見出し画像

【遊技機開発】リテイクに対する考え方

サウンドクリエーターとして避けて通れないのが、リテイクです。リテイクと一口に言っても理由は様々ですが、今までの経験で実際にあった例としては

例1)制作物としてのクオリティーに達していない

これは業界のクリエーターならクリアしておきたい部分ですが、経験を積んだ方でも、クライアント側の担当者の好みと納品物におけるサウンドの方向性の乖離で起こることもあります。実際にあったフィードバックの表現としては、

・音が細い、弱い

・音が抜けて来ない

・中低域が無い(=低い音と高い音しかない、いわゆるドンシャリ)

・音がドライorウェット過ぎる

と言ったような内容です。遊技機のサウンドが鳴る場所というのは、様々なメーカーのパチンコ・スロットの音が同時に鳴り続ける環境ですので、(意図しない理由で)音そのものが細くて聞こえづらいことは避けなければなりません。初心者からキャリアスタートした僕自身も、最初は非常に苦しみました…。

例2)遊技機としての音付けが出来ていない

こちらもよくある事例なのですが、遊技機開発におけるサウンドの制作に求められる一番大事な部分がココです。当然ですが、僕らクリエーターが作ったサウンドはパチンコ・スロットをする方々へ届けるものです。遊んでいる方がどれだけドキドキできるか、気持ちよくなれるか、を演出していく事が重要なんですね。この項に関しては改めて掘り下げて記事にしていければと思います。

例3)ブラッシュアップ

こちらは前向きなリテイク、というべきでしょうか(笑)サウンドのみならず、映像、ランプ、プログラム、役物がある程度のレベルまで実装されたタイミングで、いわゆる試打とよばれる実機テストが行われます。今まで制作した様々な演出がここでようやく一つに繋がって確認が行われます。具体例でいうと、

・○○演出から▲▲リーチに入った時の契機を強化してほしい

・□□演出のボイスが聞こえづらいので調整してほしい

・○○演出に派手なシンセ要素を付加してほしい

・BGMのボリュームを上げてほしい

などです。

言うまでもありませんが、試打というのは実際の機械(呼び方としては筐体という方がよりポピュラーですが)で行われますので、机上で良いと思えるミキシングであったとしても、実機場での鳴りを踏まえて調整を行なっていくことになります。

例4)クライアント側で発言権を持った人の意向

これは非常に辛いシチュエーションなのですが、先述の試打を経て、先方の企画担当者や、お偉いさんによる一言で制作してきた音の方向性がひっくり返される事があります。先方のサウンド担当者と企画担当者の間でうまく意思疎通が出来ていない場合などに起こりがちです。特にプロジェクト後半でこれが起こると、開発のスケジュールに影響を及ぼす場合もありますので注意が必要です。相手の社内の状況までコントロールすることは不可能ですが、常日頃からクライアント(自分がやり取りを行う担当者の先にいる誰かをも含めた)の意向とすれ違いが起きないように、電話やメールで細めに連絡をしたり、聞き取った要望を備忘録としてメールで送っておく、などの動きを心がけると良いと思います。

例5)担当者の気まぐれ

えっ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、先方の担当者の経験が浅かったり、(忙しい、或いは方向性が定まっていないことを理由に)指示が曖昧な場合にありがちです。的外れなものを納品してもお互い得はありませんので、どういうものを求めているのか、電話やメールで細かく聞き取りをするのが良いと思います。BGMであれば、事前にリファレンスを複数用意して聞いてもらったり、SEであれば過去に制作したいくつかのデータを聞いてもらうなどして最短距離でOKテイクへと辿り着ける工夫をする事が大切です。

リテイクに対する考え方

BGM/SEに関わらず、この業界の性質上、「修正」という名の「新規制作」が多いのが事実です。但し、こちらの制作物に一定のクオリティーが担保できれば、基本的により良いサウンドを目指す前向きな作業ですから、必要以上に落ち込むことはないと思います。

注意しなければならない点としては、特にBGMにおけるリテイクは方向性を間違えると修正に費やす時間を多く要してしまいますので、電話などでの聞き取りで先方が求めている方向性(ジャンル、テンポ感など)を汲み取れるように働きかける、或いはたたき台として8小節程度(特に決まりがあるわけではありません)作成した段階で認識に誤りがないか確認してもらう、などの先を見据えた動きが必要になってきます。

クライアントと共に一つの作品を作っていく、という意識を持って作業を進めていく事が心構えとして大切なのかな、と思います。

それでは今日はこの辺で…。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?