転職相談ケース①:Vtuberの裏側

前記事でも書いたが、転職エージェントには業界や業種の得意・不得意がある。

自分も当然得意な業界はあり、逆に全く伝手の無い業界も存在する。

グレーゾーンなのがIT系で、社内SE~制御系くらいまでは何とか対応できるのだが、これがゲーム寄りになってくると殆ど役に立たなかったりする。

IT・ゲーム市場に関しては別個で事業部があり、そちらに丸投げしているので得意じゃないという理由もあるのだが。




「星屑君が好きそうな人が来たよ」

普段そこまで絡みのないIT事業部の課長から呼び出しを食らう。

どうやら転職希望の人の件らしい。早速職務経歴書を見せてもらう。

「あ、本当に僕好みですね」


職務要約にはこう記載されていた。

『Vtuberの実況動画を作成していました』と。



普段、こっちの業界の人材面談には参加しないのだが、今回はあまりにも興味があるので参加させてもらった。

あまり個人情報を公開する事も出来ないので、極力個人が特定できない範囲で聞いた内容を箇条書きにする。

・Vtuberの中の人ではあるが、声の部分は別の人間が担当している

・動画にするゲームの選定、実プレイ、声役の台本作成、切り貼り程度の簡易的な編集までは自分が担当している

・声を当てる人間は実際にゲームをプレイしていないので、専門用語などの解説も行っており、時には演技指導(実際にプレイしているように見せる為)まで行う事も多々ある


正直、上記情報だけである程度チャンネルを絞れてしまいそうな気もする。勤め先の企業を聞いたが、耳にしたことのある所だった。


「転職を検討している理由は?」

課長が問う。

「遣り甲斐を見失っています」

返答は早かった。


それもそうだろうとは思った。どれだけ努力して撮影した録画内容でも、手柄は丸々持っていかれるわけで、腑に落ちない部分もあるだろう。

ただ、ゲーム一本で食べていく程の腕前が無い人間が、ゲームをするだけで給与が発生する職業は非常に稀であり、環境としては決して悪いとは言い難いのも事実なのだ。

これが個人配信者で、俗にいう投げ銭と広告収入で収益が取れるなら独立だって出来るはずである。

ただそれをしない、いや出来ないのは、軌道に乗せる自信が無いから以外に無いだろう。

事実、話している時も特徴がないというか、お世辞にもトークで食べていける要素は無かった。


本人曰く、動画の企画立案自体は楽しいので、そういう路線で今後はやっていきたいらしい。


現状、彼の経験と希望がマッチした案件は見つからず、今回は相談止まりとなった。


ここまで尖った職種だと、大きなきっかけが無い限り同業界で食べていく方が彼にとっても幸せだと思う。

世間の大半は、彼のスキルを持て余すだろうし、実際活かせる道が殆ど無いのだ。

彼は現在も、今の勤め先でゲームプレイ内容を録画して、台本を書いて、声優の為、いやキャラクターのキャラ確立の為に勤しんでいる。

役には立てなかったが、彼の今後の人生が少しでも楽しくなればいいなと今でも思っている。

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