hidekのエンジニアと長話 第7-4回【全文書き起こし】~ゲスト:Supership exCTO 山崎大輔氏~
stand.fmで配信中の「hidekのエンジニアと長話」7人目のゲストは、Supership exCTOの山崎大輔さんです。
「hidekのエンジニアと長話」は、メルペイVPoEのhidek(木村秀夫)さんをメインパーソナリティにお招きし、ゲストエンジニアとともに作っていくスペシャルトーク番組です。
第7-4回の今回は、Supership exCTOの山崎大輔さんをお招きして、SaaSサービスやノーコード、エンジニアの今後のキャリアなどについて語りました。
※本記事は、2021年7月2日にstand.fmで配信を開始した番組を書き起こしたものです。
ゲスト
山崎大輔(@yamaz)氏
Supership exCTO
メインパーソナリティ
hidek(木村秀夫)氏 @hidek
株式会社メルペイ VPoE(Vice President of Engineering)
パーソナリティアシスタント
gami(池上)氏 @jumpei_ikegami
株式会社プレイド エンジニア
SaaSサービスとノーコードツール
hidekさん(以下、敬称略):とはいえあれですよね、買ってもらえるプロダクトを探し当てる嗅覚というか、その辺は結構難しいかな、と思ってるんで。最近気になっているサービスというか、そういう嗅覚で、最近気になっているものってあります?
山崎さん(以下、敬称略):それですよね。最近、SaaSサービスですよね。ノーコードツールというか。SaaSサービスとノーコードツールですかね。
hidek:うん。
山崎:まず、絶対に、エンジニアが起用するんだったら、SaaSサービスがいいと思います。
hidek:なるほど。
山崎:で、それはなぜかと言うと、「自分のエンジニアリング能力を1人月で売る」っていう話だと、自分が働かなくなったら給料もらえなくなるわけじゃないですか?
hidek:はい。
山崎:で、SaaSサービスって、プレイドさんもそうだと思うんですけど、積み上げモデルなんで、頑張れば頑張るほど未来の収益が、働かなくても稼げるようになるわけですよ。
hidek:うん。
山崎:例えば、SaaSサービスというとSpotifyとか、いわゆるサブスクですよね。月々課金をやって、ずーっとユーザーを溜めてやるようなモデルなんですけど。ああいうのって、BtoBでもBtoCでもなんでもいいんですけど、ああいうモデルに絶対しなきゃいけなくて。で、そうすると、エンジニアが頑張ってシステムを作り続けたやつが積み上がって、未来の収益にどんどんつながっていくわけじゃないですか?
hidek:うんうん。
山崎:これがSIerさんとかで、1人月を超頑張って2人月で売って「2倍儲かった」みたいな話にしなきゃいけないんですけど、たかだか2倍じゃないですか?
hidek:はい。
山崎:だけど、SaaSサービスって複利で効いてくるので、1回2倍足したらさらに2倍、みたいになっていくじゃないですか?
hidek:はい。
山崎:だから、そんな感じになっていくので、絶対SaaSサービスがいいですね、と。
hidek:うんうん。SaaSサービスもいろいろな領域があるじゃないですか? それこそ、さっきおっしゃった、BtoC、BtoBもあるし、もう少しブレイクダウンすると、さっきのSpotifyみたいな音楽ストリーミングサービスだったりとか、いわゆるエンターテインメントですよね、の領域だったりとか。なんか、「こういう領域に注目してる」とかってあります?
山崎:で、僕が注目しているのはノーコードで。
hidek:うんうん。
山崎:ノーコードは、やっぱりすごくよくて。最近、ノーコードってあるじゃないですか。コード書かなくても、プログラミングで。ちょっとエンジニアとかだと、「ノーコードとか、やってもやれる範囲が決まってるから、やっぱり手で書くのがいい」って話になるんですけど。ノーコードツールも、SaaSサービスでやる限りは、最初はおもちゃみたいなシステムかもしれないんですけど、どんどん積み上がっていって、最終的にはすごいツールになるわけですよ。で、例えばなんですけど、BigQueryって、ぶっちゃけノーコードツールなわけですよ。
hidek:まあ、そうですね。はい。
山崎:SQLを書けば、もう無敵のクエリが……。無敵のノーコードツールですよ、あれは。
hidek:はい。
山崎:だから、ああいう感じで、ああいうのを作れば、やっぱり儲かりますよね。
hidek:うん。なんか最近、さっきのタクシー広告じゃないですけど、乗ってると、本当に猫も杓子もノーコード。ちょっと前だとRPA? みたいなところが、タクシーに乗ってても流れてくる中で、結構、エンジニアの働く場所っていうのも、「あれ、今後変わっていくのかなぁ」みたいなところ。よく「AIが流行っていくとエンジニアいらねぇ」みたいな話があって。
山崎:あー。
エンジニアが今後キャリアを賭けるべき領域
hidek:モデルを作るエンジニアは必要だけど、どんどんそういうところがなくなっていく、みたいな。自動コード生成のところのAIみたいなのが生まれてくるんじゃないか、とか。結構、そういう話があったりするんですけど。エンジニアが今後キャリアをベットしていくときに、どういう領域にベットしていけばいいんですかね?
