私が名前を付けて17年と8ヶ月いっしょにいた犬がおととい天国に旅立った。

私は平仮名で名前を付けたつもりだったのに、何故か正式名称はカタカナ+最後にしらぬ間に「ン」までついていた。でも皆好き勝手に呼んでいて、色んなあだ名があった。でも私はいつでも平仮名の名前でよんでいた。笑顔の可愛い犬だった。

うちにきた犬は彼で三匹目で、歴代の犬達はみんな「ち」で始まる名前にしていた。そうすると近所のひとたちがちーちゃんと、代が変わっても呼んでくれたので良かった。

彼はおじいちゃんになってから右腕に悪性腫瘍が出来てしまって、それがどんどん大きくなっていって最後の方は骨がみえてしまっていて、もうどうしようもなくて右腕をはずす手術をした時に不整脈で亡くなってしまった。

私はもう、全然手術が失敗するなんて毛ほども思っていなくて、右腕が無くなった彼をどうやって車椅子に乗せて歩く訓練をさせようかな、とか、病院から戻ってきたら私の部屋でしばらくは一緒に寝ないとだめだな、ベッドは危ないから布団を下ろさないとな、とか、でも夜鳴きをめっちゃするからしばらくは寝れない日が続くだろうな、とかテレワーク中はずっと膝に乗せてないとだめだな、とか、戻ってきた彼とする事ばかり考えていた。

母はかなり危ないと思っていたらしい、言ってくれよそういうのは…でもあの、腐りゆく手を放置することも多分長いことは出来なかったよな…とも思う。

病院に手術にいく日、玄関から出て行く所を見送ろうとしたのに、さっさと父親が彼を抱えて出て行ってしまったけど、まあ帰ってきたら会えるからいいかと追いかけなかったことをいま死ぬほど後悔している。追い掛けたら今生の別れになりそうでいやだったのだ。でも今生の別れになっちゃったけど。

あそこで追いかけてたらなんか変わったのかな、とか、そもそも手術しなかったら今日もギャンギャン鳴く彼にもーって言いながらご飯を上げれたのになーとか思うとつらい。彼はもう目も見えてなくて、耳もかなり遠くて凄くでかい声で鳴くのだ、そうなる前は本当に鳴かない犬だったんだけど。

手術に脳天気に出したことをすごく後悔している。でもあの手をあのままにすることも出来なかったとおもう。

あと手術費用の話とか彼の前でしてたのも相当無神経だったとおもう。お金なんかより全く全然彼の方が大事だったけど、お金が無ければ彼の生活を維持する事が出来なかったのも事実だった。でも何も彼の前ですることなんかなかったよな…、と思う。

母が、片腕が無くなってまで生きててもな~ってなったんじゃないのか、と言い、私も彼は気高い犬だったからそうかもなあと思うけどそうしたのは人為的なことだから、止めることも出来たんだよなあと思う。

そういう事をおもって今度は私がギャンギャン泣いていたら、床からふわ~っと彼の毛が出てきてスマホにくっ付いてきた。

彼は気のいい優しい犬なのでそういう事もあるのかもしれない、とおもった。

私には霊感もなければ危機管理能力もなく空気も読めないので彼の気配もなんも分からないから、賢い彼は毛という物理を使って教えてくれたのだろうか。

なんかもう感情がぐちゃぐちゃになったのでとっさにnoteに登録してこの文章を書き始めた。

実は昨日ゴミ箱覗いて彼の毛の気配がないか探していたのに見つからなかったのだ、これは取っておこう、とか書いてるうちに机に置いた毛が跡形もなくなっていて今ムチャクチャびっくりしている所である。えっまじか、そんなことあるんだね。

外で猫の喧嘩が聞こえて仲裁するために窓をあけたからとんでしまったのかもしれないし、あけた窓から彼が新しい旅路に飛んでいったから毛も消えてしまったのかもしれない。

もう右腕の腫瘍も跡形もなくなり、あの優しい可愛い黒い肉球で夜空を踏んで嬉しそうに駆ける彼を思ったらまたギャンギャン泣けてきた。

彼の旅路が幸せで楽しく温かく美味しく素敵なものであることを祈る。気が向いたらたまにはうちに帰っておいでね。ありがとうね、いってらっしゃい、気をつけて。またきっと会いましょうね。



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