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2021年。そして、学生。

 とにかく四六時中、研究室で机に向かっている。一週間の半分は徹夜をする。食事をする暇も惜しむから、仕事をしながら飲み食いする。食堂へ行くのは、下の者、つまり、学生か低学年の院生ばかり。上の者ほど、朝が早く夜が遅い。年の順に出勤し、若い順に帰っていくのだ。土日も祝日もない。盆も正月もない。そういった休日は、「雑入力」がないから、ゆっくり研究ができる、とみんなが楽しみにしている。
 何がこんなに彼らを急き立てるのだろう?
 どうしてここまで誠実になれるのだろう?
 僕も最初はわからなかった。大学院の修士課程くらいでは、その香りに接する程度だ。全然体感できないだろう。そういうことがあとになってよくわかる。

森博嗣. 喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima. 講談社, 2013.

はじめに

2021年は,人生における連続学生期間のうち,最後の『1年という期間』であった.
そして,2022年4月から,社会人と呼ばれる生物に変態することになる.
幸い,こんな自分を雇ってくれるトコロがあり,今年もおまんまを食っていきていけるようである.ありがたい.
そんな変化を下拵えした2021年をここにまとめようと思う.

時系列なまとめ

まずは時系列に2021年を追懐しようと思う.

  • 1月:就活準備をしていた

  • 2-3月:就活に本腰を入れて取り掛かっていた

  • 4月:上旬に就活を終えた

  • 5月:バイトを辞めた.専業学生となる

  • 6-7月:覚えていない

  • 8月:下旬にISUCON 11に参加した

  • 9月:大学院の中間発表会.進捗がない.

  • 10-11月:覚えてない

  • 12月:修論の結論がなくて焦る.

1月は就活準備をしていた.ESとか履歴書とかを書いては,「自分がやりたいことはなんだろう?」とぼんやり考えていた.
2-3月は,1月までに蒔いた種を回収していた.結局「自分がやりたいこと」はよくわからなかったので,「自分がしたくないこと」を考えて,あとの舵取りは,この時の技術的興味で判断することにした.
そんなこんなで,2社から内定を頂いたのが4月(と3月下旬).
そして転機の5月,バイトを辞めた.
これはブログに書いたので詳細はそちらを見てもらいたいが,2020の12月ぐらいから考えていて,契約もあり5月のタイミングで退職することになった.
6-7月はあまり覚えていないが,8月に開催されたISUCON 11に出場するために勉強したり,過去問を解いていた.
ちなみに予選落ちしました.
9月,どこの大学院もあるものと思いこんでいるが,修士課程における研究の中間発表があった.自分でも思っていたが「早く実装すべきだ」というアドバイスを頂いた.尤も,実際に実装するのは自らの能力不足のせいでもっとあとになるのだが.
10-11月は,多分研究をしていたと思う.でも努力と能力が足りなかった.
たぶんすこし病んでいたと思う.
12 月は,修士論文というリミットが明確に感じられ,特に下旬から明くる年の1月前半は体力的にも精神的にもきつかった.

事項的なまとめ

ここからは,去年の「去年のまとめ」で目標にしていたことがらについてことしはどうだったか振り返ってみようと思う.

  • 内定を得る

  • 研究発表をやる

  • コンテナ技術のあたりの勉強

  • ブログシステム書く

  • Apple Silicon Macを買う

さて,今思うに挑戦的なことをやろうなどと去年は思っていなかったようである.たぶん,就活というイベントが脳を支配していたのだと思う.
実績でいうと,内定は得たし,研究発表は1回した.Apple Silicon Mac (M1 MBA)は買った.逆に,コンテナ技術あたりの勉強はそんなにしていないし,ブログシステムは書く暇がなかった.

