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シャンテン戻しの境界線


今回は1シャンテンの手から愚形ターツを外して2シャンテンに戻す境界線を探ります。

特に条件がない限り、開局序盤の南家(3~5巡目くらいで手変わりを見る余裕が十分にある)とお考えください。

キーワードは「強浮き牌」「ペンチャン」「タンヤオ」の3つです。

手牌としては、雀頭がある2メンツ形の1シャンテンを考えます。まずは複合ターツのない形から始めます。

① 愚形ターツ+良形ターツ+強浮き牌x2

牌図1

打1m  
中ぶくれと4連形は強浮き牌のため、愚形ターツを落としてシャンテンを戻しやすい形です。ただし打点的なメリットはさほどないので、打4pや打8sと比較して大差で有利という訳ではありません。巡目が深くなればテンパイ取りも重要になりますので、中盤過ぎ以降は浮き牌を切って1シャンテンに取ります(以下全て共通です)。カンチャンでも払うので、マンズの愚形ターツが12mのペンチャンなら尚更シャンテン戻しが優位となります。

牌図2

・打1m  
ソーズの4連形の代わりに赤5sが加わりました。赤5やドラは打点を上げる強浮き牌ですので、牌図1と同様にシャンテン戻しを考慮します。

牌図3

・打1m  
6pはドラではありませんが、567と678の三色目がある強浮き牌ですので、やはり価値の高い浮き牌となります。

② 愚形ターツ+良形ターツ+強浮き牌+3-7牌

牌図4

・打1m または 打3s
牌図1のソーズの浮き牌が通常3-7牌に格下げされ、3sとペン3mの比較になります。こうなるとかなりの微差になりますが、愚形ターツがペンチャンなら最序盤~序盤はシャンテン戻しを考慮しても良く、中盤からは3sを切ります。孤立した3-7牌に1~5のいずれかの牌を引けばペンチャンより強いターツになることが多く、また別の孤立牌を1枚持てる余裕もありますので、ペンチャンはシャンテン戻しする際のキーマンになると言えます。なお、マンズの愚形ターツが13mのカンチャンなら孤立37牌を残すより価値が高いので3sを切ります。

③ 愚形ターツ+良形ターツ+3-7牌x2

牌図5

・打5s  
今度は強浮き牌がなくなりました。ペンチャンと通常3-7牌の比較であれば微差でペンチャン残しが有利となります。しかし微差なので、例えばドラが3sで5sの価値が少し高くなれば、打1mに傾くような差でしかありません。あと手牌を色々シミュレートしてみると分かるのですが、メンツが全てシュンツで孤立3-7牌が2つある手牌というのは、何らかの三色がぼんやり見えている(もしくは1~2手先の近い位置に三色がある)ことも多いので、形だけでなく全体を見て浮き牌切りかペンチャン落としかを判断したいところです。ちなみに2メンツのうち1つが暗刻なら、ピンフへの変化を見るメリットがないので、孤立牌切りがより優位となります。

牌図6

・打1m  
ペンチャン以外の部分がタンヤオ牌
で構成されていますので、7pと7sは単なる孤立3-7牌ではなく、打点を上げる可能性がある浮き牌です。今回はタンヤオになる確率が高いとは言えませんが、それでもシャンテン戻しをする価値は十分にあります。境界線を引くために、敢えてタンヤオに渡る最低ラインの手(タンヤオが崩れやすく、ピンフもつかない手)を用意しましたが、実際はこれよりもタンヤオやタンピンになりやすい手が多く存在しますので、よりシャンテン戻しが優位になるはずです。7pや7sを強い浮き牌と見ることもできますが、ペンチャンを落として牌姿全体にタンヤオを付加するというイメージの方が強いです。


ここからは複合ターツがある形です。

④ 良形複合ターツ+愚形ターツ+強浮き牌

牌図7

・打3mまたは 打9m  
リャンメントイツを構成している3mは通常の3-7牌より少し強い浮き牌となるため、感覚的には牌図1と牌図4の中間くらいに位置する牌姿です。牌図7は現麻本54ページ:牌21からの抜粋ですが、ここから9mを切る発想を持てる人はそんなに多くないので個人的にはとても印象的な牌姿です(書籍では序盤打9m、中盤打3m、以降は打4pを推奨)。マジョリティーはおそらく「序盤でも打3m」だと思いますが、期待値はほとんど変わりませんので、正解不正解ではなく思考の引き出しを増やす系統の問題です。なお、マンズの愚形ターツがペンチャンの場合やソーズの678sが暗刻の場合は打9m寄りになります。

牌図8

・打9m  
微差ばかりでもう疲れた!という人向けの復習問題です。「強浮き牌」「ペンチャン」「タンヤオ」の3種の神器を兼ね備えており、これは有意差を持って打9mを推奨します。

⑤ 良形複合ターツ+愚形ターツ+3~7牌

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・打7p  
牌図7のピンズの浮き牌を通常3-7牌に格下げしました。これだと牌図5のバランスに近くなります。浮き牌の打7pと打3mの差は微差ですので場況で判断するのが有力であり、中盤以降は7pを切ります。マンズの愚形ターツがペンチャンなら最序盤は打9mの選択もあります。

牌図10

・打3p  
牌の並びが変わり、牌図9のリャンメントイツを変化量の多い3面トイツに変えた形です。打牌候補は打1m、打3p、打4sの3つですが、マンズの愚形ターツがカンチャンなら打3pを推奨、ペンチャンなら打1mも考慮します

打3pは完全1シャンテンで当面の受け入れが一番広いのはもちろんのこと、13mの縦引き、ツモ3s→打13mからのイーペーコー含みの3面張変化、ツモ6sのくっつき良形変化にも対応できます。またツモ258sでテンパイしたときに、カン2mで即リーに行きづらい場況になっていても、くっつきイーシャンテンに受け変えられる柔軟性も持ち合わせています。

「3面張だからとりあえず4sを切って浮き牌の3pを保持」は一見バランスが取れているように見えますが、すんなり3面張が埋まって愚形待ちが残る率も高く、無難な次善手にはなりますが最善手にはなりづらい選択です。また「局面によって良形を固定」するのはむしろ牌図9の形の方が妥当性が高いという点も面白いところです。

一方、巡目が早ければ打1mでも期待値に大差はありません。スピードを争う場面で緩手になることだけは避けたいですが、「ドラ無し」「トップ目」「ピンフを付けたい」「カン2mが少し不安」といった状況においてはむしろ最善手に浮上する可能性もあり、複数の状況でも対応できる汎用性の高い選択になり得ると言えます。


この他にも愚形だらけの牌姿や、単独雀頭がないパターンなどもあるのですが、分量が多すぎるためここで終了とします。

境界線を探るということは微差を探ることになるため、推奨打牌や本文の内容に違和感を感じられた方もいらっしゃったかと思います。雀士それぞれが最適解を求めて日々思考を巡らせている訳ですから、それがごく自然だと思われます。

大事なのは微差であるか大差であるかを論理的に把握し、もし自分にない選択が微差に位置している場合は、「自分は○○の一択」などと決めつけずに、状況に応じてその選択肢を持てるようにすることが重要かと思います。

最後になりますが、冒頭にもあったように『序盤で手変わりを見る余裕が十分にある巡目』という条件付けがあったことをここで再確認させていただきます。同じ牌姿でも巡目によって選択が変わり得ることを改めて痛感させられます。


参考図書) 
勝つための現代麻雀技術論 ネマタ著 福地誠編






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