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三麻データ本の解釈 その1

前回のnoteで、牌効率は四麻より三麻の方が難しく、先制リーチ判断と押し引きについても三麻の方が少し難しいかもしれない、という話をしました。

牌理については今後もnoteに書いてみたいテーマは沢山あるのですが、基本的には時間をかけてじっくり精度を高めていく領域だと思いますので

今回と次回で、「三麻における先制リーチ判断と押し引き」について少し書いてみたいと思います。

ただし記事に書く以上、個人的な意見ではなく、根拠のある話がベースとなります。そこで登場するのは・・・


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三麻のデータバンクと言えば、やはりみーにんさんの『データで勝つ三人麻雀』ですよね。客観的な指標の集合体として、この本の右に出る参考資料はいまのところ他に存在しないでしょう。今回はこの本から所々でデータを抜粋させていただいております。


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四麻版である『統計学のマージャン戦術』(→個人的には5本の指に入る良著です)も読んでいるということが前提にはなりますが、四麻と三麻での注意すべき違いや、自分なりに解釈をアレンジしている点について、書いていこうと思います。

ということで今回は「先制リーチ判断」についてです。網羅的に記述するのは難しいので、基本事項については省かせていただき、個人的に気になる点のみをピックアップさせていただきました。(とはいえ5000文字近いので長文注意です!


◉先制リャンメンテンパイ

三麻は牌種が少ないので、ツモりやすい上に裏ドラも乗りやすく、ツモ損なしなら四麻以上にリーチが有利となります。しかし天鳳のような「ツモ損あり・抜きドラありのルール」なら、自分の打点などによって様相が変わってきます。

※注意点
・以下は「ツモ損あり・抜きドラあり」のルールを前提とさせていただきます。
・点数の記載がある場合は、みーにんさんの著書の牌譜解析結果に基づいた局収支を引用しています。ただし数多くのデータをこの場で列挙することはできませんので、著書を読んでいないと理解しづらい部分はあるかもしれません。
・四麻との対比を意識した文章を数多く載せています。三麻専門の人からみると「四麻のデータと比較しても意味がないのでは?」と思われるかもしれませんが、四麻もやる人からすると感覚の補正が必要な部分であったり、比較することによって理解しやすくもなるので、参考として載せています。


① 役有りのリャンメンテンパイをリーチするかどうか

東1局8巡目の南家を想定します。四麻との違いは以下の通りです。
(1)四麻と比較するとテンパイ自体の価値が相対的に低くなる。
例えば四麻のダマ30符1翻をリーチしたときの局収支は1100点ですが、天鳳三麻は200点しかありません。これはアガれなかった場合の失点が四麻より大きくなるためです。高打点手が出来やすい三麻の特徴に加えて、抜きドラがある影響が大きくなるからです。

(2)リーチによる局収支上昇効果が四麻より低い。
例えば四麻のダマ40符2翻をリーチすると局収支が1800点上昇しますが、天鳳三麻は1100点の上昇にとどまります。これはツモ損ルールと関係しています。

(3)明らかにリーチ優位と言える領域が四麻よりも狭い。
打点上昇効率が高い「ダマ30符2翻、ダマ40符2翻、ダマ30符3翻」については四麻同様、余程のことがない限りリーチで良いですが、それ以外の手はリーチによる局収支上昇がそこまで大きくないか微差、あるいはマイナスになります。

② ダマを考慮する手
リーチによる局収支の上昇が500点前後かそれ以下の手ではダマを考慮することが増えます。
(1)ダマ30符1翻、40符1翻の手
四麻ではリーチすることも多いですが、三麻のピンフのみの局収支はダマ・リーチとも0点付近となります。それでもリーチすると600点ほどの打点上昇が見込めるため基本はリーチで問題ありませんが、失点リスクが高い場面では判断が逆転する程度の上昇効果となります。具体的には「北を複数抜いている人の手が速そうならダマにする(現物待ちなら尚更)」などが挙げられ、場況を見て判断を変える必要が出てきます。ちなみに、ピンフのみに比べると40符1翻はリーチ寄りとなり、序盤のテンパイなら基本的にはリーチ優位となります。

