アイドル彼女は素っ気なくて甘くて 第14話
中2の冬、
私は「乃木坂46」のライブを
会場で見ていた。
終演後、
アリーナから出てゲート前で
帰りのバスの時間を検索していた。
すると、その時の私にとって、
思いもよらない出会いがあった。
??:あなた、可愛いじゃない。
蓮加:えっ?…わ、私….ですか?
私に話しかけてきたのは、
スーツで身を包み
サングラスをかける女性だった。
??:あなた「アイドル」になってみる?
ーーーーーー
私は女性に、
ある楽屋に連れてこられた。
蓮加:あ、あの…話がよく分からないんですが…
女性はサングラスを外し、
喋り出した。
??:私は"白石麻衣"。聞いたことある?
蓮加:えっ…!?…白石さん…?
目の前の女性は、
かの"白石麻衣"さんだった。
麻衣:そ、元乃木坂メンバー。あなた可愛いし、良いアイドルになりそうね。
蓮加:そんなこと…わ、わ、私…
麻衣:自分に自信がない?
…
…
…何故分かったのだろうか。
麻衣:そんなの無くたって良い。そんな自分を変えたいと思うなら、アイドルになるのもアリって話。
ずっと憧れだった「アイドル」。
私が求められてる存在なら、
断る理由はなかった。
これから自分が成長する道を
見つけていけば良い。
そう思えた。
麻衣:私、あんまり待つの好きじゃないから、興味あったらこの連絡先n…
蓮加:…私、やりたいです。
そんな言葉が、
自分の口から漏れていた。
ーーーーーー
1週間後、
私は"乃木坂学園中等部芸能科"
に転校。
アイドルとしての活動を始めた。
何もかもが新しいことで、
苦しい毎日だった。
何度も何度も挫けそうになった。
でも、根暗で引っ込み思案で、
周りの目を気にして
自分の感情を犠牲にしてしまう、
自分を変えるために、
全力でアイドルを目指した。
〜〜〜〜〜〜
ーーーーーー
蓮加:だから今でも、みんなの前でアイドルできてるかなって心配になると、自分を押し殺しちゃって、それで…それで…
次の言葉に詰まっている
岩本さんの手は震えている。
…俺はその手を取った。
蓮加:…?
◯◯:辛いなら、もう話さなくて良いよ?その気持ちは痛いほど分かる。ありがとう、話してくれて。
蓮加:松尾くん…
◯◯:これからは、お互いの"ありのまま"を認め合えるようになろう?…俺たちなりの答えを、見つけていけば良いと思うんだ。
俺は心のままに、
言葉をつなげた。
◯◯:岩本さんとならそれができる、そう感じてる。
何でこんなことが言えたのか。
初めて会った時から、
他の人とは違うような
感じはしていたけど、
"あれ以来"、
ここまで心を許せたのは
「彼女」が初めてだ。
多分、
俺は、
…
…
…岩本さんのことが
"好き"なんだろうな。
◯◯:支え合おう、これから。
蓮加:…うん。
岩本さんが、俺の手を
握り返してくれた気がした。
岩本さんはしばらくの間
俺の手を握りながら俯いていたが、
何かを決心したように、
俺の目を真っ直ぐと見つめた。
蓮加:松尾くん、
◯◯:ん?
蓮加:私、決めた。
◯◯:何を?
蓮加:私、松尾くんの本当の「彼女」になる!
◯◯:えっ…!?
2人の間に沈黙が流れた。
ーーーーーー
…
…
◯◯:「彼女」?
蓮加:うん、私も松尾くんとなら、お互いの"ありのまま"でいられると思う。だから…「彼女」になれるように頑張る。
◯◯:う、うん…
蓮加:松尾くんにも、私の「彼氏」になって欲しい。
◯◯:なっ…//
蓮加:さっきは言ってくれたように、松尾くんには"本当"の私を知って欲しい。
◯◯:あ〜…えっと、
蓮加:だから、松尾くんもこれから"本当"のあなたを教えて?
屈託のない
本当の"笑顔"。
頭の全神経がちぎれそうなほど、
俺の頭は思考をしようとしなかった。
蓮加:どう…かな…?
でも、それが岩本さんの
本心だとしたら、
俺は素直に嬉しかった。
支え合える。
"本当"の俺を
受け止めてくれた気がした。
なら、
…俺が"本当"の岩本さんを
受け止める番。
◯◯:もちろんだよ、俺で良ければ。
蓮加:何か…恥ずかしいね…
少し複雑で曖昧だけど、
「彼氏」と「彼女」
"抽選"で強引に結ばれた関係。
今は、ちゃんとそう思える。
これは
"運命"だって。
ーーーーーー
続く。
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