入院したときに家族はどうしたら良いか 中編
精神科病院に入院するということは、本人にとって大きな変化であると同時に家族にとっても大きな変化である。
入院したときに家族はどうしたら良いか 前編 の続きである。
4.定期的に様子を聞く
入院治療は一種のブラックボックスである。
定期的に様子を聞くことで、少しでも不安を和らげることが大事である。
様子を聞くには、主治医に聞く、看護師やPSWに聞く、という方法がある。
主治医に聞くのは、医学的には「正確」であるものの、頻繁に長く話をするのは難しく、2週間に1回程度×5-10分程度が良い。
家族が知りたい情報は、医学的な話ではなく普段の本人の様子であることが多く、看護師に聞くのが良い。
しかし「病状を知りたい」と看護師に聞くと、ほとんどの場合「医師に聞いてください」と言われてしまう。
難しい話ではなく「眠れてますか?」「ご飯は食べてますか?」「ご迷惑をかけていませんか?」と聞くのが良い。
看護師の方が普段の生活を直接見ており、家族が知りたい本人の様子を一番分かっている。
そして「ご迷惑をかけていませんか?」と聞くことで、最近の様子を聞きやすくし職員の苦労を労うことができる。
「こんなことがありましたよ」と言われたときに、「ご迷惑をおかけしてすみません」「ありがとうございます」と一言言うだけで、職員は楽になり、優しく本人に接することができるようになる。
もちろん感謝や謝罪の言葉がなくても優しく冷静に接することはプロとして当然ではあるものの、やはり人間であり、自分たちがしていることに対して感謝されるということは当然プラスになる。
5.ほどよく面会する
面会の頻度をどの程度にするかは難しい問題である。
心配だから、本人が希望するからと、あまりにも面会の頻度が多いと、「帰りたい」という気持ちが強くなりすぎ、安心して入院治療に専念することができず、不安定になりやすい。
また家族に対して「○○を持ってきて」「明日も来て」「家に連れて帰って」と、依存的・退行気味となったり、攻撃的となったりし、本人も家族も傷つく。
逆に面会の頻度が少なすぎると、「見捨てられた」という気持ちが強くなり、いつ来るのかとずっと不安に感じ、不安定になりやすい。
精神的に安定する面会は、経験上(エビデンスは無い)入院して数か月は2週間に1回程度、長くなると月に1回程度が良い。
そして最も大事なこととして、次にいつ来れるかをはっきりさせるということである。
「また来るね」と言われて、「いつ来るのかなー」「まだ来ないな-」と毎日毎日気にしながら生活するのは、非常に負担となる。
次いつ来てくれるかが分かっていれば、それがかなり先でも、それまで頑張ろうと思うことができるし、職員も対応しやすい。
対応しやすいとは、楽に対応できるという意味ではなく、「〇日に来てくれるから、それまでに〇〇ができるようになっておきましょう」などと、治療意欲を引き出すことができるということである。
面会も治療の一つである。
6.本人の話や要求は聞き流す
入院前から、そして入院後も、本人は家族に対して色々な話をする。
特に家族が一番困惑するのが症状に関する話である。
「○○が私に嫌がらせをする」「狙われている」など 到底 理解できない話、受け入れることができない話をする。
そんなときには、「そうなんだ」「つらいねー」「大変だね」と受容し、後は聞き流すのが良い。
明らかに症状と思われるおかしな話をしていても、「そんなことはない」と否定しても無駄である。
逆に「分かってくれない」「家族もグルなのかも」と不安にさせるだけである。
本人から「○○なんだけど、どう思う?」と聞かれたときだけ、「私はそんなことは無いと思う」「症状だと思う」と伝えるのが良い。
「どう思う?」という発言は、症状に完全に振り回される段階から、冷静な自分が回復する段階への移行しつつあるときに見られる。
また本人から「○を持ってきて」「○を買ってきて」などと、どうでも良さそうなものを色々と次々と要求してくることが良くある。
本当に必要なものがあることは少なく、
・ふと浮かんだことをどんどん口にしている
・面会に来て欲しい
・電話で家族の声を聞きたい
などのことが多い。
これに対しては「今度面会に行くときに持っていくね」「職員に聞いてみるね」「それは無理」とできることと、できないことを明確にしてあげるのが良い。
本当に必要なものは本人からではなく職員から連絡がいくので、職員から連絡がいかないときには、本人が欲しいと思っているだけで、本当に必要なものではない。
もちろん本当に必要なもの、特に職員から言われたものは、必ずできるだけ早く準備して欲しい。
後編に続く。
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