(2)ダマ40符3翻、4翻、5翻の手
四麻の40符3翻はリーチすることも多いですが、天鳳ルールの三麻だと局収支の差は微差にとどまります。これらの高打点領域の手はピンフのみ以上にリーチによる局収支の上乗せ効果が低くなるため、アガリ率を重視してダマを考慮する場面が増えてきます。

詳しい判断基準は、四麻に関する上記の記事の『ダマ4~5翻の先制良形リーチ判断』もご参照いただければ幸いですが、低打点時と同様、場況依存度が高い選択となるのは確かです。「自分が北を多く抜いているからダマ」「手が速そうな人の現物待ちになっているからダマ」などは三麻らしい判断要素になると思います。


③ 点数状況の影響
開局ならリーチ優位の手でも「トップ目だからダマ」「ライバルの親を流すためにダマ」「牽制効果が高いのでリーチ」といった状況は数多く存在し、平場外の判断が多くなるところにリーチ判断の難しさがあります。特に三麻の場合は「トップ→ラス」になるような痛打も発生しやすいため、四麻以上にデリケートな判断を求められるかもしれません。このあたりのリーチ判断を定量化して決めるのは難しいので、実力差が出やすいとも言えます。「東3局か南1局以降のトップ目だから」という理由でリーチ効率の良い役あり良形テンパイをダマにする基準としては、個人的には「50000点以上持ち(35000点スタート)」または「後手を踏んでいる可能性があるケース」を目安にしています。もちろん2着目とそれなりに点差がある(=ダンラス者がいない)場合の話です。


◉先制愚形テンパイ(字牌待ちを除く)

① 基礎データ(東1局8巡目の南家を想定)

・ダマ40符1翻
ダマ:-1000点、リーチ:-500点
(四麻はダマ:0点、リーチ:800点)
・ダマ40符2翻
ダマ:-100点、リーチ:400点
(四麻はダマ:900点、リーチ:1900点)
・ダマ40符3翻
ダマ:1500点、リーチ:1100点
(四麻はダマ:2600点、リーチ:2700点)

ダマ40符1翻とダマ40符2翻はリーチすると局収支が約500点上昇します。これはピンフのみをリーチする感覚に近いので、状況次第で容易に判断が覆ると言えます。

しかし、期待値的にリーチが損という訳では決してないので、僅差の点数状況で牽制効果が高い局面など、リーチ判断が正着になる場合も多々ありそうです。

ダマ40符3翻の愚形テンパイは全データのトータルでは400点差でダマが優位という結果でした。良形変化や高打点変化がある場合は確かにダマが有利になる場合が多そうです。しかし一通ドラ1のペンチャン待ちなど、変化が利かない手に関しては個人的にはリーチ優位と考えます。ダマの方がアガリ率自体は高いと思いますが、一番厄介なのが他家からリーチを受けた場合です。三麻の子の愚形3翻の手ですと、リーチに対して押し優位と言える場面ばかりではないので、押し引き判断がかなり難しくなります。この判断を毎巡正確にできる自信があればダマでも良いと思いますが、そうでないならばリーチによる打点上昇と牽制効果を重視した方が成績は安定するのではないかと思います(=高難度の押し引き判断ミスも減る)。一通のペンチャン待ち以外ですと、純チャンの愚形待ちや役牌ドラ2の19牌同士のシャンポン待ちなども該当します。

② 愚形待ちの種類や残り枚数についての注意点
愚形待ちはリャンメン待ちと違い、待ちの種類や残り枚数によってアガリ率が大きく変動します。よって先ほどの牌譜解析から得られた平均的な愚形テンパイのデータを、実戦でそのまま使って良いかどうかについては注意が必要です。

(1)三麻における平均的な愚形待ちのアガリ率とは・・・
5-12巡目全体におけるアガリ率の平均値は45.3%でした。先程局収支を示した8巡目のアガリ率は46.0%ですので、中盤全体の平均値に近かったということが言えます。

