Before Dawn/夜明け前 英語セリフチェック

「光の番人」イベントのBefore Dawn/夜明け前のセリフが、英語版と日本語版でだいぶん違ったので、英語版を訳出してみました。

英語版(Before dawn)

日本語版(夜明け前)

おまけ:フランス語版(Avant l'aube)


【セナ】
Death descends.
The light is fading.
死が舞い降り、光は薄れゆく。

Who will join us?
Who will be our hope?
私たちと共に戦い、希望を繋ぐのは誰?

【デマーシア兵】
Stand your ground!
Demacia must not fall!
守り抜け!デマーシアは陥ちてはならぬのだ!

must not/shall notは、神視点(第三者視点)で「〜してはならない、許されない」の意味。ですので、ここで「デマーシアが負けてはならない」のは「負けたくない」のではなく、それがデマーシアそのものの使命だというニュアンスになります。

【デマーシア兵】
Is she dead?
死んだのか?

【ヴェイン】
No, worse.
もっとひどいことになった。

【滅びのシヴァーナ】
You cannot stop the darkness he's unleashed.
Until our queen is returned, all will be brought to ruin.
あの方が解き放った闇を止めることはできぬ。
我らの王妃が(あの方の元に)返されるまで、全ては滅びへと追い立てられよう。

「王妃の帰還までに全ては破滅する」となっていますが、誤訳だと思います。
 is returned(返される、受動態)であって、returns(帰る、能動態)ではないところがポイント。
 ヴィエゴは誰か/何かに王妃を奪われたという被害者意識を持っていて、「王妃を返さねえ限り、世界を滅ぼしてやるぞ」と脅しをかけている感じかと。

【デマーシア兵】
What is this?
What's happening?
なんだ、これは?
何が起きている?

【ヴェイン】
Steady.
落ち着け。

【ルシアン】
She's ... big.
こいつは…でかいな。

【セナ】
Then shoot her twice.
なら、2度撃て。

英語ボイスは完全に指揮官の口調です

【ヴェイン】
How do we stop her?
どうやって止める気?

【ルシアン】
We pin her down and hit her with everything we got.
足止めして、全力でぶちこむ。

【ヴェイン】
On it.
任せて。

【ルシアン】
Wait!
待て!

【セナ】
Lucian!
ルシアン!

【セナ】
No.
She's still in there.
だめ。彼女(の魂)はまだ残ってる。

シヴァーナはヴィエゴに乗っ取られはしたが、セナはそれがシヴァーナ自身の意思ではなく、なおかつスヴァーナがヴィエゴに完全に支配されているわけではないのがわかっているので、殺害を止めている、という思考が英語では明確になっています。

【ヴェイン】
She's a monster.
こいつは怪物よ。

【セナ】
No, Viego is the real monster.
違う、真の怪物はヴィエゴのほうなの。

上の「乗っ取られた」というニュアンスがあるので、「そっちじゃねえよ」で話が繋がります。

【ルシアン】
And there aren't enough arrows in the world to stop him.
そして、やつを止めるには矢が足りない。

日本語版だと「しかし(逆説)」ですが、英語だと「そして(順接)」でセナの言葉を引き取って続けています。また、日本語だと「歯が立たない(単に力不足)」ですが、英語だと「手数(味方)が足りない」ことを匂わせています。なので、次のセナの言葉(味方になってくれ)に続くわけです。

【セナ】
We need to work together, or he wil destroy everything.
私たちは協力する必要がある、でなければやつはすべてを破壊するわ。

【ヴェイン】
What is this place?
これはどういう場所なの?

【セナ】
This is where you make a choice.
ここはあなたが決断を下す場所。

Stand with us in the light, or fall alone to the darkness.
私たちと共に光のもとで戦うか、ただひとり闇に飲まれるか。

英語では「闇(につく)」は選択肢になっていません。「一緒に光の戦士になる」に対する選択肢は「1人で戦って敗死する」です。

【ルシアン】
She's reckless, Senna.
セナ、彼女は向こうみずだ。

【セナ】
And we'll need more just like her to stop what's coming.
これから、彼女みたいな人がもっと必要になるわ。来るべきものを止めるには。

英語版だと、ルシアンはヴェインを味方にすることには反対しているのがわかります。あいつ無茶するから。ここのAnd(順接)は、英語版セナ特有の、皮肉のこもった言い回しです。

【ヴェイン】
Are you two just going to stand there, or are we going to find something to kill?
あんたたち2人はそうやってそこに突っ立ってるつもり?私は獲物を探しに行くけどね。

前半は二人称(あんたたち)、後半は1人称複数(私たち)と、主語が変化してるのがポイント。
後半はそのまま訳すと「それとも、みんなで獲物を殺しに行く?」となりますが、前半との対比で、ヴェインが自分の意思で行動しようとしていることが強調されています。

フランス語版も比べると、やっぱりちょっと印象が違って面白かったところがあるので、気が向いたら補足します。たとえば、最後のところでルシアンがヴェインのことを「reckless=無謀、向こうみず」ではなく「instable=(精神的に)不安定だ」と表現していたり。
翻訳の良し悪し以前に、どうしても翻訳に載せ切れないニュアンスがあるんですよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?