ちょうどよい運動とは
興味深い記事があった。
新型コロナ後遺症ーいま知っておきたい22のポイント 平畑光一。日本医事新報5240(2024.9.28)。
経験に即した話が多く、エビデンス的に微妙に感じるものもあった。
興味深いと思ったのは、新型コロナ後遺症ではなく、その中で紹介されていた運動療法についてである。
長くうつ状態が続いたり、易疲労感が続く人たちには参考になりそうなので紹介する。
すぐに体が鉛のようになる
PEM(Post-exertional malaise)
軽い身体的負荷や精神的負荷の後、そのときは平気でも、5-72時間後に強い倦怠感が出現。
”クラッシュ”
負荷が許容範囲を超えると体が鉛のように重くなり3日以上寝込んで動けなくなる。
COVID-19後遺症、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群などでよく見られる症状らしい。
「すぐに体が鉛のように重くなる」
「ちょっと動くと翌日何もできなくなる」
「立ち上がることもできなくなる」
「はみがきすらできない」
などと言う人は多い。
どの程度で疲れてしまうか
Performance status(PS)による疲労・倦怠の程度の評価(改変)
0:倦怠感はなく制限なく社会活動ができる
1:労働可能ながら、しばしば疲労を感じる
2:労働可能ながら、全身倦怠感のためしばしば休息が必要
3:月に数日は社会活動や労働ができない(欠勤が必要)
4:週に数日は社会活動や労働ができない(欠勤が必要)
5:通常の社会活動や労働は困難、軽労働(数時間の事務作業)は可能ながら週に数日は休息が必要
6:調子の良い日は軽労働が可能、週の50%は休息が必要
7:身の回りのことができ介助は不要ながら、通常の社会生活や軽労働は不可能
8:身の回りのことはある程度できるが、しばしば介助が必要で日中の50%は臥床している
9:身の回りのこともできず常に介助が必要で、終日臥床している
境界が曖昧な部分も多く、すぐ無理をしてしまう人とあまり無理をしない人で評価が変わってしまう部分はあるものの、十分目安になる。
月1回くらい確認してみると、自分の回復度合いがわかって良いと思う。
疲れない程度の運動
各段階における運動療法
PS0 自由に運動
PS1 15−30分の運動+3分以上休憩 ×10回以上
PS2 15分以内の運動+3分以上休憩 ×10回以上
PS3 10分以内の運動+5分以上休憩 ×10回以上 屋外は2日に1回
PS4 5分以内の家事・ストレッチ+5分以上休憩 ×20回以上
PS5 3分以内の家事・ストレッチ+5分以上休憩 ×20回以上
PS6 1分以内の家事・ストレッチ+10分以上休憩 ×20回以上
PS7 20秒のベット上でのストレッチ・運動+10分以上休憩 ×20回以上
PS8 5秒の運動+15分以上休憩 ×20回以上
PS9 1秒の運動+20分以上休憩 ×20回以上
詳細は以下を参照
外来で「少し体を動かしましょう」「ストレッチやヨガをしてみましょう」「翌日に疲れが残らない運動量を見つけましょう」ということは多いものの、ここまで細かく指示をしたことはなかった。
PS7やPS8のレベルの人もある程度いるものの、その人たちに5-20秒のストレッチや運動から始めるという発想はなかった。
本当にこの負荷が効果があるのか正直わからない。
「5秒の運動って普通に横になっているだけでもしてない?」という疑問もある。
しかしそれでも、
・すぐに疲れてしまう人たちはかなりの数いる
・5秒の運動でも繰り返し行うことで回復につながる人たちもいる
・「今日も何もできなかった」と思うのではなく、「今日も運動療法をがんばれた」と思うことができる
という点において、これらの評価や運動療法は意味があると思う。
回復するためには 少しずつ体と頭を動かすリハビリが必要。
そしてこういった地道な積み重ねが回復につながっていく。
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