弊社に残業代未払いを主張する人が弁護士を連れて現れた話。

さてみなさんこんにちは。しのみやと申します。
社会人生活も20年を超えました。
これは私が社内インフラをやっていたときの話です。

みなさんは、不倫カップルの片方が「実はセクハラだった」と主張して暴れるのを見たことがありますか?
私はあります。
「彼氏が奥さんと別れてくれない」って就業中に裏垢で愚痴ってたくせに何を言ってるんだと思いました。
というか言いました。
その結果、女が投げた万年筆のせいで汚れたカットソーの恨みをたぶん死ぬまで忘れません。お気に入りだったのに。
今回の話はそれとはあまり関係がありませんが、昨今のジャニーズ性加害問題を見ていて吐き出したくなった、会社のトラブルで調査をしたときのお話です。

清楚系女子、襲来。

私が健康診断で会社を休んでいたときに事件は起こりました。
同僚から
「今、○○事業部にいたA子さんが会社に弁護士連れてきて、残業代未払いについて訴訟を起こすって言ってて総務がパニック」
というメールが来たのです。

A子さんというのは中途で弊社に入って1年半くらいで辞めた女性で、技術者としては仕事のできる人でした。
おとなしそうな見た目で、声も小さくって、小動物風の印象を与える人です。

彼女はこういうことを主張したそうです。
・会社にサービス残業を強要された。
・タイムカードを切ってから残って作業をしていた。
・PCの稼働時間についての履歴を証拠として残してある。
・私は上手に主張できないタイプだし怖いから弁護士を連れてきた。

ふむふむ。そういうことはままありますね。
私は氷河期時代の生き残りなので、そういう方法で労働時間を抑制して帳尻を合わせる方法を何度も目撃しています。
自社でも経験ありますし、客先でも頭下げられて協力したことはあります。
彼女の上司だった人はゴリゴリの旧世代だったので、そういうことをやらかした可能性はあります。
そしてそういう時の労働者側の対策の定番は昔から、「PCの稼働時間を証拠として提示する」なんですね。

しかしすんなり飲み込むわけにもいかないので、経営陣より「彼女がサービス残業をしていない証明が出来ないか」という
無理難題が言い渡されました。

悪魔の証明。

していないことを証明するのってとても難しいですよね。
まずは彼女のタイムカード履歴と、彼女が提示した証拠を比較して30分以上乖離がある日を探すことから始まりました。
期間はおよそ1年にわたり、平均して週2日は3時間程度サービス残業をしていることがわかりました。
しかも彼女の座席は業務の都合上他の人から離れた島の、ハードウェアに囲まれた中にあるため見通しが悪く、彼女が働いているかどうかは通りすがりの人からはわかりにくい構造になっています。
そのため、社内の目撃証言を集めることもできません。

経営陣も彼女の弱弱しい風情に強く出れなかったのと、あと弁護士が来て面倒そうなので解決金を支払う方向に傾きつつありました。

コリドー街の酔っぱらい。

ところがある日付を見たとき、私は昔のことを思い出しました。
ある日私は会社帰りに定時ダッシュして観劇に行きました。
そしてその帰りにコリドー街のほうを歩いていて、彼女によく似た人を見かけていたのです。
べろべろに酔って男の子にしがみついていました。
東京宝塚劇場の終演時間と、彼女のPCシャットダウン時間から逆算すると、彼女がコリドー街についてから私に目撃されるまでの時間は5分くらいしかありません。たとえタクシーに乗れたとしても。

コリドー街でナンパ待ちをしたこともありませんしお酒も飲めないので正確なことは言えませんが、世の中の人は5分でべろべろに酔って男をひっかけられるものでしょうか?

何かシャットダウン時間をごまかすツールを使っていたのかもしれない。
でももうPCは潰して別の担当者に渡していたので、機器からそれを証明することはできません。

トイレに行かない生活ってできる?

弊社は出退勤の仕組みとは別に、Felicaを使った入退室管理システムを導入していました。
退室時は利用する必要はありませんが、入室時は必ずタッチして解錠する必要があります。
そしてトイレは施錠されたドアの外側のスペースにありました。
私は彼女の一日のFelica利用状況について統計を取り始めました。

我ながら気持ち悪いですねぇ。

すると、定時内や正常な残業の時は平均して90分に一回Felicaを利用しているのに、彼女がサービス残業だと主張している時間帯は
Felicaを使っていないことがわかりました。
私はその結果を一覧にしたうえで、
「私だったら一回もトイレに行かずに残業なんかやってらんないですけどね。」
と経営陣に伝えました。

そのあとどうなった?

経営陣は彼女の弁護士との会談で、資料をもとにそこを詰問したそうです。
彼女は「だったら裁判してやる!」と捨て台詞を吐いたものの、その後今に至るまで音沙汰はありません。

そしてこの話を同業者に飲みの席で話したところ、別の会社でも彼女は同じことをやっていたらしいのです。

手口としては、起動したら3時間+ランダム分の時間をおいてPCをシャットダウンするバッチを作成し、人が少なくて残業していないことがバレない日を見計らってそれを起動し、PCのモニターだけ消灯して帰宅するというシンプルなものでした。
ただ彼女が巧妙なのは、次の会社に就職し終わってから弁護士を連れてきたところでした。
いきなり弁護士をつけてビビらせたり、転職活動が終わってから動き出すことで前職調査の電話でのバレを回避したりPCが残っていない時期を見計らっていたりなどうまいことやっていますよね。

弊社でもFelicaのログは3か月分しか残していなかったので、もし彼女が来たのが退社して3か月たってからだったら危なかったです。
実際同業他社では解決金を払ってしまったところもあったとか。

今思う教訓。

弊社が一切サビ残をさせてなかったとは言いません。あの当時、そういう会社は結構あったと思います。
だからといってサビ残を訴えてくる人がすべて本当のことを言っているわけではなく、悪意がある人だって当然いるんですよね。
だから悪意のある人とない人を見分けることって大事だし、証明には時間がかかります。
昔の記録だったらなおのこと。

なので訴えてくる人の信ぴょう性は、十二分に時間をとって確認しないといけないですよね。
あともしこういう事例に対して恐怖心がある経営者の方は、インターコム社のMaLionという製品の導入をお勧めします。
(他社さんのものですが、いい製品ですよ。)
https://www.intercom.co.jp/malion/

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