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京都大作戦2daysを終えて

その昔、ROCKは社会からはみ出て居場所のない若者たちの聖地だった。

大人になって社会人歴も長くなった今、当時の思想を思い返すと随分と身勝手で我儘な主張だったなと思うことも多い。

それでも身勝手で我儘な主張を激しい音楽に載せて訴えるのがROCKでそれに賛同する若者たちが集まっていた場所でもあったのだ。

少なくとも1990年代頃までは。


1994年に私は結婚した。

それまではその日暮らしのまるでROCKな生活を送って来た自分が家庭を築き夫と共に試行錯誤しながらいわゆる一般的な生活を送るようになった。

当然ROCKからは離れて行った。

もちろん楽曲として聴いてはいたが夜中にライブハウスで大騒ぎしたり、その日暮らしの友人たちと夢を語ったり愚痴を語ったりする立場ではなくなったから。


2008年の初夏、たまたま実家に遊びに行った時母が言った。

「あなた知ってるバンドじゃないの?太陽が丘で何かあるみたいよ」

子供の頃から慣れ親しんで来た実家近くの運動公園でその昔友人のイベントに出演していたバンドがフェスをやるらしい。

イベントに参加した頃は我が家にはまだ子供がいなく、私自身もROCKの延長で暮らしていた時期だったこともあり友人のイベントに参加していたフェスの主催者10-FEETを聴いて「この人たちは絶対売れるな」と思ったことを覚えている。

夫も10-FEETがすごく気に入って単独ライブに行ったくらいだ。

尤も夫曰く客で一体になってウェーブとかやらされた。二度と行かない。

らしかったが。


そんな10-FEETがやるフェスってどんなのだろう。

興味が湧き2008年、私はチケットを持たず娘と二人太陽が丘に遊びに行った。

※実際は2007年が幕開けだったのだがその年は台風で中止。

実質開催初年度となった2008年は今とは違いチケットを持っていなくても入れるエリアが広くて、本物のステージは見えなかったが木々の隙間からアーティストが映し出されるモニターは見ることが出来た。

飲食ブースもチケットを持っていなくても入場出来て食事を摂ることも出来る。

ご飯を食べて聴いていたメインステージ2バンド目のモンパチ(沖縄出身のMONGOL800。有名なので知っておられる方も多いと思う)で早くも小学生だった娘が帰りたいと言い出して「バァバに電話して来てもらおうか?その代りもう二度と連れてこないよ?いつもお家でお留守番でもいい?」と今から思えば脅しとしか思えないやり取りを娘としていたことを昨日のことのように思い出す。

その後娘はお腹いっぱいになって機嫌をよくして、4バンド目の湘南乃風では二人して汗拭き用に持って行った花柄のタオルを振り回し、娘のタオルが隣でカレーを食べていた人のカレーの中に飛んでいったっけ。

カレーを食べていた優しい若者は笑いながら娘に「しっかり持って振り回すんだよ」ってタオル返してくれて何事もなかったようにカレー完食してた。

平謝りしてカレー買ってくるという私に「全然大丈夫!食べれるから!」って言ってくれた若者。今でも私はあのエピソード覚えてるよ。本当にありがとう!

フェスってなんて楽しいんだろう!これは夫にも知らせねば!

私と娘と二人で実家に遊びに行っていたのだが急遽夫も呼びつけ、翌日は家族3人で太陽が丘に遊びに行った。

私も夫もフェスというものが初めてでこんなにも楽しいことがあるのかと来年は必ずチケットを取ってあの柵の向こう側に行こうと話しながら2008年我が家の京都大作戦は終わった。

私たちがROCKから離れていた間にいつの間にか日本全国各地でフェスが行われるようになっていた。

翌年2009年はもちろん京都大作戦のチケットを取った。

子供は小学生から有料だったので私と夫と娘の3枚。

あの頃来ていた客層は今よりぐっと若く、ほとんどが多分独身の若者だったのだと思う。

そしてオーディエンスの反応は今よりもっともっと激しかった。

娘を連れてステージ前まで行ったはいいが、始まった途端後ろからなだれ込んで来た群衆に娘を守れなくなり、要所要所にいたセキュリティの人に抱き上げて託してステージ脇で娘を受け取り大人しくモニターからしか見えない後ろまで下がって楽しんだ。

