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顧問税理士が知っておくべきM&Aの会計・税務~(その2)M&Aにより経営者が受け取る金額とは?

顧問先の経営者から、「先生、うちの会社を売ったらどのくらい入ってきますか?」と質問されたら、どのように答えるべきでしょうか?
M&Aによる事業承継を検討するに際して、従業員の雇用や取引先との関係の継続も気になるポイントですが、経営者の引退後の生活を考えるとM&Aによってどのくらいの手残りがあるかも重要な判断材料と言え、いつこのような質問を受けるかわからないので、予め回答の準備をしておくのが良いでしょう。

株式譲渡を前提にした場合、株式の売却額が経営者の手取額と思ってしまうかもしれませんが、仲介会社への手数料や税金もかかってくるため、この点も考慮した上で経営者が希望した手取額になるかが重要となってきます。

特に、仲介会社を利用してM&Aを行う場合、彼らに支払う手数料が思ったより多額になることがあるため、仲介会社を利用するかどうかも顧問税理士として経営者と一緒に考えていく必要があります。

仲介会社は成功報酬制の料金体系を採用しているのが通常で、時価総資産額や取引金額にある一定の料率をかけて報酬が算定されますが、仲介会社によって料金体系は異なるため、仲介会社選定の際は手数料の算定方法がポイントとなってきます。

ここで留意していただきたいのは、時価総資産を基準に報酬を計算する会社の方が、取引金額をベースにする会社より仲介手数料が高くなる点です。
例えば、同じ料率5%であったとしても、時価総資産が5億、負債が4億のケースでは、時価総資産を基準にすると手数料は5億×5%=2,500万円となるのに対し、取引金額を基準にすると純資産額で取引した場合、(5億-4億)×5%=500万円となります。

手数料が高い仲介会社の利用が良くないと言うわけではありません。仲介会社に高い手数料を払ったとしても、高い価格で会社を買ってくれる会社を見つけてくれれば、経営者にとってはプラスになるので、売却金額と手数料のバランスが重要となってきます。

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①取引価額:事業承継により買手から受取る金額
➁役員退職金:M&A実行時に役員を退任して受取る退職金
③仲介会社等への手数料:仲介会社や専門家を利用した場合に支払う手数料
④税金:株式売却益、配当、役員退職金に課せられる各種税金