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病院は薬を出すところである

「病院に行くとすぐ薬を出される」と文句を言う人がいる。

病院と薬について重要な点がある。

病院に来る人のほとんどは薬を希望している

普通の風邪やちょっとした病気は、薬を使わずしっかり睡眠をとって、しっかり食事をとってゆっくり休めば治る。

しかし病院に来て1時間以上待って診察を受けた上で、「肺炎ではないからしっかり水分取って休んでください」「疲れがたまって神経が過敏になっているからゆっくり休んでください」などと説明され、薬無しで納得して帰る人はほとんどいない。

時間をかけて薬を出す必要はないことを説明してもなかなか納得してくれず、「つらいので病院に行ったのに薬を出してくれなかった」と文句を言われるだけである。

良い悪いは別として、病院に来る人のほぼ全ての人は薬を欲しいと思っている。

薬を出さないで状態が悪化したときに責任問題になりやすい

ある程度の自信をもって薬が必要ないと判断し説明しても、その後の経過が予想に反して悪くなることがある。

風邪で肺炎ではなかった人が、その後 肺炎に進行してしまった。
ちょっと疲れているだけの人がショックな出来事があり突発的に自殺企図を図った。
などは十分あり得る。

もちろんこれらは薬を出したとしても起こり得ることであり、薬を出さなかったことによって引きこされてしまったことではないことが多い。

しかし本人や家族の立場からすれば、薬を希望したのに薬を出してくれなかった、その後 状態が悪くなった、という状況であり、「誤診だった」「薬を出さなかったためにこうなった」と理解するのはある種当然である。

薬はそれほど必要と思えなくても、風邪なら3-5日分処方。

疲れがたまっている状態なら1週間ほど処方。

悪化するようなら早めに受診するよう、良くなったら薬を飲むのはやめてもいいと説明するのが、訴訟が多発している今の時代の当然の対処方法である。

薬を出さないとその後受診しない

薬を出すほどではないものの、気になるので経過を見たいと思っても、薬を処方しない限りまず病院には来ない。

精神科の場合は毎回30分以上カウンセリングをすれば来る人はいるものの、それをしたら外来はあっという間にパンクする。

病院に行って1時間待ち、5分診察を受け、薬なしで「2週間後にまた来てください」と言われたら、私なら絶対に行かない。

薬を出さないということはその人が次に受診する可能性は極めて低い、という事実を医師は知っているため、気になって再度受診してほしいと思う人には薬を出すことが多い。

・病院は絶対に薬が必要がないとき以外は薬を出す

・薬を出さないで状態が悪化したら訴訟リスクが高まる

・薬を出さない限りまず患者は次回来ない

この事実を前に病院を利用するべきである。

薬を欲しくない人はどうしたら良いか

病院を受診して診断をして欲しいけれど、薬を出して欲しくない人は、このことを初めに明確に伝えるべきである。

特に精神科・心療内科の場合、これから処方する予定の薬が最も効果が出るように診察時の話を組み立てていく(詳細は治療効果が薄くなるので省略する)。

そういった苦労・工夫をして、いざ処方するときに「薬は飲みたくないんです」と言われると、今までの苦労が報われずがっかりしてしまう。

もちろんメリットやデメリットを知ったうえで、飲むか飲まないか判断したい、というのであればいいものの、薬を飲みたくないという気持ちが強いのであれば、初めから「薬はできるだけ使いたくないんです」「自分が病気なのか 病気ではないのか知りたいです」「薬以外の方法を知りたいです」などと伝えるべきである。

それをしないで最後の最後に突然「薬を飲みたくない」と、それまでの医師の努力や工夫をすべて無駄にして医師が不機嫌になるのは、不機嫌になる医師が悪いのではなく、患者の配慮不足である。

医師は何も言わなければ、多くの人が期待していることを前提に話を進めていく。

限られた時間で少しでも上手に病院・医師を利用できるようになって欲しい。

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