山崎:ここ10年くらいで言うと、SaaSサービスを上手に使うようなエンジニアは結構重宝されるだろうな、っていうのはありますね。ただ、僕とかhidekとかそうだと思うんですけど、仕組みがわかってないとそれにベットできないじゃないですか?
hidek:うんうん。たしかに。
山崎:怖くて使えないじゃないですか。だから、メルカリみたいにめっちゃマッシブなアクセスがあるところだと、例えば、SaaSサービスとかも安心して使えないじゃないですか? そこに二極化が起きると思ってるんですよ。ただ、大抵の世の中のニーズの8割くらいはノーコードツールでいけるじゃないですか?
hidek:まあ、そうですね。
山崎:たぶんね。で、それをなめてると彼らも10年とか経つとめっちゃ進化するので、単純にはね。
hidek:はい。
山崎:手で書くよりも勝つと思うんですよ、単純には。
hidek:はい。
山崎:で、ただ、そのときにはレベルが上がってて、手で書くには、もっとコアな部分を書かなきゃいけない、みたいな話になっちゃうと思うんですけど。そういう点で言うと、エンジニアは何を自分のレバレッジとして、自分のコアとして、「何で戦うか」みたいになると思うんですよ。で、例えばなんですけど、もはやアセンブラでコードを書くことはしないじゃないですか?
hidek:まあ、そうですね。
山崎:手で。
hidek:はい。
山崎:で、当然ですけどコンパイラにそれは任せる、と。
hidek:はい。
山崎:で、ノーコードツールって、たぶんね、現代で言うところのコンパイラに近い感じの立ち位置のはずなんですよ。普通にね。
hidek:うん。
山崎:だから、ノーコードツールが、まだおもちゃだと思いますよ、メルカリとかプレイドのエンジニアからすると。ただ、なめちゃダメだとは思います。
hidek:うんうん。さっき「SaaSを使えるエンジニア」って話があったと思うんですけど、僕、つい最近まで、あまり興味がなかったっていうのもあるんですけど、知らなかったんですけど、Salesforceってあるじゃないですか?
山崎:はいはい。
hidek:で、Salesforceって、僕、知らなかったんですけど、Salesforceをカスタマイズするために「Salesforceエンジニア」っていう募集要項があるんですよ。
山崎:ありますあります。
hidek:Salesforceすごいな、って思うのが、もしくは偉いな、って思うのが、エンジニアに対してエコシステムというかそういう場を提供している。
山崎:うーん、そうですね。
hidek:働く場所、仕事を作ってる、っていうのは、それはそれですごいな、と思ってて。ノーコードも、一定は部品化していくんでしょうけど、「かゆいとこに手を届けよう」とか、もしくは、すごくニッチな業界のとあるコンポーネントを作ろうと思ったら、そこはやっぱりカスタマイズが必要で。
山崎:あー、そうですそうです。
hidek:そういうところはひとつ、新しいエンジニアのキャリアとしてあるのかなー、とか思うんですけどね。
山崎:あのねー、おっしゃるとおりなんですよ。で、まず、SalesforceとShopifyなんですけど、Google Chromeのエクステンションが集まってるところなんて言うんでしたっけ?
hidek:なんでしたっけ? Webストアじゃなくて……。
山崎:GoogleのChromeのエクステンションのApp Storeみたいなのあるじゃないですか?
