ひかりの再演 ~やひこゐろ編~
やひこゐろ
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本稿は、神楽ひかりに目を焼かれた2 人が『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(以下、劇場版)を「神楽ひかり」に注目して解釈・考察したものである。やひこゐろ編とせんもち編でお届けするため、続けて読んでいただくことを推奨する。感想文要素も混ざっていることもご承知おき願いたい。
神楽ひかりの心模様~再演していた説~
皆さんは、劇場版の冒頭、トマトが破裂し華恋が大の字で倒れてしまったあのシーンを見てどう思っただろうか。
私は、「ひかりが再演の末、自ら華恋に別れを告げた」という説、つまり「神楽ひかりの再演説」を推したいと考えている。以降で劇場版の各シーンの解釈を交えながら、考えていこうと思う。
そもそも上記のシーンでは、2人共レヴュー服を身につけている。ということは、「レヴュー」、またはオーディションなのである。ではいつ行われた、どのようなレヴューorオーディションなのだろうか? これは仮説になるが、時系列としては第100回聖翔祭の後ではないかと考える。この根拠は2人のレヴュー後に流れる面談の場面が、各々の進路や考えを話すものであるためである。この他、誰と誰がオーディションをしたのか、情報が無いので何とも言えないのが残念だが、ひかり・華恋両名以外は一切出ていないと考えるのが適切かと思う。これは、劇中星光館で香子が言う「呼ばれんかった……」というセリフから推測される。
ひかりはTVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(以下、TV版)、並びに『劇場版再生産総集編 「少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド」』(以下、ロロロ)の劇中にて、華恋のキラめきに目を奪われ、「怖く」なってしまったのである。
彼女はかつて、ロンドンの王立演劇学院時代に「オーディション」を経験しており、内容を理解していた。その仕組みを利用しようと、キリンの提案に乗る。そして日本でのリベンジをするも結果的には華恋に負けてしまった。しかしこのままでは、ひかり自身の今後の人生が「永遠の二番手」になってしまう。それでは悔しい。そこで、舞台少女として「再生産」を果たし華恋へ再挑戦をする。「舞台はひかりちゃん」と考えている華恋に「何のために舞台にいるのか」と問い詰め、「分かんない」状態となった華恋にトドメを刺し、ロンドンへ旅立つ。このまま華恋といると、いつ「目を奪われてしまう」のか、分からなくなってしまうからである……。ただし、やはり華恋のことは気になっており、ロンドンのタワーブリッジ上でリンクするような即興劇をしたり携帯のメッセージでヒントを与えたりした。華恋は何故、ひかりが「行ってしまったのか」分からなくなっていた。なぜなら劇場版冒頭のレヴュー(以下、冒頭のレヴュー)で、キラめきを失ってしまったからである。私は恐らくひかりが、華恋のキラめきを利用し、自らが去った理由を「忘れさせた」のではないかと考える。
その後ロンドンで生活するひかりの元に、キリンがやってくる。「wi(l)d-screen baroque」の始まりである。
と話しているように、この先どうなるのかひかりには分からなかった。そこで何をしなければならないか分からなくなってしまい、迷いが生まれたと考えている。私は華恋に何が出来るのか。ただ何をどうしていいのか分からない、とにかく突っ走る。そこでまひると対峙する、「競演のレヴュー」の始まりである。
競演のレヴューでは、華恋と純那の演技を見ていたまひるが全てを察し、本気でひかりにぶつかる。なぜ相談をしなかったのか、なぜ華恋から離れてしまったのか、なぜ勝手にロンドンへ戻ってしまったのか、なぜ逃げたのか……全てを理解した上で、ひかりがこのままでは同じ様に華恋に負けてしまうから、何をしなければならないか気付かせるため、競演を希望したと考える。
劇中では
とまひるが言うように、華恋の気持ちを代弁する想いとまひる自身の感情が昂っていることが窺える。宣誓のシーンでは正々堂々戦うという意思が見られ、本気で対峙するというのも併せて感じられた。しかし、ひかりは華恋のことしか頭になく、まひるに華恋について問いかけてしまう。それがさらにまひるを怒らせてしまった。なぜ舞台で演技をしないのか。まひるは「大嫌い」とひかりにぶつける。
その「怖さ」に、またも逃げてしまうひかり。さらに追い討ちを掛けるように
と話しかけるまひる。華恋から聞いた「幼少期の約束」「運命の舞台」等のヒントを与え、「もっと本物のセリフを」とあるように、本音を出させて今何をしなければならないのか、舞台に上がれ、と追撃する。さらにまひるはこう言う。
この一言が決定打となり、ひかりは覚悟を決める。
しかし、まひるの「演技」はまだ終わらない。華恋がどれだけ傷ついてしまったか、どれだけ苦労したのか。それをひかりに訴えるため、ダメ押しを与える(私はこのシーンが一番ゾッとした)。
ここまできて初めてひかりは——映し出されるハイライト——まひるの訴えから、今までの行動全てが華恋から「逃げてしまっていただけ」と理解する。そして改めて、華恋が「怖かった」と実感する。
やっと真相を打ち明けてくれたひかりに対して、まひるも本音を話す。本当はまひるも「怖かった」のである。そして、「上手に演じられるかなって」という不安も漏らす。しかしそんな恐怖や不安を感じさせない「演技」に、ひかりは目を奪われた。華恋に何を言わなければならなかったのか、今後どうしなければならないのか、ヒントを得た(個人的にこの本音で語り合うシーンは大好きです。いつも泣きます)。
本音で語り合い、互いを褒め称え、スポーツマンシップに則って演じられたこの競演のレヴューは、冒頭のオーディションを「再演」する為にまひるが本気でひかりに対峙するレヴューだったと考える。
そしてひかりは劇場版最後のレヴューへ向かう。そして終幕に向け、「舞台はひかりちゃん」と考えている華恋に対して告げる。
ここで初めて、華恋が「観客」「照明」「舞台少女」というものに恐怖を感じ、『戯曲 スタァライト』を演じきって舞台少女として死んでしまう。直ぐに華恋の元に駆け寄り、全てを理解させて「次の舞台へ」向かわせるために「再生産」をさせる。こうして華恋がどうして舞台に立っているのか、理解させることに成功した。
お互いに口上を言い合い、一番の「キラめき」を見せ合う。華恋は、ひかりの姿を見て感じたのだと思う。今のひかりが一番「綺麗」、綺麗なのに「怖い」、今回のwi(l)d-screen baroqueでひかりがワンランク上になり、まさしくトップスタァになった、そんなひかりが羨ましく悔しくて、目が離せない。ひかりに「負けて」しまったのではないかと考える。
そしてひかりはセリフを言う。
まさしく冒頭のオーディションの「再演」である。華恋はここでやっと「全てを理解」したのである。「舞台はひかりちゃん」ではない。何のために舞台や練習をここまでやってきたのか、演じきった先もその先も「続き」があるのだと。
ひかりも華恋を「ライバル」とみなした。互いに認め合うことで、華恋はひかりから逃げ出さず向き合うことが出来た。
これにてwi(l)d-screen baroqueが終幕。結果、皆が成長して次の舞台へ進むこととなる。
以上の私の解釈より、私は「冒頭のレヴューは神楽ひかりの再演説」を推したい。
著者コメント(2022/10/10)
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。色んなコンテンツを嗜んでいましたが、ここまで沼にハマるのは初めてでした。映画館
で浴びた「キラめき」、書いてる今でさえまだ眩しくて…届かないんです。真矢クロ…いや麻薬そのものですネ!楽しい劇スライフを! Noスタァライト! NoLIFE !
せんもち編はこちら!
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