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一介のデザイナーがアンタッチャブルな「お金」をテーマとしたイベントを企画・実現するまでの思考と道のり(1/4回)

「正しいデザインをなせているか」の記事でも触れているように、個人的な活動の10パーセントとして、お金をテーマにしたトーク&展示イベントを表参道のギャラリーで開催することになりました。

構想と企画から約1年間。いろいろな事を考え、さまざまな方々と協働いただけたおかげで実現にいたりました。

イベントの内容は「お金」をテーマに、デザインリサーチャーやアーティストと共に制作を通じた探求を行った成果を展示で発表しつつ、お金に関する新しい取り組みをしている実践者によるトークで深ぼっていくものです。

トーク&作品展示ともにビジネスカンファレンスや美術館の展示では見ることのできないコンビネーションやトークのプログラムとなっております。

さて、一介のデザイナーがなぜ、アンタッチャブル = 触れがたいような「お金」をテーマにしたイベントを企画し、実現することになったのか。
どのような思考プロセスで企画に行き着いたのか、その背景や想いを4回に分けてお伝えし、今後何かイベントを開催したいと考えている方の参考になればと思います。

お金とはそもそも何かという気づき

そもそもなぜテーマが「お金」なのか。
その起点となったのは約3年前に決済サービスであるCoineyのビジョンやサービスコンセプトを見直していたときのこと。
決済サービスを提供するなかで、そもそも「お金とはそもそもなんだろう」という疑問に行き着いたことからはじまりました。

決済という仕組みによって右から左へとお金を流しながら、その流れの行き着く先には一体何が残るのか。
決済サービスは、単なる効率化の手段や個々の利益を越えて世の中にとってどんな “意味” を持ち、どんな未来を実現していくべきなのか。

そんなことをぼんやりと考えながら、本屋をフラフラしていたときに、なんとなく手に取った『エンデの遺言』という本に書かれていた、お金に対する視点が大きなヒントになりました。

『エンデの遺言』は、お金の本質について語られるときによく紹介される本で、「モモ」などの作者である児童文学作家ミヒャエル・エンデの背景にある深い思想と共に、お金とは何かについて本質的なことが書かれています。

この中でエンデが主張しているのは、お金によって人々の交換は効率化され、より多くの機会を生み出すことにもつながる一方で、そのシステムは完璧ではなく、「お金の不変性」という点に問題があるということ。

商品は減価していくが、お金には不変性がある。それによって、お金自体が最も価値の高い商品となり、人々が追い求めることでお金を持つものが権力を持つようになる。
そこに利子が加わることにより、お金を持つものはさらにお金を得ることができるようになり、富の集中や金融システムの暴走、資源の浪費につながっている。
世の中のあらゆる問題は「お金の不変性」に帰結しているということを述べています。

このような考え方がすべて正しいとは言い切れませんが、水の中にいた魚にとっての水のように、お金そのもののシステムを意識すらしていなかった自分にとって、まさに目から鱗でした。
あらゆる問題の根源にお金があるという視点は「お金とはそもそも何か」という問いへの探究を深めていく大きな起点となりました。

そして、Coineyという決済サービスの “意味" を、単なる利便性を越えた、世の中の問題を解決し得るお金の流れをつくっている、という広い視点で捉えることにもつながりました。

また、本の中では、DIY的に独自の通貨をつくっている世界での取り組みが紹介されており、その通貨の自由さと多様性は、それまで自身で考えていたお金に対する考え方を180度転換させられるようなものでした。

それまで私の中で、お金というものは国家が中央で管理するするもので、一つの国に一つの通貨というものが当然で、そのシステム自体には触れてはならないものだと考えていました。

そんな中で、「腐るお金」や「時間通貨」など、さまざまな独自通貨をつくって実践している世界中の人たちの例を見ていくなかで、お金はもっと自由であって良いということ。やろうと思えば、通貨のシステムを自分たちでつくれるという事に大きな希望を感じました。

そんな風に、お金のことについてあれこれ考えを巡らせながら行き着いたのは、人との関係やその流れにおいて、お金はまだまだ “まるくない” という視点。

価値を交換するためのお金は、その通り道はまだまだ手間や面倒だらけでデコボコしている。
そして、何よりもその流れは偏っていて広く行き渡らず循環していない。

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👆コンセプトを考えていた当初のイメージメモ。

Coineyは、お金を渡すこと、受け取ること。その間にある手間や面倒を限りなくゼロにしていく。
決済サービスを通じ、お金の流れを変えることで、ひとりひとりにより多くの機会を生み出せるように。
感謝や驚きに対する気持ち、誰かを助けたいという気持ち、その意志の表明と対価の証明としてのお金の流れが、気持ちと同期するくらい透明な決済サービスをつくること。
そうすることで、もっと世の中にお金が循環していくような世界を実現したい。

そんな想いから今のCoineyのビジョンである「お金のながれをまるくする」という言葉に辿りつきました。

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Coineyのビジョンを考えながら、お金とはそもそも何かという思索をつづける中で色々と情報収集をしている中で、グリーンズの学校でコミュニティ通貨・経済についての講座が開かれていることを知り、真っ先に応募して通うことになりました。

そして、そこで得られた学びや経験が、これまで触れがたかった「お金」というものに対し「お金って意外と自由で面白い!」と自信をもって言えるようになり、今回の展示を考える動機へとつながることになります。

(第2回へつづく...)

イベントついて詳しくはこちら👇

シリーズ一覧

第1回:お金とはそもそも何かという気づき(本記事)
第2回:地域通貨コミュニティでの思索(Coming soon...)
第3回:SocialOutTokyoでの結実(Coming soon...)
第4回:CANTEEN(Rhetorica)チームとの出会い(Coming soon...)

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