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M&A今昔あれこれ

※当記事は2021.7.1にメルマガ配信されたものです。

① M&Aの手続きあれこれ

現在では広く「事業譲渡」と呼ばれていますが、2006年の会社法改正前は「営業譲渡」と言うのが一般的でした。

手続きも異なっており、営業譲渡で事後設立に該当する場合は、株主総会の特別決議と検査役の調査も必要でした。

会社法の改正により検査役の調査は不要となりましたので、経験された方は少なくなってきているかもしれませんが、私は検査役の選任を裁判所に申請したことがあります。コストがかかりすぎるというのが不要となった理由のようですが、あまり期間を置かずに譲渡を完了させたい中で時間がかかるというのも理由の一つであったと思います。

事後設立は変態現物出資とも呼ばれますが、もう少し良い呼び方はなかったものかと思います。 

なお、事業譲渡で商号を引き継ぐ場合に債務を引き継がない旨の免責登記をすることも可能です。いくつかのケースでこの免責登記をしたことがあります。商号を引き継ぐ場合には検討された方が良いでしょう。

②公正取引委員会

公正取引委員会に行かれたことはありますか?

私は何度も相談と届出に行きました。公正取引委員会は、独占禁止法に基づき自由経済社会における市場の競争秩序を守るために企業結合についても規制しています。以前は役員兼任についても届出が必要でしたが、今は廃止されています。

グループ国内売上高が200億円を超える企業がM&Aを検討する場合には公正取引委員会への事前届出が必要となる場合があります。届出が必要な場合には、原則受理から30日間は企業結合出来ませんので注意が必要です。

公正取引委員会と聞くと厳格で怖いようなイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
事前相談に伺うと丁寧で親切に教えてもらえます。

③仲介業者にまつわるトラブル

6月28日付け日本経済新聞朝刊に「中小M&A仲介にルール 登録制や自主規制、悪質業者を排除」という記事が掲載されていました。中小企業のM&Aにおいて悪質な仲介業者によるトラブルも目立つので、中小企業庁が近く登録制を導入するほか、自主規制団体の発足も目指すといった内容でした。

記事の中には、仲介の場合の利益相反の問題や不動産業のように公的資格が必要ない点が指摘されていました。
中小企業庁の検討会とりまとめ資料によると2021年度中に事業承継引継ぎ補助金において支援機関の登録制度を創設することや自主規制団体を設立することが記載されていますが、問題解決にはまだ時間がかかりそうです。

記事には悪質な仲介業者と書かれていましたが、知識と経験が不足していたのでしょう。セルサイドのオーナーの気持ちに寄り添うことができる経験豊かな専門家をどうやって選任するかが重要です。但し、寄り添うだけでは駄目で、適切なアドバイスが出来なければクロージングは出来ません。

お知り合いにM&Aや事業承継で悩まれている方がいらっしゃれば是非弊社をご紹介ください。適切にアドバイスさせていただきます。

後記
身近な相続のお話を少し。
テレビドラマなどで資産家がなくなり、遺言書が見つかってその場で開封して読み上げるシーンがありますが、あれは間違いで、自筆遺言書であれば未開封のまま家庭裁判所に検認の申立をしなければなりません。
申立には遺言者本人の戸籍謄本のほか、相続人全員の戸籍謄本等も必要となります。

私の両親は既に亡くなっており、家庭裁判所に遺言書の検認の申立をし、立会もしました(父親は公正証書遺言でしたので検認は必要ありませんでした)。

生前には両親の成年後見人にもなりましたので、その話はいずれまた機会がありましたらお伝えしたいと思いますが、身近な親でも預金通帳や保険証書等の有価証券は見せてもらったことはありませんでした。

親御さんがある程度の年齢になられたら、お元気なうちに一度家族揃って確認しておくことをお薦めします。