外科系手術器械 エネルギーデバイスとは(超初級)

病院の手術室スタッフや、購入のための申請を受ける事務長あるあるの一つです。
外科系手術のためのエネルギーデバイス(エナジーデバイス)と言われる医療機器の購入を検討する際、意味がわからないと思いませんか?

基本的には、「切る」、「焼く」の2種類の機能を持つのが、このエネルギーデバイスです。
この「切る」「焼く」の2種類の機能のために1台数百万の本体と、1回あたり数万円の消耗品、ディスポ(使い捨て)部分のコストが発生するものになります。

こういった製品が登場する前も同様の手術は行われていて、より患者さんの安全性を高め、手術の効率、精度を上げるために登場した製品で、手術のために「必ず」なければならないかというと、一概には言えません。
ただ、このご時世ほぼほぼ必須という感じでもあります。

国内に流通しているエネルギーデバイスはおおよそ10商品くらいになると思います。
この10商品全部、院内に揃っているよ!という病院はお金持ちですね。
こういった外科系手術器械は、医師の好みによって購入決定されることも多く、人の入れ替わりでつぎつぎ購入していくことが多いです。
そのたびに数百万の医療機器を買うのもなかなか難しいと思いながら、医師確保のために必要経費であると言い聞かせていることも多いでしょう。

さて本題です。
この手のデバイスの名前を列挙していきます。
ハーモニック、エンシール、オートソニックス、ソニシジョン、ソノサージ、サンダービート、リガシュア、ソノペット、バイシジョン、バイクランプ。。。。など

これだけみて、うちの病院にある、ないを把握できるだけでも素晴らしいと思います。

まず簡単に何をするものかを把握しましょう。


一番多く使われるシチュエーションは、血管の切離です。

外科手術の基本は、悪い部分を切除することによって治すという考えをまずもっていただければと思います。
その際、血管やいろいろな管がつながっていますので、ただ単に切ってしまっては出血してしまいます。
出血を抑えるために、血管をクランプ(挟み込み)して熱を加えタンパク質凝固をさせます。
そして、タンパク質凝固され、血管を止めてしまってから切離することによって出血をさせないためにこれらのエネルギーデバイスを使用するのです。

※昔では、切離したい血管を糸で2箇所結び、血流を止めてから2箇所の結んだ間を切ることで対応していました。

結ぶ、結ぶ、切るの3アクションを1アクションでできるのが利点ですね。

血管の他にも、臓器自体には細かく毛細血管がありますので、止血のため熱でタンパク質凝固させながら切離を行います。
これに対しても、エネルギーデバイスは有効なのです。

問題は「焼く」「切る」の方法

キーワードとしてはタンパク質凝固です。
御存知の通り人間の体はタンパク質で主にできています。
タンパク質は熱を加えることで凝固し、出血などを止めることができます。
エネルギーデバイスでは、熱を加えてタンパク質凝固させるのがまず1ステップ目なのですが、その熱の加え方にそれぞれのメーカーの違いがあります。

1、電気による熱
上記の中でいうと、エンシール、リガシュア、バイシジョン、バイクランプあたりがこの方式です。
人体に電気を流しますと、人体にも電気抵抗がありますので、熱を持ちます。
※電気を流して危なくないのか問題は割愛して、以降モノポーラとバイポーラについて説明するときに話したいと思います。
その電気による熱でタンパク質凝固を行う方式です。

2、摩擦熱による熱
上記の中でいうとハーモニック、オートソニックス、ソニシジョン、ソノサージ、ソノペットあたりがこの方式です。
超音波で、デバイスの先端を振動させます。そのときに発生する摩擦熱でタンパク質を凝固させる方式になります。

基本的にはこの2種類以外にありません。
いすれも熱の発生方法は違えど、電気エネルギーか超音波エネルギーを利用し、熱を発生させ、タンパク質を凝固→止血するというものです。
大きな枠で見てみると意外と単純でメーカーによってちょっとずつ違うのね?という感じで理解できるかと思います。

1、電気による熱 2、摩擦熱による熱
では、前述した「焼く」の部分です。
止血のための機能ですね。

次に、「切る」という部分を見ていきます。

1、カッターで切る
理解しやすいように血管をイメージしてください。
血管をそのままハサミ(剪刀)で切ってしまうと血が出てしまいますので、切る部分の両脇を糸で縛って止血するのが昔の手技でした。
エネルギーデバイスの大半は鉗子(挟み込めるもの)の形をしており、その鉗子で血管を挟み込み、血管を潰して接着するイメージです。
更に、挟み込んだまま、カッターを走らせることができるのが、リガシュアやエンシールなどの製品です。
焼く→切るが一連の流れでできます。

2、超音波のブレードでそのまま焼き切る
超音波をつかう、ハーモニックやオートソニックスなども鉗子のような形をしています。
片方が実際に超音波振動をする超音波ブレード。片方が超音波ブレードに圧着させるための部分。
超音波で振動しているので、熱を与え続けるとそのまま血管は焼き切れます。
ただ、焼ききれたあとの血管の両端は凝固され止血されているので、出血することがありません。
そういう意味で焼く→切るが一連の流れでできます。


簡単に理解する場合は、以上のポイントだけでOKです。

電気系なのか超音波系なのか。
一部、電気と超音波の合体もありますが、基本的にたんぱく質を熱凝固させるため、熱を発生させる仕組みは2種類です。
その上で、形の違い、出力の違いなどによってさまざまなデバイスがあるということになります。






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