あなたはどうしたいか?

人はなかなか簡単ではない。

「あなたの希望は何か?」「あなたはどうしたいか?」と聞かれたときに、自分の気持ちや希望を正直に言える人もいれば、正直に言えない人もいる。

正直に言える人はその希望に即して準備を進めれば良い。

しかし「〇〇したい」と言うからといって、それが本当に本人の希望であるとは限らない。

また正直に言えない人は工夫が必要である。

ただ「どうしたいの?」「ちゃんと言いなさいよ」「話さないと分からない」というだけでは ほとんどの場合だめである。

この人はどんな人なのか把握することから始める。

他人の希望に敏感であるか?
自分の希望が分かっているか?
で分けて考えるのが分かりやすい。

1.他人の希望に敏感で、自分の希望が分かっている人

自分の希望を我慢して、他人に合わせようとしてしまうことが多い。

待っているだけ や「なんでも話していいよ」というだけではだめである。

相手が期待している答えを考え、それに一致した意見を述べるだけである。

周りの人の希望と、自分の希望を区別して考える必要がある。

つまり「〇〇さんは あなたにどうして欲しいと思っていると思う?」「それに対して あなたはどう思う?」を聞くことで、周りの人の希望と自分の希望の違いを明確化させる。

その上で「あなたは 〇〇さんの希望を満たしたいと思うか? 思わないか?」と確認していく作業が必要である。

もちろん相手の気持ちが分かりながら、相手の気持ちと反する行動を取るのは勇気が必要で罪悪感を抱くことが多い。

常に自分の希望を優先させることは難しく、少しずつ変わっていくことを目指すのが良い。

常に自分の希望を優先させなくてはいけないという思い込みは、常に他人の希望を優先させなくてはいけないという思い込みと同じくらい生きづらい考え方である。

2.他人の希望に敏感で、自分の希望が分かっていない人

本人は全く自覚のないまま、他人の希望を自分の希望であるかのように表現することが多い。

1と同様に対応をしていくものの、自分の希望が分かっていない分、自分はどうしたいのか出てこないことが多い。

4のような方法を取りながらも、周りに流されながら生きていくというのも一つの生き方かもしれない。

3.他人の希望に鈍感で、自分の希望が分かっている人

上手く自分の希望を表現することができない、あるいは何らかの理由で表現することを躊躇してしまっていることが多い。

時間をかけて本人が言うのを待つのが良いものの、家族がすぐに希望を押し付けたり、自分の意見にそぐわない時にはすぐに否定的な対応をするなどの躊躇する原因が明らかな時にはその軽減が必要になることがある。

ちなみに思春期の子は、2か3のことが多い。

4.他人の希望に鈍感で、自分の希望が分かっていない人

希望自体が無い、あるいは希望が一貫せずその場での思い付きでコロコロと変わることが多い。

前者であれば「何をしたい?」「どうしたい」と聞くのではなく、どんなことが好きか、楽しいか、快適かを確認しそれにそった方針を決めていくのが良い。

後者であればすぐに実行に移すのではなく、しばらく待ち 希望が熟成するのを待ってから周囲は動くようにするのが良い。

本人が退院したいというとき

入院中の患者が「退院したい」と言ったとき、誰の希望なのかということを意識しておく必要がある。

自分の口で言っている以上、本人の希望と考えるのは浅はかすぎる。

特に普段は「退院したい」とは一言も言わない人が、家族の面会の後に急に「退院したい」と言い出す場合、色々な可能性を考えないといけない。

本人の希望ではなく家族の希望を代弁している

本人が希望するからと言って何も考えずにそのまま退院させるのは治療とは言えない。

退院して安定して生活できるか、本人と家族にとって良い経験となるか、安全に治療を続けることができるかということを吟味し、本当の本人の希望は別にあるのではないかを考えていく必要がある。

家族の前でしか「退院したい」と言わない

「いつも退院したいと言うので主治医の先生に言うように伝えているんです」と言う家族はいうものの、本人は一向に「退院したい」とは言わないということは比較的多い。

・言っても無駄だというあきらめの気持ちの人

・家族を前にすると家に帰りたいと言う気持ちが一時的に増加する人

・家族の希望を敏感に感じとってそのような発言になる人

・「退院したい?」と聞かれるのでとりあえず言っているだけ

などの可能性があり、それらに合わせた対応が必要である。

少なくとも口に出されたことが本人の希望全てではない。

「何でも希望があったら言って」と言う言葉は多くの人にとってはほとんど意味のない言葉であり、一部の人にとっては「私の希望を当ててみなさい」と言う、なぞかけにしか感じられないときがあるということは理解しておく必要がある。

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