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ChatGPTによって開発がどう変わるのか?Vol.1

こんにちは、Startup Tech Live事務局です。「エンジニア組織のグロースに必要な知見の流通」をテーマに様々なイベントを開催しております。
こちらは2023年6月23日に開催したイベント「ChatGPTによって開発はどう変わるのか?」のイベントレポートVol1になります。
今回はグロービスVPoE末永氏、SunAsterisk CTO`S 金子氏、オシロ西尾氏、Bloom&Co.増井氏に登壇いただきました。是非ご覧ください。

スピーカー

ファシリテーター末永 昌也 | 株式会社グロービス |VPoE
東京工業大学 工学部卒、東京工業大学大学院 情報理工学研究科修了。
グロービス経営大学院 経営学修士課程(英語MBA Program) 修了。
Startup Weekend世界大会入賞を機にEdTechサービスを手がける株式会社LOUPE(現ARROWS)を共同創業。CTOとしてプロダクトの新規立ち上げ、技術リードを行う。グロービスに入社後はグロービス学び放題等の立ち上げに関わり、現在はVPoEとしてグロービス・デジタル・プラットフォームにおける開発統括を行う。
金子穂積| 株式会社Sun Asterisk |CTO’s
大学卒業後、2000年に株式会社リキッドオーディオジャパンに入社し、EC事業部長として音楽配信プラットフォームを構築。音楽ジャーナリストとして音楽雑誌『bmr』の編集部を経た後にエンジニアに転身し、日本最大級の音楽フェスの公式アプリなど手がけた後、2015年医療系ベンチャー、リーズンホワイ株式会社CTO。2018年からSun*のCTO'sの一員に。主に助っ人CTOとして、スタートアップ企業を中心に、物流、音楽、飲食など様々な業種のMVPからサービス立ち上げ、組織構築を担当。
西尾 拓也| オシロ株式会社 |リードエンジニア
OSIROのプロダクトを作る1人目のエンジニアとして創業前からジョイン。2015年9月~2017年11月までは、唯一のエンジニアとして、OSIROのシステムの土台を担当。会社の拡大に伴い、別々だったシステムを1つのプラットフォームに統合するマルチテナント化や、iOSアプリのリリースと、様々な技術課題や機能改善を行う。2019年からリードエンジニアとして現在は7名のエンジニアを育成、統括している。また、エンジニアリングを純粋に楽しむことは何よりも重要だと考え、自分もチームメンバーもエンジニアリングを楽しめるように日々工夫している。


増井 雄一郎 | 株式会社Bloom&Co. |CTO
「風呂グラマー」の相性で呼ばれ、トレタやミイルを始めとしたB2C、B2Bプロダクトの開発、業界著名人へのインタビューや年30回を超える講演、オープンソースへの関わりなど、外部へ向けた発信を積極的に行なっている。「ムダに動いて、面白い事を見つけて、自分で手を動かして、咀嚼して、他人を巻き込んで、新しい物を楽しんで作る」を信条に日夜模索中。
日米で計4回の起業をしたのち、2018年10月に独立し"Product Founder"として広くプロダクトの開発に関わる。2019年7月より株式会社Bloom&Co.に所属。

ChatGPTを開発の現場でどのように活用しているか?

グロービス末永さん、以下末永)今回、私たちは主に二つのパネルのテーマを取り上げていきます。一つ目は「現在どのようにChatGPTを活用しているのか」、そして二つ目は「エンジニアの未来と、開発体制をどう考えていくか」です。多くの企業がこれらのテーマについて模索していると感じています。今回のイベントでは、みんなで考えていくという観点を大事にしようと思います。まずは「現在どのように現場で活用されているのか」というテーマからスタートしてみましょう。このテーマについて、まずはそれぞれの見解を聞いてみたいと思います。最初に、オシロの西尾さんにご意見をお聞きしたいと思います。

オシロ 西尾さん、以下西尾)実際の業務利用について考えると、ChatGPTを最初に使った動機は「面倒な作業を代行してもらう」ことでした。具体的には多くのテーブルやカラムで文字コードを変更のSQLを生成するRubyコードをGPTに任せて実装してもらったりしていました。さらに、私は現状のGPTの性能でも、マイクロサービス、特に単純なインターフェースを持つものに対しては、人間が管理しながら効率化できるのではないかと感じています。インターフェースが技術要検討して決まっている簡単なマイクロサービスを実装してもらう場合に、その効果が大きいと思っています。また、シンプルなプロダクトや特定のコード領域については、ChatGPTが特に得意とする領域かもしれません。

末永)マイクロサービスは面白いですね。あまり聞いたことありませんでした!やはり小さいものの方がChatGPTが生成しやすいとかありますか?

