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発達障がいをもつ子は、登園しぶりが起きやすい?

新学期、新学年、どんな子どもでも「登園しぶり」「登校しぶり」は起こる可能性があります。特に、発達障がいをもつ子どもの多くは集団生活で困り感を抱えやすいため、登園しぶりにつながるリスクが通常よりも高いといえるかもしれません。今回は、発達障がいの子の行きしぶり行為に焦点をあて、対策を考えていきます。

この記事は、小児科医の石川道子先生と私言語聴覚士の三輪で行っている「発達障がいの集団あるある」と題したInstagramライブをまとめているものです。ぜひ、Instagramも合わせてご覧ください。

ライブリンクはこちら⇩


子どもの登園しぶり、なぜ起こる?

多くの子どもは、連休や長期休みでは、毎日園に通う生活に比べて、生活リズムが乱れやすくなります。大人もそうですが、リズムがいつもと異なる生活をすると、元の生活のリズムに急に切り替えることが難しく、しんどさを感じやすくなります。これが、子どもが登園しぶりをする、大きな理由の1つです。

ご家庭によっては、長期休み期間に親御さんが仕事なので、朝から学童にいくという生活をしている子もいます。そういった子は、案外学校が始まってからも長期休みと生活リズムが変わらないので、登校しぶりが出にくい傾向にあるように感じます。親御さんとしては、「毎日楽しいことをさせてあげられなくて悪いな」と思うようですが、休みの期間に毎日楽しい所に行ったり、起床就寝時間がまちまちになると、それはそれで、元の生活に戻った時に辛さがでることもあるのです。

発達障がいをもつ子は、登園しぶりが出やすい?

発達障がいの特性を持っている子どもには、「変化に弱いタイプの子」が多く、その中には「生活のリズムが付きにくい子」も混ざっています。そういった性質があると、新学期などの切替のタイミングで、人よりも負担が大きくなりやすく、登園しぶりに繋がりやすくなります。

また、発達障がいを持つ子どもは、年齢が低い時期は同年代の子と好みや興味が違う子が多いので、あまり同年代の子が多い場所に行きたいと思わない子もいるようです。集団活動に楽しさを覚えにくい子は、家で1人でもくもくと遊んでたり、親御さんに自分のペースに合わせてもらって遊べる方が、よほど楽しいと思うのでしょう。

そして、何より外の世界は、発達障がいの子に合わせた仕様ではなく、標準的な発達の子に合わせた環境なので、どうしても様々な場面で苦手さが出やすく、集団生活に戻りたくない・・・と思うのかもしれません。

発達障がいを持つ子への、登園しぶりの注意点

登園しぶりをいい機会と捉えましょうというのは極論ですが、子どもが「嫌だったけど登園してみたら、最初に思ったほど大変じゃなかった」「これなら大丈夫かも」という感覚を掴む機会にできれば望ましいと思います。

この世界で生きていく限り、どの世界にも休みはあり、日本にいる限りは連休も避けられないので、少しずつ日頃の生活と休みの切り替えに慣れていく練習が、幼児期からできると良いと思います。

そのためには、子どもは様々な理由で登園渋りをするものの、大人が「嫌だったら行かなくてもいいよ」とあまりに簡単に言わないことです。特に、発達障がいを持つお子さんの中には、1回要望が通ると次も通るはずだ、思い込むタイプの子がいるので、「行かなくてもいいよ」をすぐに発動することはリスクがあるのです。(もちろん、嫌と表明できることも、その気持ちを大人が受け取っていくことも、理由を詳しく聞くことも、成長にとっては大切なやりとりであるという前提がありますが)

大人としては、行かなくてもいいよをすぐに発動するというよりは、「どういう場合は休めて、どういう場合は休めないのか」という線引きをしっかり示すことが大事になってきます。例えば、「嫌だと表現した→園に行かない」というセットはNGだけど、「調子が悪い→園に行かない」はOKだということを示します。具体的には、「行きたくないのは調子が悪いんだね。調子が悪いんならお医者さんに見てもらおうね。」といって、医療機関に行く流れをとっても良いです。本当に調子が悪い場合もあると思いますが、病院の先生が「体は大丈夫だよ」と言ってくれたら「このまま園に行こうね」と促していきます。朝「お熱をはかろうね」の流れでも良いと思います。

