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「おつまみは300円以内で」と決めて飲んでみる (パリッコ) 〜『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』より公開! ⑥〜

こんな状況でも、楽しいお酒の飲み方はあるはず

若手飲酒シーンを牽引する人気ライターのパリッコ(『酒場っ子』)とスズキナオ(『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』)が編集、執筆を務める飲酒と生活の本『のみタイム』
1杯目は100頁以上にわたり「家飲みを楽しむ100のアイデア」について考えました。日常を楽しくする、使えるアイデアが満載!

2020年の前半、わたしたちはこんな「のみタイム」を過ごしていました。

073 「おつまみは300円以内で」と決めて飲んでみる (パリッコ)

(パリッコ/スズキナオ『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』より)

 小学生の頃、遠足の際に「おやつは300円以内で」と学校から言い渡され、100円玉3枚を握りしめて駄菓子屋に行くのがものすごく楽しみだった。あの頃の楽しさをまた味わうため、自分で自分に「今夜の晩酌のおつまみは○○円まで」と縛りを設けてしまうのはどうか?

 また当時、友達と「お前何買った?」なんて見せ合いながらのおやつタイムが楽しかった。これも、オンライン飲みならば気軽に実現できる。当然、ナオさんとふたりでやってみることにした。

 300円という制限があるからこそ、人に見せることを前提にしているからこそ最大限に発揮されるであろうクリエイティビティ。熱い戦いになりそうだ。

 まずは僕の方針を決める。毎日が人生に一度きりの貴重な晩酌。300円以内とはいえ、妥協はしたくない。そこで、地元のスーパーのなかでもリーズナブルさに定評のある「まなマート」へ向かった。おもむろに鮮魚コーナーへ。そう、もしも手に入る刺身類があれば、そこに持ち金の大半をぶちこみ、残った金額で細々としたものを買って周りを固めようという作戦だ。はたして鮮魚コーナーには、たった1品だけ買えるものがあった。「紋甲いか刺し」200円也。となれば、安い納豆を買い、ひと手間加えて「いか納豆」にしよう。さらに残りでうまい棒の2、3本も買えれば御の字だ。と、喜び勇んで69円の納豆を手に取りレジへ。会計をすると、なんと296円。消費税め……。というわけで追加の駄菓子は買えず、僕の買い物は少し寂しい2品で終了。

 その夜、ナオさんと飲みはじめる。ナオさんのラインナップは、1袋に20〜30枚は入っているであろう「いかみりん」せんべい、野菜サラダ、うまい棒4種と幅広い。しかもドレッシングが付いていなかったサラダにうまい棒を砕いて味つけするというトリッキーな作戦だ。「パリッコさん、イカ納豆1品食べちゃったら終わりでしょ?」「いや、単品納豆も残ってるから。それよりナオさんのサラダ、ちょっと水気足りなすぎじゃない?」そんな負け惜しみを言い合いながらの晩酌も、なかなか楽しいのだった。(パ)

パリッコ/スズキナオ(編著)
『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』
2020年8月5日発売 発行:スタンド・ブックス 本体1,500円(+税)ISBN:978-4-909048-09-7 C0095 A5変型判 並装 132p
カバーイラスト:石山さやか ロゴ:スケラッコ デザイン:戸塚泰雄

パリッコ(編著)
1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『酒場っ子』(スタンド・ブックス)『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)『ほろ酔い!物産館ツアーズ』(ヤングキングコミックス)『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、スズキナオ氏との共著に『酒の穴』(シカク出版)『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)『“よむ”お酒』(イースト・プレス)など。



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