西尾)そうですね、そこは強く感じています。例えばテストコードをGPTが生成し、AWS Lambdaでメールを送信するようなものを短時間で作成できたりします。これは、APIを使って何かを行いたいというような場面でも同様ですね。またGPTに構造設計を任せ、人間がその結果を利用してLambda等でマイクロサービスを運用するという流れが面白いのではないかと思っています。特に、簡単なツールについてはこのようなアプローチが有効に働くと感じています。

パネルディスカッションの様子

末永)そういうのはたくさん出てきそうな感じですね。続いて金子さん、お願いします。

Sun Asterisk 金子さん 以下金子)そうですね。現在の開発現場における議論の中では、ChatGPTの活用方法について多様な意見が飛び交っていますよね。特に注目しているのは、ChatGPTを活用していると言われているGitHubのCopilot。今このツールを社内で試用中で、全体への導入を検討しています。使用者からは、非常に好評で「そのままずっと使いたい」という声もあります。一方で、「導入はまだ早いのでは」と慎重な意見もありますね。このように、全体的な意見は一様ではなく、予想以上に多様性があると感じています。それでも、早期に新ツールを全員に導入することが最善であるという考えは変わらず、今後の導入方針については引き続き議論を進めています。また、開発の現場以外にもChatGPTを使ってビジネスデザインやサービスデザインなど、より広範な開発活動にも取り組んでいます。ChatGPTを利用しアイデアをまとめ、新たな事業創出の道筋をつけることが増えています。さらに、この取り組みに対して、クライアントからもポジティブな反応があり、新しいプロジェクトの依頼なども寄せられていますね。

Bloom&Co.増井さん 以下増井)弊社の開発現場には、私ともう1人のエンジニアしかいませんが、現在社内のSlackには、GPT-4を喋るbotと、ウェブインターフェースツールを社内全体で運用しています。これは社内でもかなり活用されていますね。

ここで話は戻りますが、エンジニアにとって重要なスキルについてよく質問されます。「数学や英語が必要ですか?」と。私は、むしろ国語の能力が重要だと考えています。これまでコンピュータに命令を出すのはプログラミング言語で、人間に説明をするのは日本語や英語でした。しかし、今はコンピュータに対しても人間の言語で指示を出す時代になりつつあります。
これにより、今まではコードが書ける人しか開発に参加する資格がなかったところから、コードを全く理解できない人でも参加できるようになりました。私は開発の現場というのはエンジニアだけのものではないと考えています。
実はコンピュータが苦手だと言っていた人たちが、言語モデル(LLM)を巧みに扱い、国語が得意だったことから開発プロセスに参加できるようになりました。それにより、開発に関わる人々の概念が広がり、そのツールを非常にうまく使用し、新しいプロンプトを作成するなどしています。
社内では、DXの形でアイディアを確認し、LLMを使用するといったことが行われています。これにより、開発という概念自体が広がったと感じています。特に、ここ1、2ヶ月の間に、その変化を強く感じていますね。

末永)国語力と開発力が広がるという話はすごくいいなと思いました。多くのテック組織の課題として、ビジネスと開発の境界線があるということがあります。ここにChatGPTによって大きな可能性を感じるところはあります。

GPTがソースコードを読み取り、そうすると何をやっているのかテキストとしてだしてくれます。そうすると境界線がなくなってくるのかなと思います。これが可能になれば、さらに良質なプロダクトを作ることができると思いますね。
先程気になったのですが、増井さんの会社は、ChatGPTをそのまま使うのではなくウェブツールを自社で開発していましたが、それはセキュリティ面を意識して開発されたのでしょうか?

