (0.1.17+dfsg-1) を展開しています...
butt (0.1.17+dfsg-1) を設定しています ...
desktop-file-utils (0.23-4) のトリガを処理しています ...
mime-support (3.62) のトリガを処理しています ...
hicolor-icon-theme (0.17-2) のトリガを処理しています ...
gnome-menus (3.31.4-3) のトリガを処理しています ...
man-db (2.8.5-2) のトリガを処理しています ...
pi@raspberrypi:~ $
この作業でbuttのインストールが完了し、スタートメニュー内の「サウンドとビデオ」配下に登録される。
BUTTの設定
インストールされたBUTTを法定同録向けに設定編集する。BUTTを起動し、Settingボタンを押すと、各種設定画面が開くので、その中のAudioタグを開く。続けて、その中に表示されている各項目を次のように設定する。
Audio Device iRig Stream:USB Audio(hw:3,0)
Sample Rate 48000Hz
Recording → Codec WAV
(hw:に続く数字は違う場合があります)
正しく設定されると、BUTT本体側のレベルメーターが反応する。もしこの時、iRigのLEVELを上げていき、SIGNALがOK(緑色のランプ)が点灯しているにもかかわらず、BUTTのレベルメーターが反応しない場合は、SampleRateを44100Hzに変更すると正常動作になることが多い。
続いて保存場所を指定する。設定画面のうちRecordタブを開き、次のように設定する。
Record Directory /media/pi/DATA
Split File every 1 minutes
☑Sync to full hour
なお、Record Directoryには先ほど外付けHDDを接続した際に指定されたフォルダを指定する。Split fileは1分ごとにファイルを分割保存するように指定している。
最後に、設定画面のMainタブに移動し、一番下にある「Save」をクリックする。こうすると次回起動時はいま設定した内容が自動的に読み込まれる。
同録の開始・終了
録音の開始・終了はBUTT本体の赤いボタンで行う。一度クリックするとスタート、もう一度押すとストップである。
録音が始まると、BUTT画面下部のメッセージ欄に、現在録音しているファイル名が表示される。
またこの時、DATAフォルダを見てみると、録音されたデータが1分刻みで増えているのが分かる。
なお、このデータは記録された順番でファイルを結合すれば、希望する自亜kン体の同録ファイルとしてコピーすることができる。また、ファイル共有機能をこのRaspberryPiに追加することで、同一NWに接続されているほかのPCからファイルを取り出すことも可能となる。
気になる信頼性は・・・
残念ではあるが、業務用の同録装置と比べた場合、著しく信頼性に劣ると言わざるを得ない。ただし、そのほとんどの理由は「電源」であり、安定した電源供給さえ怠らなければ、そうそう強制終了や再起動の憂き目を見ることはない。
信頼性の向上には、これと同じセットを複数台用意するという手段がある。こうすることで、複数セットがすべて同時にダウンすることがないかぎり、同録は続けられるというメリットが発生し、それでも費用的には2セットでも5万円程度でそろえることができる。また、保存先をLAN上にあるNASなどに設定しておけば、ファイルを取り出す際などにRaspberryPiの負荷を軽減することができるようになる。
これから機材の入れ替えをする際、または低予算での開局が余儀なくされているコミュニティ放送局などでの活用に是非お勧めしたい。もちろん、ご依頼いただければ導入に関するお手伝いも可能だ。
【ご導入のご相談等】
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