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街乗りマウンテンで往く🚴成田うなぎ街道

起床して部屋の窓から外を眺めると気象予報が外れ、天候の回復が少し遅れたようで小雨も残っていたので、サイクリングへ出掛けることを一瞬ためらいましたが、せっかく取得できた貴重な平日の有給休暇です。

しばらく体調不良に悩まされた病み上がりに、どうしても「美味しい鰻」を食べたくて、気分転換と栄養補給を目的に自宅から約50km先にある千葉県成田・印旛沼のほとりにある鰻の名店「い志ばし」さんへ久しぶりに自転車で出掛けました。

私が「い志ばし」さんへ初めて連れて来てもらったのは今から36年前に遡ります。大学を出て新社会人として新卒入社した会社の上司であり、その後は経営統合を経て現在は連結で6万人規模のグローバル企業になりましたが、当時は日本的な商慣習を残す古き良き時代の会社でした。

この企業は新春の1月に恒例の営業伝統行事があって、仕事初めから約1か月間にわたり首都圏の代理店様や販売店様を総勢数百名の営業マンが約20〜30名単位のグループに分かれて集団で新年挨拶に回り、各リーダーが代表してお取引様の今年の商売繁盛を祈願して、証券取引所の大発会のように威勢の良い盛大な手締めで新年を祝うという昭和らしい商慣習がありました。

営業稼働日の少ない1月の貴重な時間を割く非効率な営業活動という見方もありますが、お身体を壊されていると伺っていた経営者様が私たちの訪問を受ける時だけは正装でシャキッと立礼されたり、お客様が私たちが見えなくなるまでお見送りしてくれたことを今も思い出すことあります。今の私のビジネスセンスの原点はここにあるのかも知れません。

「い志ばし」さんの鰻重は成田市内の代理店様へ新年ご挨拶の帰り道に会社の大先輩の方々と一緒に立ち寄る1年に1度きりの特別なサラ飯なのでした。

KONA HEI HEI

今回は愛車のロードバイクとMTBの2台から、敢えてオンロードのロングライドに適さないフロントシングルギアの29erフルサスMTB「KONA HEI HEI」を選びます。基本はオフロードの山道を落下していくことだけの機能に特化したダウンヒルバイクの設計ですが、平地や登りにも対応する高速クロスカントリー仕様は自転車界のランドクルーザー的な存在なのであります。

もちろん軽量なカーボンロードが一番速いのですがコンディションがウェットだったこと、往路の京成スカイアクセス線沿いの一般道は交差する国道のアンダーパスに「自転車進入禁止区間」が多く、たいがい迂回を余儀なくされ、階段や歩道橋、砂利が散乱するような悪路に回されることが多いことから、私は迷うことなくドロッパーポストを装備する「KONA HEI HEI」を車庫から出しました。

簡単な朝食を済ませて、自宅がある市川をスタートしてから約1.5時間。前半は冷たい雨風に吹かれ続けますが所詮は春雨。千葉ニュータウンを過ぎた頃には雨も上がり、成田空港行きの京成スカイライナーが時速160km/hで平常運転を行っている高速区間の線路側道をノンビリと流します。

橋を渡り切ると北須賀交差点

やがて北印旛沼に架かる橋をわたり成田市内に到達。北須賀交差点を右折して宗吾参道方面へ南下を開始すると、数キロ足らずで「い志ばし」さんの看板が視界に入りました。ナビもGoogleマップを不要で、私の記憶に刻まれた感覚だけで来ることが出来ました。海外旅行に行った成田空港からの帰り道に妻と訪れてから20年振りの再来店となります。

最初に視界に入る立看板
昔とかわらない店看板
暖簾が新しくなっていました

平日の開店時間の11時前に到着しましたが、すでにお客さんが並んでいて、店員さんから8番札を頂きました。8グループ目に案内されるという意味です。店内はテーブルが4台しかないので2巡目以降ということになります。

注文は発券と同時に聞かれて、私は一切の迷いもなく定番の「鰻重」をオーダーしました。お店の方が私の自転車を興味深そうに眺めながら「ここに停めていいですよ!」と軒先下のスペースを貸していただきました。

私は鰻重の一択です
テイクアウトも可能
お店の裏側

自分の番号札が呼ばれるまで店外のベンチに座っていると私の自転車を見た順番待ちのお客さんから「どこから来たの?」とか「スゴい自転車ね..」とか次々と話しかけられて人だかりになってしまい思わず苦笑い。

きっと皆さん自転車が好きなのでしょう。生まれて初めて親や友達のサポートを受けて自転車に乗れた感動は一生忘れられないものです。

待ち時間はあっという間です。私以外のお客さんはクルマで来店されており、お昼からお酒を飲まれる方も少ないためお店の回転がめちゃくちゃ早く、店外で待つことたったの15分足らずで席に案内されました。

私のような1人客でも相席ではなく、1テーブルを確保していただけることに恐縮してしまいます。着席すれば待つことなく「鰻重」がテーブルに運ばれて来ました。

い志ばしさんの鰻重

うわぁー、きたーーっ!と思わず心の中で小躍りしちゃいました!昔と変わらない「い志ばし」さんの鰻重の味に感激。蒸しが抑えられ、焼きでシュッと締まった感じが私の好みです。最近はSNSで様々な方が料理に関して好き勝手にコメントを書き込まれますが、感じ方は人それぞれであって私はあまり口コミに関心がありません。

というか「い志ばし」さんは公共交通機関がほぼ皆無の立地環境なので、お店まで大した苦労もなくクルマで来られたか、成田山参道から7〜8kmの距離を歩いて来られたか、自転車で雨風に吹かれながら50km漕いできたかによって人の味覚はまったく変わると言うことです。

2022年12月に他界されたサッカーの王様キングペレのサインを引き継がれた木梨憲武さんが店内に書かれたサインにも年季が入って良い感じでした。これからも変わらない味を残し続けて欲しいと願っています。

Pele
お店の正面

復路は来た道を戻らずに印旛沼を南下して、宗吾参道から佐倉に向かってペタルを踏み続けます。途中で小高い山の上に築かれた「佐倉城」の城下町にある武家屋敷街を抜けました。

佐倉藩士が住んだ多くの「武家屋敷」が今も大切に保全されていて、あまり観光地化されていない品のある街並みです。江戸時代からほとんど景色が変わらない竹林の雨あがりの美しさに息を飲みます。やっぱり来て良かった。

ひよどり坂
サムライの小径

自宅までラストスパート。佐倉から市川までの成田街道は日本中のどこにでもある風景。私は交通法規を遵守する善良な模範サイクリストを心掛けているため、夕方の渋滞によるゴーストップの連続でもうヘロヘロです。

MTBのエンジンは自分の脚なのでゼロエミッションですが、途中のスタバでVentiサイズのホワイトモカに色々トッピングしまくるわ、ミスドでドーナツも食べるわで、クルマで高速に乗って行った方が安上がりだったかも知れません。

まもなく1回目の人生の節目を迎え、最近は体力の陰りが見え始め、自分の限界への挑戦とは距離を置くようになりましたが、何とか100km程度のサイクリングは適度なスポーツイベントとして習慣を維持していきたいと思います。

END

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