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プロダイバーが有人宇宙学を読んでみた
学問としての有人宇宙?
まるで総合格闘技ではないか…
この分野はダイビング知識を応用できる…
まえがき 〜本記事の定義〜
皆さんは、いま人類社会がどこを目指しているかご存知でしょうか。
ざっくり言うと、月で生活・経済圏を築き上げて火星にまで人類社会を広げようとしています。…なんとも壮大ですね!
日本もこの世界的な挑戦に参加国として加盟しています。
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なぜ宇宙を目指すのか…
という問いを投げかけられそうですが、ここではその命題には触れません。
大切な命題だからこそ、別記事で執筆します。
今回は、
宇宙で人類の持続可能な繁栄を目指す
これを前提として読み進めてみてください。
水中×宇宙をテーマとして、
ダイビングインストラクターをしている私ならではの視点を織り交ぜて、読んだ感想を綴っていきます。
堅苦しくない文面で書いておりますので、気軽に読んでいただけたら光栄です。
この記事のポイント
最も印象に残ったこと
〜有人宇宙を学問する意義〜
学術的なダイビングは有人宇宙で活きる
有人宇宙とダイビングの接点
執筆者 SIC有人宇宙学研究センター 様
発売されてから最初に購入した10人の1人なのではないか…と勝手に自負しています(笑)
というのも、執筆された方々の活動を兼ねてから追いかけていた隠れファンだからです…(照)
その方々とは…
SIC有人宇宙学研究センター
兼
京都大学 宇宙総合学研究ユニット
もちろん、この記事は私が勝手に綴っております(笑)
きっかけは些細でした。
私がダイビングによる有人宇宙訓練の発展を目標にプロダイバーをしていたとき、たまたま京都大学宇宙総合学研究ユニット主催のオンライン・シンポジウムの告知をネット上で仕入れたのが始まりでした。
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お!・・・っと目を引くようなタイトル
製造業として成長してきた日本では、ロボティクスがどのようにして宇宙空間で機能して活躍するのかといった議論はあらゆる場面で展開されています。
ですが、有人宇宙にスポットライトを当てた場は非常に少ないです。かなり貴重だったこともあり、気づけば参加ボタンを押していました。
月面において1Gまたは1G前後の環境を作り出すルナグラス構想といった建築・建設目線での発表があったり…
人が宇宙に進出したときの文化人類学的なアプローチについても話されていたり…
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文理融合した学問体系であることがとても印象に残っています。
思えば…2021年度宇宙飛行士選抜試験でも、学歴や自然科学系の大学出身といった従来の応募条件が無くなり、文理ともに重要だとされました。このことからも、宇宙開発には多角的なアプローチが必要とされていることが分かります。
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フィールドワークも非常に大切にされているそうで、アリゾナ大学にてSpace Camp at Biosphere2というプログラムを定期的に開催されています。
宇宙を模した密閉空間において人工的な海洋・森林の生態系実現を目指した研究プロジェクトに学外の大学生にも一般公募しているそうです。
そんな方々の学問研究を総ざらいして1冊にまとめられたのが、
有人宇宙学
総ページ数にして337ページあります。
さて、有人宇宙の学問とは、いったいなんなのでしょう。
有人宇宙「学」
有人宇宙に「学」を添えた表現は、おそらくここだけではないでしょうか。
研究・開発・訓練・探査といった言葉はよく見ますが、そもそも学(=学問)とはなんなのでしょうか。
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学問とは
学問の意義は、人類の知的認識領域の拡大である。それは、個人の知的好奇心を満たすということを超えて、人類共有の知的財産の拡大を意味している。
学問には2つの効用がある。第1は、生活上の便宜と利得の増大である。第2は、自分を作り上げていくこと、確立していくこと、いわゆるBuildingとしての教養であり、このような教養による人間形成を通じての社会の形成である。
なるほど…
教養ある個人が育ち、集まることで社会を形成し、世代を超えて蓄積されてきた知的財産が成長しながら洗練され、人の生活を豊かにしていく…
といったところでしょうか。
では、有人宇宙を「学問」することは、いったいどういうことなのか。
ポイントは、この書籍構成にあると私は考えます。
興味深いことに、多種多様な専門家が各Chapterを任されて執筆されていました。最終ページ周辺に執筆者一覧があり、編集者を除いて執筆に協力した専門家は、なんと26名。元JAXA宇宙飛行士の土井隆雄さん・山崎直子さんのお名前も!
様々なバックグラウンドがあり、
海洋、森林、農学、工学、建築、航空、生物、栄養、薬学、医学、法律などなど。
引用文献も含めると、正直数え切れません。
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まるで
学問の総合格闘技を見ているかのような感覚…
(彦摩呂さんっぽい表現になってしまいますが、笑いを誘ってるわけではありませんよ!)
