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大創産業が生み出した100円ショップという文化

狷介固陋(けんかいころう)
→ 新しいことを嫌う堅物のたとえ。

まず、世の中の大半が新しいことを嫌う堅物だということは、予め主張しておこう。

このことについては、社会人になったあたりから常々感じていたことなので、今さらなにも驚きはない。

なにか世の中に話題になったとしても、全く食いつかないどころか、その話題に対して批判するという人とほぼほぼイコールだと思ってくれていい。

それは個人でも企業でもどちらにも当てはまる場合が非常に多い。

私の人生はチャレンジする側にいることが多いので、こういった経験は他の人よりも多いという自負がある。

ただ、そんな堅物が圧倒的に多い世の中で、チャレンジしている個人や企業も当然あり、成功を収めている場合もある。

今回も1つの企業に注目してみたいと思う。

大創産業という企業

大創産業という企業をご存知だろうかと聞いても、ピンとこないという人も多いと思う。

では、DAISO(ダイソー)という100円ショップをご存知だろうかと聞いた場合はどうだろう。

大半の人が知っているというだけでなく、一度は使ったことがあるとなるのではないだろうか。

そう、大創産業という企業は、100円ショップのDAISO(ダイソー)を展開している業界No.1企業だ。

100円ショップ業界で圧倒的なシェアを誇っていることは、以前書いたので下記も参考にして欲しい。

100円ショップ業界の現状とポテンシャル

以前書いたブログ内で2020〜2021年のスコアについて触れているが、2021〜2022年の最新の各社のスコアは下記のとおりとなっている。

  1. ダイソー:5,493億円(前年比4.4%増)

  2. セリア:2,080億円(前年比3.7%増)

  3. キャンドゥ:731億円(前年比0.1%増)

  4. ワッツ:527億円(前年比3.8%減)

100円ショップ業界第2位のセリアに圧倒的な差をつけていることがわかる。

そして、100円ショップと言っても顧客単価も500〜1,500円という人が4人に3人いるという盤石のビジネスモデルを築いている。

なによりも、DAISO(ダイソー)が上手なのは空中戦、つまりSNSの使い方だ。

上述したブログ内にも書いているが、DAISO(ダイソー)のInstagramのフォローワー企業アカウントとして常にTOP15に入っている。

そんな大創産業が広島の企業だということも改めて主張しておきたい。

顧客単価が1,500円以内なのに、5,500億円の売上をつくっているということ、それだけでなくしっかり利益を出していることがどれだけスゴいことなのか改めて触れておく。

DAISO(ダイソー)の新たな戦略

2021年10月に、DAISOネットストア(ダイソーネットストア)をスタートさせた。

以前からウェブサイトの申込フォームによる大量注文や、まとめ買い専用のDAISOオンラインショップはあった。

そこに、4万点の商品の中から1個単位で注文ができる、DAISOネットストアをオープンさせた。

上述したとおり、盤石なビジネスモデルが基盤にあるとはいえ、100均のオンライン販売でビジネスは成り立つのか注目されているというわけだ。

その利用方法はシンプルで、下記の手順でネットからDAISOの商品が購入できる。

  1. 名前とメールアドレス、パスワードを入力して会員登録をする

  2. ECサイト内で欲しい商品を選び、配送先やクレジットカード情報を入力して注文完了

  3. 注文から3~6日後に商品が届く

さすがに、1品の100円のみでの購入はできず、現在の仕様は下記のとおりとなっている。

  • 1回の注文で合計金額1650円(税込)以上の購入が必要

  • 770円(税込)の配送料が必要(北海道、沖縄県、離島を除く)

  • 合計金額が1万1,000円(税込)以上になれば配送は無料(沖縄、離島を除く)

DAISOに行ったことがある人は理解してもらえると思うが、商品点数が多いDAISOでは商品を探すのに時間がかかることも多い。

買うものが決まっていて特にかさばる商品であれば買いに行く手間も省けるし、サクッとネットで購入できるというのは利便性が高いのは理解できるだろう。

Amazon等で買い物に慣れている人からすると、翌日に届くAmazonに比べて到着までに若干時間がかかってしまう印象を与えてしまうが、そこまでストレスな時間ではないだろう。

