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多剤併用・大量投与を改善するときの医師の不安

多剤併用・大量投与の改善について考える時にいつも思い出す人がいる。

統合失調症の中年男性。

長期間入院し大量の抗精神病薬を服用していた。

ハロペリドール50mg、リスペリドン12mg 他、CP換算値は4000mgを超えていた。

いつもカーテンを閉めてベット脇に座って一日を過ごし、他人と交流はなく、話しかけても「別に・・」と答えるのみでほとんど動きのない人であった。

非常にゆっくりと時間をかけて減薬した。

減薬したといっても、CP換算値は4000→3000mg程度で、まだまだ多剤併用・大量投与の状態であった。

ある日、他の部屋の他患を殴り殺してしまった。

私から見ても、他の職員から見ても、普段と全く変わりがなかった。

本人は淡々と「あいつが悪口を言っていた」と繰返すのみであった。

もちろん減薬をしなくても、一連の事件は起きたのかもしれない。

しかし「もし減量しなければ・・・」と考えてしまう。

多剤併用・大量投与の改善を目指したときに、多かれ少なかれ似たような経験を精神科医はしている。

多剤併用・大量投与をなかなか改善できない、改善することに躊躇する精神科医の気持ちを分かって欲しいとまでは言わないものの、ほんのわずかでもいいので知って欲しい。

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