増井)そうですね。あと機能も追加したりしてます。実は、コーポレートプランが存在しないため、20人がサービスを利用したい場合、20個の個別アカウントを作成する必要があり、その管理が大変です。そういった理由から、社内でツールを作成しました。
また、誰がどのようにツールを使用しているのか、ログを取りたかったですね。実際、誰がどのようにサービスを利用しているかは、相当重要な情報だなと思いますね。

金子さん)そうですね。ログは大事な資産ですよね。
先ほどCopilotに関しても、みんなどう使ってるんだろうかみたいなのをやっぱり集約したいと思いましたね。CopilotはAIとのCopilotですが、さらに人間も何かチームでできるとより面白いですよね。

西尾)社内のメンバーにも「どのようなプロンプトを入力しているのか?」と先日聞いてみました。意外と皆シンプルでわかりやすい指示を用いてましたね。例えば、「このようなコードを書いてください」といった具体的な要求がほとんどでした。今は個人アカウントを使っているので会社資産にはしにくいですが、ログを見れると互いに真似したりシェアできるので活用はもっと増えますよね。アジャイルに解決できるとツールを作らなくても良くなるなと思いました。

末永)導入されて、いろいろ活用されていると思いますが投資対効果はいかがでしょうか?

増井)弊社では、エンジニア以外のスタッフも積極的にGPTを活用していて、一定のメリットはあるかなと思います。コストといってもAPIの使用量で数万円程度なので。
Webインタフェースとチャットの二つの形で使用していますが、チャットの方はDM(ダイレクトメッセージ)の送信を制限しています。もちろん個人のチャンネルを作成し、そこにボットをインバイトすれば可能ですが、基本的には公開の場での質問を推奨しています。

共有の場で質問することによってノウハウのシェアだったり、誰が何に困っているかわかったりするのがいいですね。人に直接尋ねるだけではなく、ボットに問いかけることにより、コミュニケーション自体が活性化する効果もあるので有形・無形の効果を合わせて考えると、コストパフォーマンスは非常に良いと言えます。

金子)先程触れた「コードを書く」という部分について、弊社は250人で実験しているんですが、パフォーマンスが向上したと感じる人が半分以上いるという状況です。半分以下はそこまで感じていないという回答もありましたが、それでもツールを導入することでの効果はあったので投資対効果は確実にあるかなと。より活用するプランを会社として考える必要は別途ありますが。

また元々弊社の強みとして0→1でサービスデザインから開発まで一気通貫でやるというのを得意としているんですが、これまではエンジニアがいないとフィジビリティ検証できなかった新しいプランやビジネスを考えるということが、できるようになってくると思いますね。みんな視野が広がったというのはあると思います。
逆に、エンジニアはこれまでとは異なる新しいバリューを出していく必要があると思っていて、個人的にはそこが非常に面白い状況だと感じています。

会場の様子

増井)「心理的安全性」という言葉をエンジニアの間でよく聞かれると思うんですが、botは最も心理的安全性が高い存在であると思いますね。絶対にキレない、24時間即対応してくれる、根に持たない。(笑)
エンジニア以外の人からするとエンジニアに相談しにくいと思います。そういった中で気軽に相談ができるエンジニアという存在(bot)はすごく心理的安全性が高い存在だと思いますね。
不安が少ない環境で仕事ができ、聞きたいときにすぐに聞けることは仕事を進める上で大きな影響になりますね。例えば私の場合、GPTのおかげで個人的な開発速度は5倍速くなりました。
さらに、人に質問するということ自体がプレッシャーになっていたことが簡単に質問できることで大いにプラスに働いていますね。

末永)5倍は大きな変化ですね!

増井)そうですね。弊社のAIツールはLLMやGPTなどのツールを使って作っていますが1人で月に3つ程度、しかも他業務も同時で進めながら実現できているので圧倒的に作業効率が向上しています。

末永)すごいですね。しっかりとベースを整理されたからこそ実現できているんですよね。

増井)ツールを作るためのツールを作っている時間もまた長いです。そのツールを作っているためのツールを作っているのもLLMで作っているので何がなんだかわからないです(笑)

末永)いやー。すごいです!先程伺ったお話も、一行もコードをかかないでツールを作るというのを実現されていて、そのツールを作るのにめちゃくちゃ時間がかかったと。

増井)めちゃくちゃかかりましたね。間違っていますね(笑)ただ将来的にはそうなっていくのかなと思い、それによって色々なことが変わっていくと思うのでそのために先行してやっているという感じです。

