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「直感的著作権」があるのでは

どうやら世間には「著作権法とは関係ない著作権」のようなものが存在するように思います。これを「世間の人は著作権法を理解していない、誤解がある」などと評価すべきではなく、なにか別軸の価値体系が実体を持って存在しているのではないでしょうか。私はさしあたりこれを「直感的著作権」と呼んでいます。

著作権法とは全く別の次元において、社会全体に「法律のことは別として、普通に考えて当然、人間たるもの皆このように尊重されているべきだろう」という敬意や遠慮(あるいは生活の知恵やマナー)があるのではないでしょうか。法への楽観的な信頼の現れと言えるかもしれません。

直感的著作権は、具体的なケースでの当てはめ結果として共有されていると思います。こんなイメージですね。

直感的著作権

  • 二次創作の同人誌は違法(しかし特別に見逃されている)

  • 写真のトレスは違法

  • 無断転載は違法

  • 許可を得ない引用は違法

法に定められた著作権は、このようなリスト化に馴染みません。法は規範と当てはめという手順を踏むので、ケースバイケースであり、このようにクリアなテーゼにはならないはずです。私の理解では、こんな感じでしょうか。

著作権法

  • ある著作物(典型的にはマンガなどの絵画の著作物)に依拠性と類似性を持つ同人誌は、複製あるいは翻案などとして違法となりうる。ただし、現在の実情を一般的に見てみると「同人誌なら原則違法」というような著しい侵害状況にはない。むしろ大半の同人誌は、絵柄なども大きく異なっており、デッドコピーでもなく、類似性なしとして権利侵害に当たらないケースも数多いのではないか。少なくとも、同人誌イコール違法という風潮は行き過ぎではないか

  • 写真の著作物の創作的表現(被写体の選択と、構図や露光など創意工夫の組み合わせ)が著作権により保護されることは当然である。しかしながら「トレス」は、主として線画として、建築物や生物などの輪郭を利用するに過ぎないこともある。線画は、写真の表現のうち主要な部分… 極端な場合には、構図以外のほとんどの要素を保持できない。そのため類似性が著しく低くなり、写真の著作物の本質的表現を留めておらず、複製・翻案などに当たらない場合もあるのではないか。建築物や生物の形状そのものはアイデアに過ぎないことも留意すべきである

  • 引用の要件を満たす利用、私的利用、報道目的の利用などは、法が文化の発展と権利保護のバランスを取るため定めた措置である。その規定内容から、無断であっても当然に許される

  • 著作権法にいう引用の成否に「権利者の許諾」は関係がない。そもそも権利者の許諾があるのであれば、引用の規定と関わりなく合法である

特にオチはありませんが、多分こういうものは存在している気がする。財産権と人格権それぞれの性質が融合して、具体的な当てはめの結論だけになっているようなイメージがあります。

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