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心療内科を受診した人の多くはすぐ治療を中断する

現在 普段働いている精神科病院以外で、心療内科として週1回半日外来を担当している。

以下の記事でも書いたように、心療内科を標榜しているメンタルクリニックの医師のほぼ100%が心療内科専門医ではない。

精神科はちょっとかかりづらいから心療内科にしよう! と診察を受けた医師のほとんどは精神科医である。

とはいえ、手術ができなくなった外科医、儲かるかもと思って変わってきた内科医であるよりかは良いかもしれない。


患者は意外と治療を継続しない

心療内科は新患を予約制にしていることが多く、困ったときに見てくれる病院を見つけるのがなかなか難しいことが良くある。

以下の記事で、精神科や心療内科はなかなか受診できない方が良いと書いたことがあるが、困っているのにどうしてすぐ見てくれないのかと不満に思う人は多いかもしれない。

自分が「病気」だと感じ治療を希望するようになって、1ヶ月ほど受診を待ち、その間に自分なりの工夫をいろいろとしてみて、それでも改善しないときに初めて治療を開始するのが良い。

精神科や心療内科は新患を予約制にする理由

もう一つの理由は、受診した人は意外とすぐに治療を自己中断してしまうからである。

自分のデータを紹介する。

対象:
令和3年1月1日~令和4年12月31日の2年間の間に治療を希望し新患として受診した83人。

結果:
治療不要 10人(12%)、治療開始 73人(88%)
令和5年12月31日現在 治療継続中 29人(40%)、終了44人(60%)

治療終了となった44人の内訳:
死亡1人(身体疾患による病死)、改善し終了17人(39%)、自己判断で中断15人(34%)、転居などによる転院11人(25%)

自己判断で中断した人15人:
平均通院期間 3.2±4.1か月
受診回数3回以下 10人

あらかじめ断っておくと、このデータは私の治療技術の低さからきている可能性は否定できない。

「普通」の心療内科、精神科医のデータと思ってみてもらえれば幸いである。

治療を開始しても、34%は自己判断で中断してしまい、そのうちの多くは数回の受診で治療をやめてしまう。

忙しい外来の中30分ほど時間をかけて診察し治療を開始しても、20%(治療開始した73人中15人)は数回受診しただけで勝手に治療を中断してしまう。

この事実を前にすると、数か月待ってでも受診をしたいと思う人だけ診察するほうが、治療を受ける人・医師や病院の両者にとってもメリットが大きいと感じる。

意外と治療不要の人が多い

受診した人の内12%は治療不要である。

この場合の治療不要は、こちらが一方的に「治療しても仕方ないよ」と伝えたのではなく、今の状態を評価し、ストレス要因と解決方法などを相談し、病院で治療を受けるほうが良いか、治療受けることによる金銭的・時間的ロスは大きくないかなどを本人と相談したうえで、治療をしないという結論に達した人である。

もちろん、病院で治療しなくてもよい という結論に達したことが治療的であるという見方もできはする。

重要なので繰返すが、「困ったら何でも気軽に相談してください」と心療内科・精神科はいうべきでないし、気軽に相談するべきではない。

(多くの人は)薬物治療より休養、周りの人の支援、軽い運動、気分転換などの方が治療効果が高い。自分が「病気」だと感じ治療を希望するようになって、1ヶ月ほど受診を待ち、その間に自分なりの工夫をいろいろとしてみて、それでも改善しないときに初めて治療を開始するのが良い。

精神科や心療内科は新患を予約制にする理由

どうしてもすぐに診察が必要な人は精神科病院を受診すべき

一部の人はすぐに診察と治療を受ける必要がある。

その人たちはクリニックではなく精神科病院を受診するべきである。

外来治療で可能なのか、入院治療が望ましいのかを判断し治療開始することが必要である。

心療内科のほうが受診しやすいと思うかもしれないが、心療内科の医師も精神科病院の医師もどちらも精神科の医師である。

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