中国政府が打ち出した三人っ子政策という新たな施策
隠忍自重(いんにんじちょう)
→ 怒りたい気持ちなどをじっと我慢して、軽々しい言動を慎むこと。
自分自身のことを振り返ってみると、20代の頃は勢いしかなかったように思う。
感情をむき出しにして、半ば強引でも、多少周りがついてこなくても前進あるのみといった感じだった。
それがいつからだろうか。
怒りでは人を動かすことができないことを悟り、自分の感情をコントロールすることで推進していくようになった。
瞬発的に感情的になることは、未だにあれど昔ほどではない。
以前、アンガーマネジメントについて書いたので、そちらを参照して欲しい。
ストレスを溜め込まないためのアンガーマネジメントとは!?
ある意味でマネジメントの最高峰?
私は2010年の年末あたりから、日本と上海の往復をするようになった。
そして、2011年3月から2年と少しの期間、上海で生活をしていたことがある。
こちらも何度も書いているので省略するが、その経験もあり中国という国に関しては、他の人よりは好意的に見てしまうところもある。
もちろん、おかしいと感じるところも大いにあるが、ある意味でマネジメントの最高峰かもしれないと思うところがある。
それが、中国共産党だ。
一党独裁体制の良し悪しは別として、単純にマネジメントするという意味では、とてもやりやすい環境にあると思う。
例えば、コロナについてもだが、中国共産党の圧倒的な支配下において、今や大都市であってもコロナに怯える様子はない。
まあ、そもそも湖北省武漢市が発祥の地となって、世界中にパンデミックを巻き起こしたという部分はあれど、その後の中国政府の対応はある意味でマネジメントの最高峰ではないだろうか。
とにかく、力で押さえつけることができるというのは、危機的状況のときには制圧できるので、やり方によってはスピーディに物事を進めることができる。
そういう意味では、強さを見せつけることが可能だという意味である。
中国政府の新しい施策
そんな中国政府が新たな施策を講じていることを知っているだろうか。
歴史を学んだときに、一人っ子政策という中国政府の施策を学んだことを記憶している人も多いだろう。
その知識はもはや古い。
2021年5月31日に中国政府が新たな方針を打ち出した。
それは、1組の夫婦につき第3子まで出産を認めるというものだ。
中国でも日本と同様に高齢化対策や人口構造の改善を図ろうとしているのである。
中国の国家統計局によれば、中国の人口に占める65歳以上の割合は13.5%となった。
国連が定義した高齢社会の基準値である14%に迫る水準になっている。
また、今後5年間のうちに中国の新生児が年間1,000万人を割り込み、2027年に中国の人口が減少に転じると予測されている。
これはマズいということで、三人っ子政策に踏み切ったというわけだ。
2016年からは純粋な二人っ子政策を推進していたが、約5年で新たな舵を切ることになった。
二人っ子政策から三人っ子政策へ
中国政府は、一人っ子政策から急に三人っ子政策を推進したわけではない。
2014年1月からは、単独二人っ子政策を実施している。
夫婦のどちらかが一人っ子である場合には、2人目の出産を認めるという政策だった。
ところが、あまり効果がないということで、2016年1月からは全ての夫婦が2人目の子どもを持つことを認めた。
これで、1979年から続いた人口抑制策である一人っ子政策は終演を迎えた。
そして、くり返しになるが、5年後の2021年5月31日に二人っ子政策からさらに緩和された三人っ子政策へ踏み切った。
人口が減るということは、国力の低下に繋がることは当然とされている。
単純に人口が減るので、国内消費が減るし、生産能力も衰えるからである。
ましてや、中国の場合にはインドという人口超大国を隣に抱えていることもあり、このままでは今の地位を脅かされることは必至だ。
当然、日本の超高齢化社会の現状にも目を配らせているだろうし、そこから学べるものは学んでいくはずだ。
日本にとっての商機
そんな中国政府の発表に商機を見出そうとしている業界がある。
人が増えれば移動にも変化が出てくるということで、日本の自動車業界が躍起になっている。
二人っ子政策の実施の背景は、なにも少子高齢化によるだけではない。
単純に経済成長によって中間所得者層が増えたことも要因の1つだ。
つまり、所得が増えるのであれば、生活に貧窮することもないだろうという判断だ。
実際、こんな変化が起きた。
かつては、ビジネス向けセダンへの一極集中だった車の売れ筋が、ファミリー層をターゲットとしたレジャー向けSUVに人気が集まるようになった。
ここには、中国ならではのルールも影響している。
中国では12歳未満の子どもを前部座席に乗せてはいけないというものだ。
つまり、後部座席に取り付けたチャイルドシートに子どもを座らせることが一般的なため、セダンより車内空間が大きいSUVを選ぶ家族が増えたというわけだ。
SUVの販売台数は2017年に初めて1,000万台を超え、乗用車全体に占める割合は43%に達した。
さらにこの割合は20年には49%まで増えている。
このSUV市場を巡っては中国メーカーと海外勢がしのぎを削っている。
2021年1月〜5月の販売トップ5は下記となっている。
1)Hover H6:長城汽車(16.2万台)
2)CS75:長城汽車(14.9万台)
3)CR-V:東風ホンダ(12.0万台)
4)博越:吉利汽車(8.4万台)
5)Tiguan:上汽VW(8.4万台)
6位には一汽トヨタのRAV4がランクインしており、日本メーカーも善戦している。
それから、三人っ子政策で注目されているのは、7人乗りの3列シートのあるSUVだ。
中高級MPVの需要増加も顕著である。
加えて、富裕層向けや送迎用の高級MPVの需要も徐々に増加している。
MPV市場における20万元(約340万円)以上の高級車種の割合は、2019年の27%から2021年1~4月の38%に上昇した。
今後の中国政府の動きに注目
中国政府が出生率の低い地域から産児制限を全面撤廃し、全国に広げていく可能性は高い。
また、2014年に開始した新型都市化計画により、農村部から都市部への人口流入が続いている。
2035年の都市化率予測(75%)で計算すれば、今後約1億5,000万人の農村人口が都市部に移住することになる。
こうした人口増加に伴う新車市場の拡大も見込まれるとなれば、日本の自動車メーカーにもある程度の商機はあるだろう。
ただ、あくまでそれは現代の自動車産業であって、EV車の市場とは全く違うことも理解する必要がある。
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植田 振一郎 Twitter
株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。