案外、外出することで気に変わることも大いにあります。

よく見落とされる、登園しぶりの理由

発達障がいをもつ子の中には、「朝に準備ができるほど元気じゃない」というケースが多く見られます。睡眠障害を併発するケースも多いので、朝の目覚めに時間がかかったり、朝は馬力がでずゆっくり準備することがあります。そのような時に、「軽く行きたくないと伝えてみたら、休んでよくなった」という経験をすると、繰り返し行きたくないと言い出すかもしれません。

朝のように子どもが絶好調ではない時には、大人のサポート量を増やして着替えや食事を済ませるのがおすすめです。

親御さんとしては、「着替える力があるのだから」「練習しないと生活動作が身につかないじゃない」という気持ちはあると思いますが、朝はたくさん手伝ってとにもかくにも外に出れたらOK!としてしまっても良いと思います。

登園しぶりに具体的な理由がある場合の対応

子どもによって、登園しぶりに具体的な理由があることがあります。

たとえば、最後の記憶が残りやすいタイプの子だと、1日ずっと楽しかったのに帰り際に何か嫌なことがあると、その記憶を引きずって「行きたくない」と言い出すこともあります。疲れてきたタイミングで起きたことは記憶に残りやすいので、事実が誇張されて嫌な思い出になるのです。

そのような思い込みを軽減させていくには、登園して毎回嫌なことばかりではなかったという体験で、記憶を塗り替えていくしかありません。記憶の塗り替えには、それなりに日にちを重ねる必要があるのです。なぜなら、毎日の生活の中で、本人が嫌だと思っていることが起こらない生活に遭遇する必要があるためです。

具体的に嫌なことがある子は、園と親御さんが話し合って、しばらくは該当する嫌な出来事が起こらないように配慮して、とにかく登園できる流れを作り「来てみたら楽しいことがあった」という経験につなげたいです。

何が何でも登園が嫌な場合の対応

とにかく、園の敷居をまたぐことが嫌で嫌でたまらない!というように、園に行きたくない気持ちがとても強い場合もあると思います。子どももまだ説明する力がそこまで高くない場合も多いので、理由も分からず途方にくれることがあると思います。

そのような時は、親子で遊べる場所など、どこでも良いので朝から出掛ける方法がおすすめです。ポイントは、「朝の支度をして、外出する」という生活リズムを作る行為、ゆくゆく園や学校に通う上で必要な行為は、毎回経るということです。

毎日園以外の楽しいものを準備すると、そればかりになり、余計に登園から遠のくというリスクは0ではありません。ただ、毎日確実に外に出ること自体が難しくなっている場合には、行きたい場所を目指して家から出ることが優先課題です。毎日、外に行けるようになったら、「ここに毎日来るのは飽きるから、園にも行こうか」のような形で、スモールステップを踏んでいくと良いと思います。この曜日だけ行く、午前だけ行くのような形でも良いです。

園と保護者での情報共有

登園時、親御さんは「今日は調子が悪そうです、ここに連れてくるのかなりサポートが必要でした」ということは、園側に共有しても良いと思います。

園側としては、その報告を受けて、普段嫌がってる活動や苦手な活動はサポートを多めにしてあげると良いと思います。また、行事ごとは、子どもの負担も大きかったりするので、また別の配慮が必要です(別回のインスタライブで取り上げます)。

また、登園の時はすごく渋ったのに、お迎えの時には「楽しく過ごせて、嫌がってませんでしたよ。」と園の先生から報告を受けることもあると思います。それでも、毎朝子どもが「行きたくない」ということは、あると想定していると良いでしょう。大人から「明日はちゃんと泣かなのよ」と言われると、子どもとしては行き場がなくなってしまうので、「頑張って行けたね」「楽しくて良かったね」と毎日の終わりを迎えられると良いと思います。


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