末永)心理的安全性の話もすごくいいですね。これを聞いたら初歩的なことを聞いてるっていう馬鹿にされるんじゃないのっていうところが全然ない。特に新人の方とかはいいなと思います。上長の方やシニアエンジニアの方もそれで任せられる部分ってのはあると思うので、そういった側面でもいいですよね。

西尾)心理的安全性に関連して、弊社のデータサイエンティストのメンバーはPythonのコードは読めますが、コードは書けないので、前処理や簡単なコードを書くことはGPTにお願いするということをしています。エンジニアの手を煩わせないようにという配慮の面もあります。あとは、いくら仲がよくて心理的安全性が担保されていても毎度依頼することへの申し訳なさや、依頼する際の説明に時間がかかるということもあるので、GPTに説明する方が早く、効率的になるという意見もありましたね。

パネルディスカッションの様子

末永)そうですね。費用対効果を見てみると、GPTを頻繁に活用している人と、それほど活用していない人とがはっきりと分かれているように思います。皆さんのチームではどうでしょうか?グロービスでは、具体的なChatGPTの利用率までは把握していませんが、"Notion AI"を導入しており、GPTのようなAI機能が付随していてこのツールの利用率は、はっきりと把握できています。具体的には、300人規模の私たちの組織で、約100人、つまり3分の1がこのツールを使用しています。しかし、その中でも本当に頻繁に使用している人は、恐らく5%程度だと思います。皆さんの状況はどうですか?具体的な利用状況などは把握されていますか?

金子)そうですね。同じようにまったくGPTを使っていない人もいます。これはある程度仕方のないことで、新しいツールや技術に対しては最初から試す人は一般的に少ないと思っています。しかしながら、今後はデファクトスタンダードになっていくと考えられるので、そういった新しいツールや技術に取り組んでいる人々は、組織の中で成長する可能性が高いと思います。
また、初心者のメンバーが質問しやすいという話もありましたが、どのような質問をしているのか見れたり、ログが取れると会社としてもいいですよね。メンバーがどのような質問をしているのかで成長やレベルも図れると思うので。もちろん、全ての活動を透明にするというのは問題があるかもしれませんが、うまく活用して成長を可視化できるととても有益だと思いますね。

増井)うちの会社は人数が少なく、全体でも20人や30人程度しかいないので、実際の利用率は把握していませんが、さっき言った3割という数字は、個人的な感覚としては近いです。新しいものはどんな場合でも最初は得意不得意がありますし、説明することや会話をするほうが得意としている人もいるのでチャットの使い心地に対する考え方が異なると思っています。ただし、全員が使うことが目的ではないですし、うまく活用できる人たちが使っていけば、残りの人たちも徐々に慣れていくと思いますね。現在のパソコンやインターネットも同じ状況でしたね。逆に言えば、上手に活用している人たちを盛り上げて、成功例をみんなに示せるかということを意識しています。

末永)GPTの活用方法を社内LTなどで紹介することで、GPTを利用する人がますます広がるのではないかと考えています。使ってもらうこと自体が目的ではないとしても、GPTの活用を促進することで組織の生産性は向上すると思っているので、ここにはしっかりと力を入れたいと考えています。

西尾)そうですね。私も肌感2-3割程度だと思っています。私自身、会社として活用していこうと決断をする前から、GPTに関する話題が盛り上がっていたので使っていました。個人的に課金して使っているメンバーも結構いましたね。逆にピンときていないメンバーもいたので社内でGPTに触れてみようの会を開いていました。「GPT-3.5とGPT-4は全く違うよね、同じ質問をしても、レスの精度が明らかに違うよね。」と体感してもらいました。説明するというよりは、啓蒙活動を行っていました。

末永)いいですね。僕も比較的アーリーな方だったんですけど社内にはもっと早く関心持ってる人たちもいて、そういった人をフィーチャーして、組織全体を盛り上げていくかみたいな観点は、すごく大事ですね。

増井)これはGPTだけではなくても言えることですね。例えばSaaSの会社の場合、社内に導入してもらうためにまずファンを作るっていうのが基本パターンですね。まずはGPTに興味のある皆さんがリードして、社内に広げてくっていう活動が大事なんだろうなと思いますね。

(Vol.2の記事を読む)


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