賢者の墜落

　白饅頭さんが上の記事で
「配られたカードで勝負しろというのを恵まれたカードの人から言われるのは我慢ならない」
　という最近よくある話に対して
「配られたカードに差があるのは確かに事実だけど、それで勝負をしないままだと、行動しないままだと最終的には無です」
「厳しさを皆が嫌がってこういった甘やかすイネイブリングような言説はうんざり」
「行動して勝負しよう、そうすることで現状は変えられる（それがポジティブっていうことだ）」的な事を言ってたんですが…

「拗ねるな、失ったもの、持っていないものを数えるよりも泣き止んで勝負しろ、行動して現状を変えろ」
　というのは以前から主張していた事ですが、最近それがより先鋭化してませんかね？

　はっきり言いますが、それは白饅頭さんがもう「強者」の側にいるから「強者ポルノ」（成功しない者は努力が足りない）が楽しくなっただけではないですかね？
　以前おっしゃっていた「貧しい境遇から立身出世した知人がだからこそ貧しい人々の怠惰さを憎み、より苛烈に扱う」というのと何が違うんですかね。
　そしてその「自らが強者であることを自覚しない行い」は「自分たちが権威となった事に無自覚でいつまでも抵抗者でいるつもりの左翼」と何が違うんですかね。
　あなたも「そっち側」に行ってしまっただけなんですよ……
　そろそろ自覚して下さい。今のあなたは「調子に乗っている」と。

　なぜこのような「勝負を降りよう」という言説が産まれたのかを「SNSで直接つきあいのない人たち特有の無責任な言説だから」というように分析していたようですが、それは一面的であり、誠実ではないと思います。

　なぜ勝負を皆が降りるようになったのか。それは「勝負しろ行動しろ」と言われてその通りにろくなものを持っていない貧者たちが必死に「普通」に追いつけるように「努力」した結果がどうであったか。

　ブラック企業みたいな過重労働が増えまくって結局残ったのはぼろぼろになった身体だけ。
「恵まれた手札」のアホ共が作った訳の分からないルールで「虐待する母親でも母親なので親権はそっちに。どんなに金を持って子供を大切に養っている父親でも面会禁止。養育費だけ払え」とか。
　そういう「正直者が馬鹿を見る」ばかりか率直に言って「過労死で死ぬ」からじゃないですかね。
　平成ではそういうのメチャクチャ多かったじゃないですか。
　みーんなバタバタ過労死で死んでったじゃないですか。
　もうお忘れになったんですか？それとも目を逸らしていらっしゃる？
　それは誠実ではないですね。

　まともに努力しようっていうのは「社会への信頼」があるからで、それは白饅頭さんがいつも言うように「有限のリソース」なんです。
　あまりにも「正直者が馬鹿を見る」ということが増えたらみんな気づくんですよ。
「この世界は『死んだ方がいい世界』だった」と。
「醒めるに値しない世の中だ」と。
　だからみんな「寝そべり」になった…それだけなんです。

「寝そべり」で迷惑かけてますか？
　自分の食い扶持を自分で稼いでる。別に悪い事してるわけじゃない。暴れてるわけでも犯罪してるわけでもない。
　そりゃあ、社会の持続サステナビリティに貢献してはいませんがね。
でも、何ら悪事をやらずに自分の食い扶持を稼いでいるっていうのまで否定されて社会の持続のためにもっと働け産め育てろと言われたらもう立つ瀬がないわけですよ。
　それは例えれば「税金のためにもっと働いて死ね」と同じなんですよ。
　もうそこまで言われればこっちも「死にものぐるい」で戦わざるを得なくなるんですよ。

「人間ひとには触れちゃいかん痛みがあるんだ！！そこに触れたら後は生命のやり取りしか残らんのだ！！」

「花の慶次」　真田幸村のセリフ

ってワケですよ……
「強者」に必要なのは……「わきまえ」ですよ。
弱者を追い詰めすぎてはいけない。縋るものさえ奪ってしまえばそれはもう「命がけ」になってしまうんです。

まあその……残念ですよ。
あなたほどの鋭い知性を持つ人でも「強者ポルノ」に陥るのだなと……
「自分はいつまでも抵抗者の側のつもりで、権力の側にいる自覚がない仕草」をするのだと……
人はだれしも、力を持つと持たざる者であった頃の事を忘れるのでしょうねえ……
とても残念ですよ。