読み進めていくと、あらゆる学問が寄せ集まり、ある1つの学問定義を支持するようにChapterが組まれているのが分かりました。
その学問こそ、この有人宇宙学です。
繰り返しますが、学問とは長い年月を経て受け継がれてきた知的財産であり、それが個人・社会を育み、人の暮らしを豊かにすることです。
これを踏まえた上で、本書では、こう綴られています。
曰く…
我々が継承してきたあらゆる学問は、人類が地球上で生きていくために育まれたものである。
そして、地球を飛び越えて月・火星に進出しようとしている今だからこそ、
人類が宇宙のあらゆる環境で生き延びるために、新しいその環境に適した学問が必要である
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これこそが有人宇宙を学問として捉えることの大きな価値であり、私が最も印象に残ったフレーズでした。
学術的なスキューバダイビング
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この学問定義を踏まえるなら、私はプロとして学術的なダイビングに取り組んできました。
ダイビングはとても興味深いスポーツです。
美しい海の中を探検するだけでなく、物理的なロジックに忠実なスポーツでもあります。浮心と重心のバランスを考えた器材構成を組めば、水中で最も効率的とされるトリム姿勢を簡単に作ることができます。また、深く潜れば潜るほど圧力がかかりますが、呼吸しているガス(酸素、窒素、ヘリウムなど)を調整することによって減圧症リスクをコントロールすることもできます。
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Global Underwater Explorers Fundamentals course
ダイビングを理論立てて捉える方は比較的少ないかもしれませんが、とても大切なことです。
水中世界は、その美しさとは裏腹に、死と隣り合わせだからです。我々プロが限界環境を探索する上で最も大切にしていることは、安全に帰還することです。そのため、適切な減圧理論や人体作用を学び、チームで綿密な潜水計画を組み立てることが命を左右します。
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指導者としてより安全なダイビングを追求し、誰もが自立して海を楽しめるように、私は日本水中科学協会(Japanese Academy of Underwater Sciences=JAUS)の副理事(師匠)に招待していただき、正規会員として活動しています。
恐らく、日本中にある潜水協会の中でも「科学」とついた団体はここだけです。安全潜水に向けた知識開発をするだけでなく、研究者の水中調査をサポートする活動も展開しています。
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さらに、より実践(軍隊式?)でダイビングを体系的に理解するために、指導団体GUEのTechnical Divingにも現在挑戦しております。
正直、超ハードです!
が、理論的にダイビングを学び、身体を使って体得していくには良質なトレーニングです。
シリンダーを2本背負ったり、両サイドに抱えるサイドマウント式など、潜り方は様々あります。
私は大深度潜水である水深100mに到達して、生きたシーラカンスとのencounterを生涯の目標に掲げています!
※歴史上、生きたシーラカンスが目撃されたのはアフリカとインドネシアであり、そのたった2回だそうです。
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(水中与圧服)
有人宇宙学をプロダイバーが読むと…
こういった学術的なダイビングに取り組んでいる者として本書を読んでみたところ、
圧力に関わる知識が応用できることに気が付きました。
例えば、ガス分圧
本書のなかで、酸素・窒素・二酸化炭素の分圧を調整した実験の考察があります。
詳細は伏せますが、地上の1気圧(atm)からISSで1気圧〜0.5気圧に減圧する場合、その気圧下で空間を占める各種ガスの分圧も変化します。
ん?
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分圧?と思われた方に向けて、もう少し解説します。
通常、私たちがいる地上には大気がのしかかっており、この大気圧を1気圧(atmosphere)としています。この環境下で私たちが呼吸する空間ガスは、酸素21%と窒素約79%で構成されています。ダイビングではこれを基準とするために総じて空気(AIR)と呼びます。
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この1気圧もガスごとにかかる圧力で構成されており、酸素は0.21、窒素は0.79と表すことができます。足し合わせて1気圧ですよね?このように各種ガスにかかる圧力を分圧と呼び、PressureのPをつけてPO2(酸素分圧)、PN2(窒素分圧)と略して呼んでいます。
ダイビングにおいては、水圧環境を前提に計算して高酸素中毒やナルコーシスを回避するように分圧を調整していますが、水中から宇宙までの圧力差はあくまで一直線上の両極端を成すだけなので、基本的には応用できます。
有人宇宙とダイビング
あまり知られていませんが…
元々ダイビング技術は有人宇宙の歴史と深く絡み合っており、1950年~1960年代まで遡ります。
ちょうど、フランス元海軍であるジャック=イヴ・クストー氏が呼吸器レギュレータを開発した時期です。
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現在では宇宙飛行士が複数名で宇宙へ飛び、EVAミッションでEV1・EV2に分かれていますが、これは水中におけるバディシステムを応用したものです。かの宇宙兄弟で有名になったグリーンカードも、元々は1955年に出来上がったダイビングインストラクター開発コースが発祥で、意図的に水中トラブルを起こして解決できるかテストするための指令でした。
詳しく知りたい方は、私がいま創作している水中での疑似月面プログラム
Space Diving(PADI)
こちらへの挑戦をお待ちしております。
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製作:プロイラストレーター宇宙母ちゃん
このように、ダイビングと有人宇宙技術は古くから互いに影響し合うことで相乗的に発展してきました。私がダイビングインストラクターになったのも、この歴史的背景があり、これからの有人宇宙をダイビングが支える世の中がくると予見したからです。
今ではダイビングと宇宙は全く別物として一般的には扱われていますが、実は古くからの友人です。原点回帰として再びこの2つが強く繋がり、民間レベルで連携し合うような流れを作りたいと考えています。
そんな私だからこそ、この有人宇宙学は非常に興味深く、私の知的好奇心をずっと刺激してくれるものでした。
さいごに
読んでみて、有人宇宙学はもっと色んな分野の専門家を待ち望んでいるように思います。
執筆者たちの言葉からは、「もっともっと研究したい。まだまだ足りないんだ。」という声が聞こえてきます。
有人宇宙学は、地球上に存在するあらゆる学問が合わさって形を成す力の結晶であり、とてつもなくスケールの大きな挑戦です。
だからこそ、この1冊がたくさんの手に渡り、多くの協力者に集まってもらう必要があります。
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いかがでしたか?
プロダイバーが旧友である有人宇宙について触れてみた感想です。
拙い記事でしたが、ここまで読んでいただき有難うございます✨
もし、この記事で誰かに刺激を与えることが出来れば、とても光栄です!
StarDancer💫
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