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猫とジゴロ 第二話

赤羽のボロアパートを出ると、JRの駅まで向かった。心持ち何だか高校受験、正確には受験合格後の入学式だよね、そんな時期に気分はタイムスリップしていた。スーツに手足を通して、辛うじてのスーツ姿で銀座に向かった。京浜東北線の車窓からは時折、満開の桜がチラチラと見え隠れしていた。アキラはシートには腰掛けず、ドアの窓から忙しなく流れていく東京の汚い街並みをボーッと眺めていた。列車が東京駅に近づき乗降客に紛れながらアキラは山手線に乗り換えた。「銀座7丁目ね。新橋が近いんだろうな」アキラは独り言をぶつぶつ呟きながらスマホに住所を入力したが、不慣れなナビゲーションのせいで随分時間を喰ってしまった。

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