hidek:はい。
山崎:で、SalesforceとShopifyってECサイトのサイトって、それのエクステンションのマーケットプレイスみたいなのがもうできてて、それだけでお金が儲かるような体制になってるんですよ、もはや。
hidek:うん。
山崎:それで、ちょっと間違いかもしれないですけど、チームスピリットっていう会社があって、それはSalesforceをカスタマイズして勤怠管理だったかな? それだけで上場した会社があるんですよ。
hidek:はいはい。
山崎:だから、それくらいのパワーを持ってて、実は。
hidek:そうですよね。
山崎:で、結構、皆さん、「いやいや、APIとか叩くとかダサくね?」みたいなこと言う人もいるんですけど、全然そうじゃなくて、そこの先で投資されているお金とか超すご過ぎて、シュッとやる能力が高いんですよ、APIの先でやっている。だから、それを無視して手でなんでも書く、っていうのは、絶対負けますね。
hidek:まあ、そうなんですよね。あとは、その人の趣味嗜好、って言ったらあれですけど、どういうところで、レイヤーで働きたいかだとか。
山崎:そうですそうです。
hidek:あるんですけど、レイヤーがどんどん上がってきてるな、っていうイメージはあって。それこそインフラのところで言うと、やっぱりオンプレ使っているよりは、クラウドのマネージドサービス使って。で、あまり自分たちでスケールアウトする仕組みを作る、っていうこともないでしょうし。
山崎:うん。
hidek:僕らのころって、そこをすごく頑張ったじゃないですか?(笑)
山崎:そう。
hidek:でも、今ってクラウドがあって、そこの仕組みは考えなくてもいいし。で、逆にそこの上のレイヤーで働く。で、たぶんそこもどんどん変わっていくし、上がっていくし。それが、結構、ノーコードって出てくると、もうひとつ上の「エンジニアマーケット」みたいなものができてくるんじゃないか。まあ、言うたらApp Storeとかもそうじゃないですか?
ノーコードではなくレスコード
山崎:そうですそうです。おっしゃるとおり。だからね、ノーコードっていう言い方になると、エンジニアの琴線に触れて炎上みたいになっちゃうんですけど、「レスコード」なんですよね。
hidek:まあ、そうなんですよ。そういうものをうまくつなぎ合わせるためには、ある程度、仕組みがわかっていないと、たぶんそこは使えないし。
山崎:そうそう。
hidek:良し悪しの判断も必要ですし。本当にユーザーに対するバリューを提供することだけに集中できる、っていう利点もあるわけで。
山崎:そうそう。おっしゃるとおり。で、みんな、これ、隠してると思うんですけど、超うまくやっているSaaS……、メルカリとかも絶対そうだと思うんですけど、実は彼らも内部的にはSDK持ってて、ノーコードみたいな感じ、レスコードみたいな感じになっているはずなんですよ。それを隠して、「ノーコード、ムカつく!」みたいなことを言ってて、「お前らもそうだろ!」みたいにマジ思うんですよね。
hidek:言うたら、OS使って、ミドルウェア使って、ライブラリ使ってやってるわけですからね(笑)。
山崎:そうそう。本当は、Supershipもそうなんですけど、結局、広告システムを作るときに、システムを作ろうと思ったときに、いちいち生のコードとか書いてたらやってられないわけですよ。検証とかも必要だし。コアになるSDKのための「API群」みたいなのを上手に整備してあげて、それを叩くだけにしてあげて、で、それをミスったらそれに対するコードをひたすら積み上げていく、っていう風な感じになっているはずで、本当は。Googleとかもやっぱりそうらしいんですけど。
hidek:はい。
山崎:メルカリとかも絶対そうなはずで。それをみんな隠してるんですよね。
hidek:(笑)。あ、でも、僕らはOSSとして出したりだとか。僕らはマネージドを使いますかね、最近だと。
山崎:うんうん。
hidek:なので、その辺は長引くかなー、という気はしますよね。
山崎:だから、そうなっているはずなのに。結局のところ……、これ、なかなか難しい問題なんですけど、ぶっちゃけそこまで高めると、内部のエンジニアって「SDKを叩いてうまいことやるエンジニア」みたいな感じになっちゃうじゃないですか?
hidek:はい。
山崎:だから、そう.
hidek:(笑)。「ノーコード」っていう見せ方がね、どうしても、非エンジニアの人で「コード書かなくていいよ」みたいに言ってる……。
山崎:あー、それな。でも、メルカリとかメルペイとかも、プロデューサーとかに渡してるでしょ、そういうシステム。
hidek:まあ……。
山崎:プチレスコード的なの渡してるでしょ?
