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勝手にファンタジー小説。『ハロウィン選挙』①

ハロウィン選挙のある村の話。
ーーこの村は意外に大きいし、経済的に豊かなのです!ーー


むかしむかし、あるところに、そこそこ大きな村がありました。

この村では、
毎年10月31日のハロウィンの日、
村のおさを決める人気投票が行われていて、

ハロウィン周辺の何日かは大変な盛り上がりを見せるのが恒例でした。

村おさになる条件は、
①人間であること。
②村人の人気投票で1位になること。
③もしも人気投票での決着がつかない時は、現村おさがそのまま役職を引き継ぐこと。


この3つが条件でした。

なので、この村に住む村人以外でも、
村人からの人気を集めれば村おさになれるのです。


この話を聞きつけた、
いろんな考えや、思想を持つ人々を織り交ぜながら、

村おさ人気投票は毎年行われますが、
なぜかここ数年は現村おさが引き継ぐ流れになっているといいます。

ハロウィン選挙、今年はどんな流れになるのでしょうか…


ルナ「初めまして!ずっと遠い町からやってきました、
ルナと申します。よろしくお願いします。
今年の村おさ戦に立候補しました~!」

婆「やぁ、ルナさんかい。
若くて元気がええの。
ひとつ、この電球が切れとるんで、かえてくれんじゃろうか~。」

ルナ「もちろん!お安い御用です!!」



私はルナ。ここから結構遠い町からこのハロウィン選挙の話を聞きつけてやってきた。

肩書のない者でも、簡単に、この村では村おさになれるらしい。

立候補するのに、肩書や所有物、年齢も、住所だって聞かれない。


ただ、立候補用紙に書かれていたのは


『人間ですか?』



という質問と、

Yes と No の文字。


そして、最後に立候補者の名前を記入する。
まさにシンプルすぎる用紙スタイルだった。


私はYesにまるをつけ、
名前の欄にできる限りきれいな文字で

『ルナ』

と記入し、
受付のお姉さんに手渡した。

お姉さんはニコニコ顔で受付終了の印を押し、立候補者のワッペンと注意事項の紙を私に渡してくれた。

これで立候補の手続きは完了のようだ。
そして、もらった注意事項を見るからに…

人気投票とは、

村人からもらう特別な『飴玉』を一番獲得した立候補者が次期村おさ候補になる


ということのようだ。


あめ?だま??とな。


とりあえず手始めに、
私は村全体の様子を見てみることにした。


何の変哲もない、そこそこ大きな村。
穏やかな村なので、犯罪や問題なども少なそうだ。


おっと、あそこに候補者のワッペンを付けた私のライバルがいるみたいだ。

どうやら若い女性の持つ、重い荷物を運んでいる。

そのまま見続けていると、最終的に女性から何かを渡されていた。


・・・仕方ない、きっと公式なライバルだけれど、声をかけてみるか。

ルナ「すみません。初めまして。
ルナと言います。あの、あなたも立候補者さんです?」

私は彼の右腕についたワッペンを指しながら、静かに話しかけた。


??「そうだが。何か用か?
俺はライバルとはあまり絡みたくないんだが…」

私の顔と右腕のワッペンを見たその若い男は
明らかに怪訝の表情である…無理もない。

それでも私はひるまず続ける。


ルナ「いやいや、ちょっとだけ教えてくださいよ。私、全然まだコレの仕組みが分かんなくて。
今荷物を運んであげていたあなたがとても紳士的そうで、
その、なんというか                                                   

…素敵だなと思ったから、

もしかしたら、
こんな私でも助けてくれるかと思って、勇気を出して声をかけてみたんです!」


??「…ふっ。色仕掛けは通用しないぞ。
まったく近頃の若いもんは!」

ルナ「(チッ)
いや、でもほんとに切羽詰まってて。
自分、今一文無しですし、
これからどうやって何をしたらいいかもわからなくて途方に暮れてたんです。

そんな時に優しそうな人がいたので、
少しだけでもなにかヒントをくれないかと思って。」

??「お前、何やってんだ?
もしかして金目当てで村おさになろうと思ってるのか?
…まあ、確かにそういう輩はこの辺にはたくさんいるだろうが…」

ルナ「村おさになれば、少しはいいご飯が食べれるかなーというか、
なんというか、そういう感じで…」

??「はぁ…ほんとか…」

ルナ「ほんとです~~。
あの、助けてください~~。
これからどうやって生きていけばいいか~~。」

??「うわ、こら泣くな。ひっつくな!!
わ、わ、わかったから。こういうのを人に見られてたら結構あれだから、
ちょっと、こっちにこい!!」


こうして、私は見ず知らずの男性に連れられて、昼間っから酒場に行くのでありました…。


(つづく)

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