その年のmixi(当時流行っていたSNS)では小さい子を連れてフロアに来ている非常識な親として盛大に叩かれた。※私の事かどうかは不明

翌年、2010年。我が家はしっかり対策を取った。

当時妹の彼氏の友達が関係者で妹と彼氏はただでチケットが手に入るという。

妹も彼氏も私たちほどにはフェスに興味がなかったのでよかったら娘を見ていようか?と申し出てくれたのだ。

大好きなバンドの時には娘を妹と彼氏に託して後方で参加してもらい、私と夫は前の方へ。

雰囲気を楽しめるバンドの時には5人で後方でノリノリ。

その後も我が家は京都大作戦に参加し続けた。

最初の数年は落ちる人なんているんだろうか?というくらいすんなりチケットを取れていたのだが、何年かして落選したことがあった。

その頃はまだmixiが存続していて有志が立ち上げてくれたコミュニティで行けなくなった人が定価で譲ってくれる掲示板があった。

確かその掲示板に3回はお世話になった気がする。

手紙と一緒にチケットを譲ってくれた人にお礼の品を贈ったり、仕事帰りに手渡ししてくれた人に車で家まで送りながら音楽の話に花を咲かせたり。

赤ちゃんが生まれたばかりなのでやっぱり断念するというママから譲り受けたこともあって、その後数年は場所を変えたFBで仲良くしていたっけ。

赤ちゃんが大きくなっていく姿をFBで見守りながらいつか絶対太陽が丘で会おうねと話していた日々。

mixiの主催者が事情で離れることになり定価で譲り受けられる掲示板はなくなった。

それから2回はいわゆる転売サイトで倍ほどの値段を出して買った記憶がある。

この頃から明らかに最初から行く気がなかったのにチケットを買って上乗せして売るという商法が大作戦を利用するようになっていた。

相手の住所氏名は分かっているのだがこちらも後ろめたい気持ちがあるため誰にも言わずひっそりと倍の価格のチケットを入手する。

運営側も事態を把握していたようで現在は顔認証の万能札に変わったので金儲けの転売という事態は避けられるようになり、私たちも転売屋が買えなくなったので落選のリスクが減った。

更にマッチングシステムで行こうと思って買ったけど行けなくなった人が出品して落選した人が応募するというシステムでmixi掲示板の頃のような救済システムも上手く機能するようになった。

チケット売買に関しては今の方法がベストだと思える。


とまぁ、私の京都大作戦を語っているうちにすでに膨大な文字数になってしまったのだが、ここから本題だ。

2日間禁酒に近い状態で土日を過ごしていたので今現在すでにかなり出来上がってしまっているがとりあえず頑張って最後まで書く。

※大作戦翌日(今日)は唯一会社員の私が有給を取って家族全員の泥んこを始末するのが恒例だったが今年は娘→大学昼から、夫→仕事ないので腰痛の病院に行ったので、私有給取る必要あった!?という状態になってしまっているが泥んこ大作戦も綺麗に洗って終了して時間が余っているのでとりあえず書く。


皆さまもご存知の通り、昨年から本当に色んなことがコロナで制限されてしまった。

正直なところ、本当に大作戦開催出来るの!?というくらい今でもまだ京都では色んな規制が続いている。

もちろん、普段は生暖かく見守ってくれている私の地元宇治でも「この時期にフェスを開催!?」という声は少なくない。

私たちが対岸のオリンピックを「この状態で開催!?」と思っているのと同じように。

そんな中である程度自制の効かない若者を束ねてフェスを開催するというのは主催の10-FEETはもちろん携わる関係者の皆さんにとって本当に苦労の連続だったことだろうと思う。

