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生活歴を聞く意味

精神科では家族構成、学歴、職歴、結婚歴などの生活歴を詳しく聞く。

兄弟は何人ですか? 何番目ですか? 
出身はどちらですか?
高校はどこですか?
高校を卒業した後はどうしましたか?
仕事には着きましたか? どこですか? 何年働きました?
結婚はしていますか? 子供はいますか? 
今は誰と一緒に住んでいますか?

など、初診時には予診を取る人(多くの場合はPSW(ソーシャルワーカー)あるいは看護師)が時間をかけて聞いていく。

「失礼だ!」と不機嫌になる人もいる。

何のためにこれらの情報を聞くのか?

診断のため聞く

精神科の診断は、その瞬間の状態から診断する横断的な見方と、これまでの経過から診断する縦断的な見方、両方から判断していく。

例えば現在うつ状態になっている人のとき。
これまでの生活が非常に順調で出世などの一般的には良いとみなされる変化を機になっているならうつ病を疑う。
これまでの生活が事業を始めるなど精力的に活躍している時期と、何となく目立たなくなっている時期がある人なら双極性障害を疑う。
これまでの生活が学生の時よりうまくいかないことが多く、仕事は長続きしない人なら、知的障害や発達障害などを疑う。

うつ状態=うつ病ではなく、DSM5などの診断基準を表面的にうのみにして判断していけない。

その人の人生を知る

風邪などの短期間の付き合いの患者であれば、生活歴は必要がない。

しかし精神科の治療は始まると、通常数年、時には数十年の付き合いになる。

そうなると病気のその人だけではなく、どんな人生を歩んできた人なのか を知っておきたくなる。

それにより症状を抑えることだけを目標にするのではなく、症状とうまく付き合いながら、どのような人生を送ることを援助したらいいかということが見えてくる。

もちろんこれは、今のところ精神科の治療は完全とはいいがたい状況のためであり、今後 この治療方法さえすればほとんどの人は良くなる、という状況になればほとんどいらなくなる作業かもしれない。

回復のための糸口になる

一緒に住んでいる人や家族のことを聞くことで、その人を支えてくれる人、逆に不安定にさせてしまう人が見えてくる。

回復のためにどんな環境調整をしたらいいか、誰の協力を得ることがベストなのか、などがわかってくる。

またどんな状況で本人が不安定になりやすいのかもわかり、再発・再燃予防に役立てることができる。

学歴や兄弟のことを聞いたとたんに不機嫌になる人は、そこにコンプレックスを抱いていることが多く、ダメな自分と優秀な兄 などの生活歴を聞かなければ表面に出てくることがなかった情報を知ることができる。
そして治療のなかでコンプレックスの軽減や適切な自己評価の獲得をめざしていくことになる。

とはいうものの・・・

これらの理由から詳細な生活歴を聞くことは、診断と治療にとって意味がある。

色々聞かれるとちょっと嫌な気持ちになるかもしれませんが、あなたのことを詳しく知りたい、少しでも治療に役立つ情報を知っておきたい、と意図があることを理解してください。

現在 週に1回だけ働いているクリニックでは予診を取る人がいないため、自分で初診時のみ20分程度の診察、その後は5分程度の診察で治療を行っている。

それでも比較的問題なく治療が進んでいくので、詳細な生活歴は本当に必要なのか、再度検討する必要があるかもしれない。

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