(2)平均的な愚形待ち(アガリ率45%前後)とはどんな待ちか
0枚見えの無筋37待ちが代表格(ほぼ45%)となります。
・少し良い(45~50%):0枚見えの無筋28待ち、1枚見えの筋28待ち
・少し悪い(40~45%):1枚見えの無筋19待ち、2枚見えの無筋19待ち、1枚見えの無筋28待ち、0枚見えの片筋456待ち、0枚見えの無筋456待ち、1枚見えの筋37待ち、1枚見えの両筋456待ち

※Check Point
中盤のアガリ率が40〜50%と推測できる手であれば、局収支データをそのまま参考にしても、平面的には大きな問題はないと言えます。


(3)四麻との違いは?
良形にせよ愚形にせよ、三麻のアガリ率は四麻より2~5%程度上昇するのが一般的です。無筋28や無筋37待ちなどはその典型例ですが、四麻との比較で注意すべきなのは19牌待ち(無筋19と筋19)で、いずれも四麻よりアガリ率が低下しています。比較的良い待ちであることに変わりはありませんが、特に無筋19は四麻ほどのアガリ易さはないので注意が必要です。原因として考えられるのは、「端牌だから」という理由で他家が自分のリーチに切ってくることが四麻より少なく、自分が必要としている19牌を他家に使われやすいことなどが挙げられそうです。

③ 実際のデータ運用方法
リャンメン待ちとは異なり、三麻の先制役あり愚形テンパイはリーチが圧倒的に有利と言える平面的な手牌が少ないことを基礎データの項で述べました。例えば四麻のタンヤオドラ1のカンチャン待ちなどを、ラフに曲げて良いのとは対照的です。

牌譜解析データの平均的な愚形像が分かったということは、上記から外れたゾーン、すなわちアガリ率50%以上とアガリ率40%未満のゾーンも浮かび上がってくるかと思います。実戦ではテンパイした手牌がどのゾーンに当てはまるか?で、リーチ判断に補正をかけることが重要となります。

例えばダマ40符1翻の愚形テンパイであれば、相手にドラが多いことを踏まえると、平均的な愚形テンパイよりも押し返されやすいことが予想されるため、実際はデータよりも少しダマ寄りに調整すべきなのかもしれません。

しかし、自分の手が平均的な愚形より優れた待ち(例えば0枚見えの無筋28待ち、0枚見えの筋37待ち、0,1枚見えの筋19,28待ちなど)であれば、堂々とリーチに行くこともできそうです。

逆にアガリ率40%未満(例えば1枚切れの無筋456待ちなど)の役あり愚形の手であれば、打点に関係なくダマにしておくのが無難ということが言えるのではないかと思います。

◉字牌待ちテンパイ

最後に字牌待ちテンパイについて簡単に触れます。

字牌待ちはシャンポン待ちと単騎待ちがありますが、トータルのアガリ率自体は四麻とほぼ同等です(四麻と絶対値が変わらないということは感覚的にはややアガリづらいとも言えそうです)。

ただし、四麻ではアガリ率が「リーチ≒ダマ」となるため、打点に関係なく字牌待ちは基本的にリーチした方が期待値が高いと言えたのですが、三麻のアガリ率は「リーチ<ダマ」になるため、40符3翻以上の手ではダマとの差がなくなります。この傾向はリャンメンテンパイの場合と似ていますので、場況によってダマを使い分けることが必要になりそうです。

また字牌単騎待ちのアガリ率だけをピックアップすると、1枚切れのアガリ率は四麻とほぼ変わらず、巡目に関係なく強いという特徴も一緒でした(よって当然リーチ寄り)。地獄待ちについては5-12巡目の平均が40%ということで四麻よりやや低くなる傾向がありましたので、終盤以外でのリーチの決行は慎重さを求められる可能性があります。逆に生牌字牌のアガリ率は四麻より若干高い傾向も読み取れましたが、これが実戦で有意な差と言えるのかはどうかは不明です。


◉まとめ

天鳳三麻における先制リーチ判断は、四麻に比べるといわゆる鉄リーチと呼べるような平面的な手牌が少ないと言えます。場況を組み合わせて判断することが多くなるという点では、複雑性が増す分、四麻よりもリーチ判断の難易度がやや高くなるということが言えるのかもしれません。


参考図書) 
データで勝つ三人麻雀 みーにん著 福地誠編
統計学のマージャン戦術 みーにん著



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