その仄暗い空間を見渡すと、前方の左寄りの位置に、古い木製のドアがあるのが見えた。ドアの上側はドア枠の形の通りに弧を描いていて、子どもの頃に観たことのある中世を題材にした映画で見覚えがある、この形のドアを実際に開けてみるのは初めてだった。 どこからか入ってくる光が、手入れの行き届いた木目に反射し鈍く照り返し、しっかりと閉じられたドアからは穏やかな懐かしさが滲んでいた。 曇った金色の丸い、飾り気のないドアノブを右にひねり手前に引くと、どっしりとした厚みと温もりのあるその木の板