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すったもんだ突発性難聴

日曜の朝、起きてすぐ違和感に気付いた。

耳がヘン。

ザーッと雨が降ったり、すぐに晴れたと思ったら天気雨になったりまた曇ったり晴れたり、目まぐるしい空模様だった。だから、最初は気圧の影響かなと思った。トンネルとか山の上に行った時のように耳が塞がってボワンとした感じがする。
だがすぐにこれは気圧じゃないなと分かった。鼻をつまんで耳から空気を出そうとしても水を飲んでも大きく口を開けてもまったく元に戻らない。戻らないどころか時間の経過とともに違和感はますます大きくなり、キーーーーーーーという耳鳴りまで始まってしまった。

あーこれはマズい。今まで見聞きした話から突発性難聴だろうと自分なりに見立てを立てる。突発性難聴は時間が経てば経つほど治りにくくなるという話も聞きかじったことがあった。日曜に発症というのもまたなんとも間が悪い。月曜朝イチで耳鼻科へ駆け込むようだなこりゃ。

ウン十年以上前、高校生だったころの元カレが突発性難聴で入院した記憶があった。たしか、投薬治療のための入院だと言っていた気がする。えーじゃぁ私も入院かなぁ。参ったなぁ。すぐ入院できるかしらん。
思いがけない長期休暇ビッグチャンス到来の予感にほんのりときめきながら耳鳴りとともに就寝し、起きても全く変わらない違和感にやっぱりとがっかりを抱えながら会社へ午前休をもらいたいとメールしてからそそくさと病院へ向かった。

病院は休日明け&お盆休み前とあって激混みで、予約が無いとかなり待つことになりますけど良いですか、と念押しされての待機となった。これは絶対早くお医者さんに診てもらった方がいいやつだと思っていたので待ち時間の長さは覚悟の上だ。何時間でも待ちますと意気込んでいたものの、実際には1時間ちょっとで呼んでもらえた。

今日はどうしましたか、というお医者さんの問いかけに日曜の朝から高いところ行ったときみたいな耳が塞がった感じがして耳鳴りもあります、と答える。耳鳴りはどんな感じ?と重ねて聞かれてキーンって感じです、と言った。そりゃ変だね、とお医者さんが言ってササっと私の両耳をチェックする。突発性難聴って病気があってね、それだと思うからまずは聞こえの検査しますね、ということで一度診察室を出た。
数十分待って聴力検査室に通される。いつも人間ドックでやるような検査をさらに念入りにした感じで、左右片方ずつ検査した後に片方の耳から騒音が出ている中での聞き取りバージョン、両耳での聞き取りバージョンがあり、15分くらいかかった。
検査結果はすぐに印字されて看護師さんが説明してくれた。やはりおかしくなっている方の耳で、ある高さの音だけ著しく聞こえが悪い結果が出ていた。
お医者さんが他の人の診察を終えて私のところに戻ってきた。検査結果を見て、うん、やっぱり突発性難聴だね。と言った。じゃぁね、ステロイドを処方しますから…また明日か明後日、来られる?と聞かれたので大丈夫ですと答える。じゃぁ水曜日に来て。そう言ってカルテと処方箋を書きながら、お医者さんがえーっと、と言葉を続けた。
心臓病、リウマチ、糖尿、胃潰瘍、、、(ここまでオールクリアだ、と頷きながら聞いている私)あと、緑内障、ない?
あー。最後の最後で引っかかってしまった。あります。緑内障。治療中です。と申告する。
あ、じゃぁダメだ。とお医者さんが言った。眼圧が上がっちゃうんだよステロイドって。
へーそうなんですか。と答えながらどうなっちゃうんだろうと考えていると、じゃぁちょっと掛かり付けの眼科の先生に薬飲んでもいいか聞いてくれる?大丈夫って言われる前提で、一応処方箋は出すから。大丈夫って言われたら飲んで。そんで水曜日来て。ダメって言われたら…うーん、飲まずに水曜日来て。
どっちにしても水曜日なんだな、と思いながらはい、はい、と頷いた。ダメだったらねぇ…うーん…目も耳も悪くなっちゃうもんねぇ…とお医者さんは眼科で許可が下りなかった時のことについてはっきりした方針を言わず、診察は終了となった。確か突発性難聴は原因不明で治りにくい病だったはずだ。ステロイドがダメとなると、たぶん他に打つ手が無いんだろう。
これで終わると思っていたのに急遽眼科へ行く必要が生じてしまった。私が通っている眼科までは今いる耳鼻科から徒歩5分くらい。コロナ禍以降、午前中しか診療していない病院で、診察の受付時間終了まで残り30分を切っていた。急いで行かなくちゃと焦る私だったが、B型肝炎を持っているとステロイドの服用で悪化してしまうことがあるので、と肝炎の検査のために採血までされてしまった。残り25分。

急いでお会計しますからね、と看護師さんも気遣って声を掛けてくれて、会計待ちの間にステロイドの説明を受けた。元気になるお薬なので、夜寝付きにくくなるかもしれませんが、正常な副反応なのであまり気にしなくて大丈夫です。ひどい湿疹がでてしまったとか、そういうことがあったらすぐ電話ください。はい、分かりました、と素直に答える私。残り20分。

やきもきしながら今か今かと会計窓口から名前が呼ばれるのを待ち続け、ようやく声がかかった。残り15分。急いで支払いを済ませ、水曜の受診の予約を終わらせ病院を出た。

…あ゛つ゛ぅ゛い゛。

茹だったような空気の中、焦りながら速足で眼科へと急ぐ。なんの修行だろう。なんとか受付終了10分前に診察券を出して、事情を説明できた。耳鼻科のお医者さんから出された診療情報提供書、と書かれた手紙を窓口に預ける。