落ち着くべきところに落ち着いた感はある。

むしろこの規制をかけなければ大作戦の開催は無理だったことは私にも完全に理解出来る。

そして私はすでに分別ある大人なのである程度決まったことには従う。

この場所は本当に限られた人しか目にしないと思うので悪いことも含め赤裸々に綴ってしまおう。

以前からフェスの会場内には酒類は持ち込めない。会場内で売ってはいるのだが需要に供給が追い付いていないのと協賛の関係もあり生ぬるく好みでない酒しか買えない。

ということでここ数年は自宅から好みの酒類をクーラーボックスに入れて持参し、有料エリア外に陣取って飲みたくなったらそこまで戻って飲んでまた有料エリア内のフェスに戻るというのが我が家のスタイルだった。

もちろん今年も我が家はクーラーボックスに酒類を詰め込み(夫が)重いボックスを引きずって会場まで辿りついた。

普段なら場所を取るのにも苦労するくらい溢れていた今まで陣取っていた場所に酒類を持ち込んで置いている人皆無。

元より現在飲酒で騒ぐのが厳禁の京都府下において目立つところに陣取ったら一瞬で注意されて途方に暮れる構図が目に浮かぶ。

一日目は苦肉の策としてエリアから相当離れた人目につかないところにクーラーボックスを置きそこで全ての酒を飲みほしてから参加することにしたのだが、大量に持参したため飲みきれなかった。

当然もとよりアルコールの持ち込みは禁止されているのでそれではゲートを通過出来ない。

目立たない木陰に荷物を全部置いたまま私たちは初日参加した。

昨年より外に出る時はマスク必須だ。しかしマスクをしていたらご飯も食べれないし当然タバコも吸えない。

いつもなら有料エリア内に何か所かあった喫煙所。

今年は1ヵ所に集約された。

今まであったステージエリア内の喫煙所はなくなった。

ということは2バンド続けて見たい場合外にタバコを吸いに行っていたら間に合わなくなるので禁煙状態で過ごすことになる。

これはヘビースモーカーにはかなりキツイ仕様だ。

ひとたび有料エリア内に足を踏み入れたが最後、禁酒禁煙状態で過ごすこととなる。

二日目は元より酒は持参しなかった。

目当てのバンドが始まる時間に間に合う範囲で実家で酒を浴びてから水だけ持参して参戦した。

実家は大作戦会場である太陽が丘に歩いて行ける距離ではあるが徒歩5分という至近距離ではない。

暑い夏、会場まで歩いて着くまでに実家で飲んだ酒はほぼ全てが汗になって消えた。

シラフの状態で変わらず禁煙で過ごす夏フェス。

私にはこれが本当に堪えた。

見かけはしなかったがTwitterを見ている限りそこを破っているオーディエンスは少なからずいた模様。

多分私も若者だったら「何が悪いねん」という逆切れ状態でルールを破っていたことだと思うが、すでに分別のつく大人になってしまった私にはそこまでは出来なかった。

ここで冒頭に戻る。

その昔、ROCKは社会からはみ出て居場所のない若者たちの聖地だった。

今はそのROCKすらも分別のついた大人、ルールを守る大人、いや、すでにそれが出来るのが大人だけという考えすら私たちが若かった時代とは変わっているのかもしれない。

分別があってルールを守って常識を持っている人しか参加できないROCKフェス。

自分が守っているので確かにルールを破っている人を目にすると腹も立つし複雑な気持ちにもなる。

しかし、それが出来るのが若者の特権で、そういう社会の枠からはみ出た若者が居場所を見つけられるのがROCKだったはずなのに。


いつの間にかROCKとは名ばかりの巨大商業にフェスはなってしまったのだなと実感した今年の京都大作戦だった。

重ねて言うがそれを皆が守らなければ今後京都大作戦は存続出来ないという瀬戸際が今の現状だ。


そして、結論はここに至る。

コロナのバカーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

私の経験や考え方が少しでもお役に立てたなら嬉しいです(◍•ᴗ•◍)