書類送検は警察が事務処理が終わりましたよという意味でしかない
また医療に対する不信感を増すことになる誤解を生む報道があった。
気管切開を拒否され・・患者の人工呼吸器を2分間止めた医師を書類送検「治療の必要性わからせた」 読売新聞オンライン2023/9/5
読売新聞は以前から医療に対して否定的、正確には無駄にあおる記事が多いものの、この記事は特にひどい。
状況が全く理解できずに聞いた話を適当につなげたのか、わかっているけれど悪意を込めてわざと多くの人が誤解するように記事を書いているかのどちらかである。
ニュースで放送されていた、インタビューで患者本人が、「口から入れた人工呼吸器をのどを切開して通す方法に変更することを提案された。拒否すると1回止めてみましょうか、どんだけ苦しいか(わかると言われた)。私は「止めてみい」と言ったんです」というような話をしていた。画面には「切かい必要? とめてみろ」などと書いてあるメモが表示された。
一方 医師もインタビューで「喉を切開して人工呼吸器を使うことを説得した。患者は「自分の呼吸でいける。なんで気管切開しないとダメなんだ」と拒否し、呼吸器のサポートがあるからいけてるだけだと繰り返し言ったが「大丈夫だから とめてみろ」というのでやった」というような話をしていた。
両者の話を総合すると、医師が口からの人工呼吸器を喉からの人工呼吸器に変更しようとしたら、患者は人工呼吸なしで大丈夫と主張し続けるので、無理だということを分かってもらうために2分間止めてみたらかなり苦しかった、という状況である。
人工呼吸器の管理をしたことがないので可能なのか分からないものの、2分止めるのはちょっと長すぎで1分程度にしてあげたほうが良かったのではとは思うものの、医師は悪くないと思う。
それを、「気管切開を拒否され・・患者の人工呼吸器を2分間止めた医師を書類送検「治療の必要性わからせた」」というタイトルにする読売新聞の報道の仕方はあまりにもひどい。
これでは気管切開を拒否したから一方的に止めて苦しませて、「わかったかこのやろう!」と医師がしたような印象を与えてしまう。
さらに警察は被害届が出されたら、訴えの事実がないと判断した時以外は原則的に検察に書類を提出(書類送検)する必要があり、書類送検=悪いことをした ではなく、書類送検=警察が被害届を処理しましたよ という意味だけである。
ちなみに私も患者から警察に刑事告発されたことがあり、当然の手続きとして書類送検されたことがある。
そのときも今回と同様「警察は起訴を求める「厳重処分」ではなく、起訴・不起訴の判断を検察にゆだねる「相当処分」の意見」で書類送検されており、上の情報だけであれば不起訴で終わると思われる。
ということでタイトル通り、書類送検は警察が事務処理が終わりましたよという意味でしかない ということを再度強調しておきたい。
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