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リスク説明をするということ

最近は医療行為においてさまざまなリスク説明をしないといけないとされている。

例えば 内視鏡(胃カメラ)の場合、出血、穿孔(胃や腸に穴が開く)、ショックなどが、胃部内視鏡では発生頻度0.0069%、死亡率0.0001%、大腸内視鏡では 発生頻度0.011%、死亡率0.0004%である(日本消化器内視鏡学会 第 6 回全国調査 2008~2012 年)。

理解はするものの同時に強い違和感を覚える。

もちろん何も知らないうちに、とんでもなく危険なことを同意しているのは困るものの、医療の世界において説明を要求されることがやや過剰になりすぎているように感じる。

そしてこの過剰化によって結果的に徳をしている人はあまりいない。

リスクを説明することのデメリット

リスク説明はデメリットが多い。

リスク説明とは、頻度が低いものの起こりえる危険性を説明することで、不安にさせ、知らなければそのまま流していられる副作用を意識させ、期待した効果が起こらない人も意外といるという残念な情報を伝えることである。

この薬飲んでごくまれに全身が真っ赤になったりショックを起こしたり死ぬことがあります。

依存を起こして薬を止められなくなるかもしれません。

1-3割の人に口が乾いたり便秘になったり手が震えたりそわそわして落ち着かなくなったりすることがあります。

3割の人はほとんど効果ありません。

と言われて、素直に飲めて効果が十分に出るだろうか?

航空会社は、
この飛行機は時々時間より遅れて到着します
たまに天候不良のために引き返します
ごくごく稀に墜落します
本当に乗りますか? 
などと説明する必要があるだろうか?。

自動車会社は、
運転したら交通事故であなたが死んだり他人を殺してしまうことがあります
本当に買いますか?
などと説明する必要があるだろうか?

リスク説明をすればするほど「プラセボ効果」で副作用は起こる可能性が高まり、薬の効果を期待できなくなれば効果も低下する。

リスク説明は誰のためか?

リスク説明が意味があるのは、リスクを理解した上でする・しないを選ぶことができるときである。

手術のような、侵襲性が極めて高く、専門家でなければリスクに対する知識が十分ではない治療を行う場合は、当然ながら十分なリスク説明は必要である。

しかしほとんどの医療の場合は、病院を受診し服薬することのリスクをもっと理解してもらうので十分である。

「不安なんです」とひとしきり訴えられた後、薬の話をすると「この薬は副作用はありませんか?」と何度も聞かれると、「あなたが今飲んでいる体の薬と同じくらい頻繁に副作用はありますよ」とつい言ってしまう。

病院で行われる医療行為はショックによる急変や逆に悪化することがあり得る、市販薬を含めた薬は副作用は程度が軽いものも含めると頻繁に起きるということを知ってもらい、困ったことがあるとなんでも病院に行くという習慣の前に、受診することのリスクを理解し受け入れたうえで病院受診する。という風になるべきである。

いろいろなリスクを知りたい人はまれにいる。要求される以上、説明はするものの、結果的に多くの人にとってプラスになっている気がしない。

「色々ありますが 大体の人は大丈夫ですよ」と伝えても、「絶対に大丈夫ですか?」と聞かれると絶対とは言えない。

録音している状況なら、ありとあらゆるリスクをやや強めに説明せざるを得ない。

結局 リスク説明が本人と家族の不安を増加させるだけに終わり、リスク説明が医療者側の訴訟対策に終わる。

病院受診をする人へ

病院は、
多少の危険性を伴う検査や治療行為をするところです
多少の危険性や多くの副作用をもつ薬を出すところです

それを理解したうえで病院受診をしてください


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