危ない橋を渡って
「白馬の王子様はいない。でもどこかに特別な一人がいる。同じような魂を持つ、孤独な人がいる。そんな一人に出会うまで、とりあえず一人で生き延びるとよろしい。」
そんな言葉を抱きしめながら、気を張らないと涙がこぼれる。そんな毎日を送っていた。食べられなくて少し痩せて、何をするにもやる気が出なくて。それでも職場に慣れてだんだん元気になっていった。
よく辛いことがあったあとは楽しいことが待っていると言う。まぁ全く信じていなかったけど。思ったより近すぎるところに、またそれはすぐにやってきた。
あんなに泣いていた2か月前の自分へ。いますごく満たされて幸せになれているから大丈夫だよ。合わなかっただけだったんだよ。手に入らなかったものは手に入れる必要はないってホントだったね。
運命が動きだしたのは誕生日からだった。まだ3週間も経っていない。こんなに急激に距離が縮まるものなのか。びっくりしている。運命はいつも突然。気づいたらこうなっていた。今までに増してそこには駆け引きなど存在しなかった。
惹かれ合う運命とはこのことか?いや、でもいつもいつもそう思っては違っていた。まぁそういうのは後からわかることだからいいか。
今までで一番魂が似ている人だった。考え方も、境遇も、経験値は比べ物にならないけど、薄っぺらくないすごい濃い人だなと思った。
あとは意味がわからないくらいしっくりきた。落ち着くし気を遣わないし何かいいなぁって。
でも危ない橋で。ごめんの一言で終わる可能性だってある。言葉でだまされることだって私はよくある。
それでも、周りに堂々と言えなくても、この人に人生の時間を懸けていいか考えた。懸けていいな。少なくとも転勤するまでは。
愛を理由に正当化するつもりはない。愛に酔いしれる自分も醜いからいやだ。
静かに、誰にも気づかれないように。理性と覚悟を持って。
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