hidek:ありますよね、そういうのは(笑)。
山崎:めっちゃ苦笑いしてますけど。
hidek:いや、苦笑いではないですよ(笑)。
山崎:(笑)。
hidek:あのー、あると思います。あとはエンジニアのキャリアの方向性としては、そういう新しいエコシステムの上で働く、っていう、そこでバリューを出す、っていうのものあるし。
山崎:そうですよね。
hidek:そこはね、逆に「作っていく」っていうチャンスでもあると思うので。
山崎:そうですね。だから、あんまり否定する話じゃないんですよね。「より高次のレベルの高いシステムを少ない労力で作る」っていう話なので。
hidek:はい。
山崎:本来、そうでなきゃおかしいはずなんですよね。
hidek:はい。だから、そう。「SaaSでノーコード」っていう文脈でいっても、たぶんレイヤーが上がれば上がるほど、特化していかなきゃダメだと思うんですよ。あまりにも汎用性が高いものってたぶん使い物にならない。
山崎:そうですね。「なんでもできまーす」みたいな。
hidek:そうなんですよ。「なんでもできます」って「なんにもできない」って話なので。だから、そうすると、そういうドメインを切って、ノーコードSaaSを作っていく、っていうエンジニアとしてのビジネスチャンスでもあると思うので、僕は結構、この流れはウェルカムなんですよね。
山崎:そうですよね。
エンジニアの起業は海の向こうの話ではない
hidek:はい。ありがとうございます。そろそろ時間も……。
gamiさん(以下、敬称略):そうですね。
hidek:どうでしょう、録れ高的には(笑)。
gami:完璧だと思います。
hidek:お、よかった。
gami:うしろちょっと長いくらいで、盛り上がった感じが(笑)。
hidek:ありがとうございます。
山崎:すみません、なんか。
hidek:やっぱ、新しい起業家の……、新しいのか昔懐かしなのかちょっとわかんないですけど、最近とはね、またちょっと違った起業家マインドみたいなのを聞けたからめちゃくちゃ面白かった。
gami:そうですね。あと、結構「広告業界ヤバい」みたいな話とか「ノーコードけしからん」みたいな、表面的なムードがあると思うんですけど、そういうのに対して、「本質的にはこういう流れがあって、それをポジティブに捉えるとこうで」みたいな話が出たのはすごく聞いている人も気づきがあった気がしますね。
hidek:幅広い話をお聞かせいただいて、本当に楽しかったです。
gami:ありがとうございます。
hidek:冒頭の魔界村はなんだったんだろう(笑)。
gami:(笑)。
山崎:魔界村大事だから。『帰ってきた 魔界村』、『帰ってきた 魔界村』。大事なことなんで2回言いました。
gami:(笑)。魔界村の話から想像できないところまで最後来ましたね。ありがとうございます。ぜひ、聞いている方のフィードバックというか、どういう感想があったかも聞きたいな、と思いますので、ぜひ、お聞きの方、コメント機能やTwitterハッシュタグ、#hidekのエンジニアと長話、までフィードバックいただければありがたいなと思います。
hidek:お待ちしてまーす。
gami:お待ちしてまーす。じゃあ、そんな感じですかね。話し足りないこと、大丈夫ですか?
山崎:1個だけいいですか、あと1個。
gami:どうぞどうぞ。
山崎:「エンジニアの方が起業する」って話になったときに、それはVCからお金入れてって話って、結構、「海の向こうの話」って思う人、結構いらっしゃるんですけど。
gami:うん。
山崎:結構、それの体現している人って増えてきてるんですよ。「ちゃんとVCからお金入れる必要は必ずしもない」って話はしましたけど、VCからお金を入れるっていうのは、相変わらず有効な手段であるんですよ。で、最近、「海の向こうの話」って思わなくて、それは自分でもできるって話は、本当に、エンジニアだったらマジ狙ってほしいと思うんですよね。
gami:うん。
山崎:尾藤さんとかもそうなんですけど、彼は起業した感じではないんですけど、それの近くにいて、「どうすれば起業できるか」ってよく見てるエンジニアとか増えてるんですよ。だから、本当にリスナーの方にとっては、起業というのは「海のものとも山のものともわからない、海の向こうの話だ」みたいなのがあるかもしれないんですけど、「いや、実は、それっていうのは自分でもできる」っていうのはちょっと知ってほしいかな、っていうのはちょっと思いました。
gami:うんうん。
hidek:そうですよね。だいぶ我々の時代から比べると、そういうチャンスとか機会とか、「ハードルが下がってる」っていう言い方はあれなんですけど。
山崎:やりやすくはなりましたよね。
hidek:そうですよね。はい。なので、本当、エンジニア「だからこそ」起業してほしい、っていうのはあるかもしれないですね。
山崎:本当に、やりやすいんで。
hidek:はい。ありがとうございます。
gami:ありがとうございます。そうしたら、今日はこんなところにしたいと思います。今日のゲストは山崎大輔さんでした。ありがとうございました!
山崎:どうも、ありがとうございました! 楽しかったです!
hidek:ありがとうございました!
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