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【行政書士FIRST STEP】行政不服審査法の全体像を把握しよう! ②

 皆さま、お疲れ様です。Stand up行政書士事務所の鈴木です。

 前回に引き続き行政不服審査法の全体像を把握するために解説していきます。今回は

 実際に不服申立てを行った場合どうなるのか

 解説していきます。


実際に不服申立てを行ったらどうなるのか

 まずは画像をご覧ください。
 実際に不服申立てを行った際の流れをまとめてみました。

不服申立ての流れ

 重要な点は赤字にしてあります。今回は全体の流れを把握するために、例外事項などはあえて解説していませんのでご了承ください。あくまでも大枠を捉えるために簡単に説明していきます。

③審理員指名→担当者を決める

 審査庁に不服申立てがあった場合、審査庁はその審査庁の中から審理員を指名します。

 簡単に言うと、この不服申立てに対応する担当を決めるわけです。担当が決まりましたら処分庁と申請者に「この人が担当になりました」とお知らせする必要があります。

④弁明書の提出→処分庁の言い分を聞く

 審理員が決まったところで次に行われるのは、状況の確認です。審理員は請求者から「審査して!」という書類(審査請求書)を受け取ったら、直ちに処分庁に書類を送付してお知らせします。

 「この人からこんなこと言われてますけど?」

 と処分庁にお伺いをするというイメージです。

 当然、処分庁にも言い分があります。

 「こういう理由で処分を行ったんで、私は悪くないです!」

 という主張をまとめたのが弁明書です。審理員が処分庁の言い分を聞くということですね。当然、提出された弁明書は関係者に送付されます。

⑤反論書の提出→処分庁の言っていることはおかしいです! と主張する

 提出された弁明書は、請求人にも送付されます。
 これを読んだ請求人にも言い分があるわけです。

 「処分庁の言っていることはおかしいです!」

 この主張=反論をまとめたのが反論書です
 反論書も弁明書と同様に関係者に送付されます。

弁明書と反論書

 行政書士試験では弁明書と反論書の名称がややこしいことから、問題文で双方の性質を入れ替えて正誤を問う問題が頻出します。

 しかし、手続きの全体的な流れを把握しておきさえすれば問題ありません。

 不服申立てがあった→処分庁に事情を聴く→処分庁が弁明する→処分庁の弁明に対し、請求人が反論する

 この流れで行われますので注意して覚えておきましょう。

⑦審理意見書の提出

 処分庁と請求人双方の言い分が出そろったところで、審理員が審理します。

 原則、この審理は集めた書面で行いますが例外もあります(口頭意見陳述)。

 審理が終わったら審理員は、審査庁に報告と「こんな風にしたらどうでしょうか」という内容をまとめた審理意見書と事件記録を提出します。

 審理意見書はあくまでも「意見書」です。

 「双方の言い分を聞きまして、私としてはこんな風に解決したらいいと思うんですけどどうでしょうか」

 という内容なので、審査庁はその意見に従う必要はありません。

⑧行政不服審査会等に諮問する

 審査庁が意見書を受け取り、今回の申立てについてどのような結論を出すのかの方針が決まったところで、次は行政不服審査会等に諮問を行います。

 行政不服審査会とは審査請求の裁決の客観性・公平性を高めるための機関です。

 行政不服審査法が行政庁の問題を行政庁が解決するという性格上、どうしても客観性や公平性に疑問が残ります。

 その疑問を回避するために、審査庁の判断の妥当性をチェックする機関が必要になってくるわけです。

 「うちではこういう判断をしようと思うんですけどもどうですかね?」
 「ええ、問題ないでしょう」

 こうやってチェックされたものが最終的な結果となるわけです。

 なお、行政法総論を勉強していると「諮問」というワードが引っかかると思います。

 「諮問機関」が出した意見は行政機関を拘束しません。従う必要が無いということです。

 しかし「参与機関」の意見については行政機関を拘束し、従う必要がありますので併せて覚えておきましょう。

⑩裁決→不服申立ての結果発表

 行政不服審査会から答申を受けた後、その不服申立ての結果を請求者にお知らせします。これを裁決と言います。要は結果発表ですね。

 この裁決は基本的に以下の3種類です。

・認容→請求者さんの言っていることが正しい! ごめんなさい!

・棄却→処分庁さんの言っていることが正しい! 従いなさい!

・却下→請求者さん、あなたそんなこと言う資格無いですよ?

 イメージとして、認容の場合は請求者の勝利です。処分の全部または一部を取り消したり変更したりという結果になります。

 棄却と却下は処分庁の勝利というイメージです。
 なぜこの2つが分けられているのかといいますと

 棄却の場合は、審査庁がちゃんと審理を行い検討した結果、
 「処分庁さんの方が言っていること正しいよね」
 という判断を下したことを指します。ちゃんと検討した上での処分庁の勝利、それが棄却です

 一方で却下のイメージは門前払いです。

 前回「不服申立適格」のお話をしました。
 関係のない人や、処分から随分と時間が経った人が不服申立てをしても、「あんたにその資格は無いよ」と言われてしまうアレです。

 却下の意味は、審査庁が審理をするまでもなく、「あなたは資格が無いのでダメです」と言われている状態を指します。

 特に試験では棄却と却下の違いについて詳しく聞いてくる場合が多いので、今のうちにイメージを固めておきましょう。

事情裁決→言いたいことは分かるけど、みんなのために我慢してくれ!

 行政の運営は時として、

 「本当はこの処分は違法(または不当)なんだけどもみんなのためにこのままで行かせてくれ!」

 という事態が起こります。

 例えば

 周辺住民の利便性のために大きな道路を作りたい、だけどあなたが持っている土地と建物が邪魔で作れない。だからその土地と建物を譲ってくれないか!

 なんてことがあった場合、あなたはその土地を譲りたくなくて不服申し立てをします。審理の結果、それはあまりにも不当だということにはなりましたが、周辺住民の利便性を考えると土地と建物を譲った方がいいように思えます。

 そこで登場するのが事情裁決です。

 事情裁決はその行政が行った処分を違法(または不当)とした上で、請求を棄却することができるのです。

 もちろんその際には行政庁が行った処分が違法(または不当)であったことを審査庁は宣言しなければなりません。

 こちらが間違っていました! と認めた上で相手に泣いてもらう、そういった制度です。

 この概念は行政事件訴訟法でも「事情判決」と言葉を変えて出てきますので要注意です。

次回予告

 次回は行政不服審査法で頻出の「執行停止」について解説していきます。
 次回もお楽しみに!


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