影の光線 [in progress]

6月27日(金)17:15

 退勤時間まであと一時間を切ると、もはや何をやっても無駄な気がしてくる。「承知しました。」や「ありがとうございました。」で片付く場合を除いてメールを出すには遅すぎるし、新しいエクセルファイルに取り掛かるには疲れ過ぎている。フォルダの整理とかデスクの型付けとか、日頃「時間があるときに」と思っている雑務に取り掛かるのも一つの手だが、うっかり時を忘れて型付けに集中してしまった日には、雑務で残業という最悪のシナリオになりかねない。そう考えている間にも時は刻一刻と過ぎ、仕事関連の時事ニュースをダラダラ読んだり、社内メールに目を通すだけ通しておく。

 こういう時に決まって頭をよぎるのは、このままでもいいのかなーという漠然とした不安。子供の頃に思い描いていた自分とは程遠い現実。周りに一人か二人は「人生、満喫してます」みたいな人がいて、ふと劣等感に火がつく(でもすぐ鎮火)日々のもどかしさ。
 芥川龍之介が「唯ぼんやりとした不安」を抱えて自らの命を絶った時、その不安はこの不安と似ているのではないか。ふつふつと湧き、ぼうっと現れては何を言うともなくただそこにじっと佇む。何者か名乗ってくれたほうが何かしら対応そうなものを。
 この不安に打ち勝つことができるか否かで生死が別れるならば、私は死んでしまうだろう。でも、問題はこの不安と共に生きることができるか否かのようであり、それなら何とか、というこれまたぼうっとした自信があるので、これから退勤して自宅にたどり着けそうなわけで。


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