(詩)酔生夢死

人がいっぱい並んで歩いてる
皆前の人についていく
行列の先頭は見えないけど
最後尾は見つけられた

その列に並んで歩くのが安全だから
その列に並んでいるのが平和だから

僕も列に加わって歩いてる
ずっと前の人についていく
時々違う列も見かけたけど
いつの間にか一緒になった

一緒になったり離れたり
時々散らばったけど元通り

色んな景色があったよ
皆とそれを共有して、皆一緒に感動した
互いに確認しながら、互いに安心しながら
一列になって歩いてく

ある時僕は見付けたんだ
一人で歩くおばあさん
どの行列にも加わらずに
ずっと一人で歩くおばあさん

その列に並ばないのは危ないから
この列に並んでるのが安全だから

おばあさんが僕に気付いて言うんだ
「行きたい所があるんじゃないの?」
本当はそうなんだ
でも、行列はそこには向かわないから

色んな景色があるだろう
僕はそれを見に行って、僕の宝物にしたかった
一人で道を決めながら、一人で探しながら
見た事がない場所に行きたい

皆はおばあさんを鼻で笑った
「あいつは馬鹿だ、放っておこう」
僕も同調して笑った
少し心が痛かった

おばあさんは優しく微笑んで、僕に「またね」と言った

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