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『ぽつ、ふふ、あぁ』


ぽつ。

遠くから聞こえる、

もう、終わろうよ、

といふ声。

もう、終わろうよ、

もう、終わろうよ

もう、

終わろうよ、、


切実な、切実な、その声は、

近くへゆくと、

驚くほど何も無い

機械のような無機質な顔の、

だのに、なぜか、優しく笑ふ、

もう、あの人じゃないような

でも、あの人の声だと分かった。


気が付くと、

私の頬が涙で濡れていた。


いつ、終わるんだろうね。

いつ、終わるんだろうね。


情念が消え、

精魂が消え、

目の輝きは完全に消え、

ただただ、

機械のような、

無感情な突き通った声で

私にこふ言った。

「何かが変わってゆくような

そんな気がした

あと少しで

何事もなく消えてゆく」


そして最後に、

小さな優しい優しい声で


「あと少しで」


と囁いた。


ふわふわしたシャボン玉も、

ふかふかしたわんこも、

ふにふにした頬も、

ふっと、

君の世界から、

姿を消した。

あたたかなお家も、

あたたかな言の葉も、

あたたかな手のひらも、

あたたかないのち

あたたかな心の溶け合いも、

ふっと、

君の世界から、

消えていった。


痛い。


痛い。




君のいのちを織り成す全てが

消えてしまった瞬きの世界で、

痛み、

終わり、

終わりを、

心の底から、

祈るのだった。




 あぁ




あぁ、










大丈夫.