ここからしばらくは,自分の後輩ぐらいに意味のある情報のため,該当しない人は読み飛ばしてもらって構わない.
--------------------ここから--------------------
M1 MBA を買ったお金について少し書いておこう.
この出処は奨学金である.
R大学大学院では,修士課程に2回の大きな給付型奨学金を受け取れる機会がある.もちろん,成績優秀者の定義に当てはまる人だけがもらえるもので,1回目が入学時の入試成績によるもの.2回目が修士1回生の研究実績によるものである.残念なことに1回目,自分は成績優秀者の域ではなかった.しかし,2回目は向上心を持たず,努力もしなかったにもかかわらず,成績優秀者として扱われた.これにはカラクリがある.
1回目の奨学金は,入試を受ければ自動的に申し込まれる制度だったと思う.少なくとも手続きがかなり簡単だったはずだ.しかし,2回目の奨学金は指導教員の推薦文や,研究の説明などメンドクサイ書類を書かなくてはならない.そのうえ,2回目の奨学金申し込み時期は修士2回生の4月であり,この時期,大抵の院生は研究が(場合によっては就活も)行き詰まり,「自分はダメだ」と思い込んで申込みをしない.従って,申請者の母数がかなり減る.また,この奨学金は在学者数に対してn%という形で人数が決まるため,応募人数が少なければ少ないほど確率が100%に近づく.つまり,自分が考えるに,「出せば通る」奨学金である.
修士2回生になったら忘れず出しておけ.
--------------------ここまで--------------------

コンテナ技術の勉強は,イラストでわかるDockerとKubernetesを読んだに過ぎないが,技術周辺は継続的にウォッチしている.去年は,youkiだったりDocker Desktopの有料化など大きなイベントがあったように思える.
ブログシステムを書くというのは,ページがもっさりなのと,執筆体験がよくないから自作してしまおうということだったと思う.どの技術を採用するかが悩ましいところであるが,フロントエンドは流行り廃りのスパンが短いため,いっそJavaScriptを排した古き良きサイトにすべきではないかとすら思っている.npm auditまで見てられないのだ.

まとめのまとめと目標

この1年間を振り返って思うことは,自分の無力さ・無能さである.
それは,研究成果,課外活動,生活態度,さまざまな物事に対する覚悟,などなど,なにをとっても自分はダメだなぁと思うことが多かったのを思い出したからだ.
そして,そのたびに病んだり(Twitterで吐き散らしてメンゴ☆)下を見てはインスタントな安寧に浸っていた.たぶん,それらは改善されないし,すぐには治らないと思う.
でも,やり直しはできない.時間は空間と同様に伸び縮みするだけである.
自分は自分の出せる推力で進むしかない.
その推力で到達すべき目標を定めよう.

  • 英語:英語版SiriでSiriができることすべてを利用できるぐらいの会話力をつける(つまり,頭で翻訳しない)

  • 技術:公用語が英語なOSSに1回以上貢献する

  • 生活:タイマなしのリズムを形成する

ガンバリマス.

学生生活の総括

さいごに,学生生活の終わりとしてまとめてみようと思う.
途中で少し茶化して書いたが,自分は自分が思い,そして出来る限り学業に対して真摯に取り組んだつもりだ.
結果はとても良いと言えたものではなかったかもしれない.だけれども,この2年間歩んできた道程は,無益なものだったとは思わない.
すくなくとも,研究というものの微香は感じられ,それが人生における思考の羅針盤になることは相違ない.
しかし,これは2年経ったから思えることである.
2年前にこれを思い,過ごしてきたわけではない.
だから,本当の最後に,2年間自分を突き動かしてきた啓示を引用して締めようと思う.

 投資と聞いて、資格を取るための勉強なんかを連想する人も多いだろう。自分に投資する、という謳い文句も実際に使われている。この資格というのは、僕はあまり強くはおすすめしない。
(中略)
 そもそも、就職をするまえに、とても大きな投資がある。それは「学業」だ。
(中略)
もし、経済的に許すならば、自分に投資する、すなわち学業に専念する(という振りをする)方を選ぶのが有利だ、と僕は考えている。
 これは、やはりこの「学業に身を置く時間」というものの重みが、一生付き纏うからである。人生のどこかで、ほんの少しかもしれないが、たしかに効いてくる。学生時代というものは、あとになって「もっと学んでおくべきだった」と振り返ることはあっても、「早く辞めて働けばよかったな」とは思わない。そういう存在なのである。

森博嗣. 「やりがいのある仕事」という幻想. 朝日新聞出版, 2013.

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