眼科も当然、休み明け&お盆前で大変な混雑具合だった。次の診察は2か月くらい先の予定だったのに、飛び込みで来てしまって申し訳なさを感じる。20分くらい待っていると、受付してくれた看護師さんが戻ってきて、先生に聞いて服薬しても大丈夫とのことでしたから、今日は診察はしないで耳鼻科の先生宛に書類だけ書きますのでもう少々お待ちくださいね。混んでいて申し訳ありません、と言われた。薬を飲んでもいいことになって一安心だ。いえいえ、全然大丈夫です、かえってすみませんと答えてまたしばらく待った。

30分くらいで会計窓口に呼ばれた。診察室から先生も出てきてくれて、「飲んでみないと分からないって書いたので、飲んでから一度眼圧測りに来てくれる?」と言われた。…あ、はい、じゃぁ、えーっと、水曜日でもいいですかね…?と聞いたが水曜日はうち休みなのよと言われて撃沈。結局、火曜に眼科、水曜に耳鼻科と通院の予定が二日に跨って決まってしまった。とほほ。

それにしても今の突発性難聴は通院と服薬で治療できるんだな。お医者さんからは入院の『に』の字も出なかった。そりゃそうか。何十年も前の話だもんな。ちょっとだけガッカリしつつ、今度は薬局へと歩く。ここでもさらに30分待ちだった。

一通りミッションがコンプリートしたところで先ほど眼科の先生から受け取った書類が気になった。これって服薬OKって話の書類だよな。ってことは、服薬前に耳鼻科の先生に持って行った方がいいのかな?
心配になったので薬局を出たところで耳鼻科に電話してみた。事情を話すと、飲んで良いって言われたんだったら良いですよ、書類は次回お持ちください、と教えてもらえてようやく落ち着けた。昼ごはんを犠牲にすればなんとか午後からの勤務に間に合う時間だったが、もう無理だわ、と早々に諦めて会社へ診察結果を詳しくメールで送り、一日お休みしてしまうことにした。

昼からすぐに薬を飲み始めた。一回目は特に変化なし。二回目、夕方に飲んだあと少しだけ耳の塞がりが軽くなったような気がした。就寝前に三回目の服薬。胃が荒れるから、ということで夜の服薬には胃薬も処方された。この胃薬がイチゴラムネみたいな風味でなかなか悪くない。
寝られないかも、と聞いて心配していたがあっさり朝まで熟睡した。起きてすぐ、耳の塞がりがほとんど消えていることに気付いた。すごいぞステロイド。耳鳴りははっきり聞こえていたものの、塞がりが無いだけでぜんぜん過ごしやすい。あーよかった、あとは耳鳴りがどのくらい治まってくれるかなと安心半分心配半分で眼科へ立ち寄る。朝イチの早い時間に受付したのですぐに呼ばれて眼圧を測れた。前回の検査よりプラス1数値が高いだけで、急激な変化はなし。こちらもホッとする。目の診察もしてくれて、大丈夫そうだけどまたお盆明けに眼圧を測りに来て、と先生に指示を受けて眼科の診察は終わった。

出社して仕事をこなす。シーンとした仕事部屋の中にいると、やはり耳鳴りが気になった。だけど普通に街中を歩いている時は気にならないくらいのレベルまで小さくなっていた。

明けて水曜日。夜中3時前に目を覚ましてしまい、なかなか寝付けなかった。なるほどこれが副反応と感じたがものすごく早く寝たのでそのせいかもしれない。だけど一日目はなんとも無かったのに二日目に寝付けなさが来るというのが、薬の効果が蓄積されているようでおもしろかった。
耳鳴りは耳を塞いだ状態でしか聞こえなくなっていた。確実に良くなっていると思われる。午前中は在宅で仕事して、午後に耳鼻科を再受診した。
今回は予約していたので呼ばれるのが早かった。まず聴力検査を受ける。看護師さんが検査室に向かう途中で眼科から預かった書類を見ながら、あ、許可出て薬飲めたのね、よし!とガッツポーズが出そうな勢いで言った。その様子でもう大丈夫なんだろうなと予感したが、検査を終えて、前回の検査で著しく悪かった左耳の数値が正常の範囲に戻っていたのを見てあぁ、本当にもう大丈夫なんだとお医者さんの話の前だったが秘かに確信した。
そのまま診察室へ入る。検査結果を見た先生が、うん、戻ったね。はい、これで終わり。とあっさり言った。はい、ありがとうございました。と答える。塞がってる感じはもうない?と聞かれたので、はい、塞がってる感じはもう無くて、耳鳴りは少し残ってますと答えたが、そこはさらっと流された。まぁ塞がってる感じが無くて聞こえていれば医師的にはOKなんだろう。幸い耳鳴りの方も集中しなければ聞こえないほど小さくなっていたので、私も特に気にしないことにした。ステロイドはすぐ止めちゃうと良くないからチョチョっと続けるね、と言われてはい、チョチョっとですねと返した。安堵からのハイテンションだった。
あと4日分のチョチョっとのステロイドを処方され、またお盆明けに来て、と言われておしまい。これを書いている時点で3日分すべてのステロイドを飲み終えた状態だが、耳鳴りももうほとんど聞き取れなくなった。あーよかった。

今回、とにかくすぐ病院にかかったことが間違いなく良い結果に繋がったと思う。みなさんもおかしいなと思ったらすぐ病院へ行きましょう。

twitterの人に「ブログでやれ」って言われないようにアカウント作りました。違うブログで台湾旅行や入院や手術に関してお役立ち情報書いてます。よかったら見てください。 http://www.ribbons-and-laces-and-sweet-pretty-faces.site