DAISO(ダイソー)の新たな流通網

注目したいのは、DAISOネットストアのECサイトそのものももちろんなのだが、その裏側の仕組の部分、つまり流通の部分だ。

通常、DAISOの各店舗には、RDC(リージョナル・ディストリビューション・センター)と呼ばれる大型の物流倉庫から商品が配送されて店頭に並ぶ。

2022年7月現在、RDCは千葉、埼玉、名古屋、大阪、北海道、新潟、広島、九州の8拠点にある。

となると、DAISOネットストアも同じ経路の流通を使っていると思うのが一般的だろう。

全国に8拠点も大きな物流センターがあるのであれば、盤石なイメージを持ってしまう。

ところが、実際はそうではなく、品揃えが豊富な大型店で注文に応じて商品の梱包、発送をしているという。

そして、こうした業務を担当するのは、東北、関東、関西などにある店舗だということだ。

例えば、東京在住の消費者からの注文であれば、関東エリアの拠点から発送しているのが実態なのだ。

運用をまとめると下記の手順となる。

  1. エリア拠点となる店舗のEC業務チームに自動的に送信される

  2. チームスタッフは注文内容を確認し、店舗在庫から商品をピックアップして梱包する

  3. 発送されて筆者の自宅に届く

つまり、店頭でピックアップする、いわゆるネットスーパーと同じ運用手順というわけだ。

実際に注文したら、DAISOネットストアのマイページから配達ルートを確認できるので、どの店舗から来たのか見てみるのも楽しめるかもしれない。

RDCの大型物流拠点はバルクでの発注には対応しているが、1つ単位の発注には対応していないのが、その理由だという。

物流網を先に整えるために少しずつ試用運転を始めながら、EC側の機能実装も進めているという戦略をとっていることが、いかにもスタートアップ的な発想だ。

大手企業にありがちな傾向だが、他企業のシステムをそのまま転用するという方向性を取りがちだ。

当然、他企業との強みは全く異なるため、そのままシステムを登用しても上手くいく必要がないことくらいわかっているのに、なにかやらないとということが優先されてしまう。

これではイノベーションは起きるはずもなく、もちろん企業としての成長にも繋がらない。

このあたりの考え方というか進め方が、大創産業は非常に上手だという印象を持っている。

DAISO(ダイソー)のグローバル旗艦店

もう1つ、大創産業の動きとして注目しておきたいのが、グローバル旗艦店のオープンだ。

2022年には100円ショップ業界の市場規模が1兆円を超えることが濃厚で、それに伴い強気の出店をしているのが、DAISO(ダイソー)だ。

中でも、2022年4月15日にオープンした、マロニエゲート銀座店がその象徴だ。

銀座の約500坪のフロアに、下記の3つのブランドを融合させた大創産業初のグローバル旗艦店だ。

  • メインブランド:DAISO(ダイソー)

  • 300円ショップブランド:THREEPPY(スリーピー)

  • 300円ショップブランド:Standard Products(スタンダードプロダクツ)

地元の広島にも、2022年6月30日に、Standard Products(スタンダードプロダクツ)をオープンさせている。

stak, Inc.のメンバーからその話を聞きつけて、早速行ってみたが、結構な人で賑わっていた。

もはや、無印良品やFrancfrancのような雰囲気もあり、これは絶妙なポジションで拡がっていくかもしれないと感じた。

なによりも、DAISO(ダイソー)が下支えしていることが他社に比べて圧倒的に強いところだろう。

まとめ

カルチャーをつくっていくということを言葉にするのは、とても簡単だし誰にでもできることだ。

けれども、実際にカルチャーを根づかせていくということは、そんなに簡単なことではない。

いくつものチャレンジがあっただろうし、そこには失敗もつきものだろうが、それをいくつも乗り越えた先に少しずつ形成されていくものだろう。

そこには狙ったものもあるだろうし、たまたま上手くいっただけというものもたくさんあるはずだ。

そういった諸々が幾重にも複雑に絡み合った結果、シンプルなカルチャーが形成されていくのだと思っている。

ただ、根本にはいい加減な気持ちではなく、徹底した情熱があることもまた事実だと勝手に考えている。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。