辺境の話ばかりしてても一人じゃないiOSDC 2023
3日間、フルで現地参加したのでレポです。
話したこと
今年は運良くCfPが採択されたので、「watchOS開発最前線」というタイトルで20分話しました。これはもうなんかタイトル勝ちだったな。
参加歴・応募歴で言うと、こんな感じです。
2019: 初参加
2020: 初採択
2021: ネタがなくて出さず
2022: SwiftUIネタで不採択
20分と40分で内容コピペしたら機械的にハネられるの知らなかった
2023: 4つCfP送って1つ採択
watchOSネタ話したいと思ってたけど、スター数的に選ばれるとしたらSwift Concurrencyネタだろうと思ってたら、逆にwatchOSだった
こう見てみると、意外と打率いいかもしれませんね。
話したスライドはこちら。watchOSアプリの個人開発やったときの知見をシェアとか言うと聞こえがいいですが、苦労話を聞いて欲しかっただけと言うのが本音だったりもします。
登壇の反応
前述の通り、僕はwatchOS開発を本業にしている人間ではないので、「その程度の知識で壇上に立つな!どけ!俺が本当のwatchOS開発を教えてやる」みたいな展開にならないか不安でした。
結論から言うと、杞憂でした。
watchOS開発のスペシャリストなどいない、という事実があるのかもしれません。質疑応答の対策も、どんな質問が来るかあまりにも思い浮かばなくて、出たとこ勝負で行こうと思っていたらノー質問でした。悲しくもあり、安心でもあり。
スライドのレベル感は、「iOS開発には経験あるけど、watchOS開発はほぼ未経験、でも興味はあるよってぐらいの人が聞いて、楽しくてためになる」ぐらいに調整したので、たぶんちょうどよかった気がします。
途中、watchOS上のTabViewのUIについてクイズ出してみたんですが、皆さん開発中の僕と同じように困惑していて、良かったです。
ちなみにこの登壇のテーマとなったカウンターアプリWristCounterですが、300円の有料アプリです。
登壇前は4ダウンロードだったのですが、この登壇によって4ダウンロードになりました。
(この4ダウンロードっていう話も登壇中入れたかったんですが、宣伝要素が2つ入ると弱くなるので、削りました……悔しい)
辺境の話ばかりしてても一人じゃないiOSDC
watchOS開発の話は、「まあどうせニッチなテーマだからな」という気持ちがあって、狭い会場に10人(内何名か知り合いの応援)ぐらいの規模を想像してたんですが、実際は結構広い会場がApple Watchつけた人で満席に……いや人はまばらでしたが、広い会場で思ったより人がいたのは事実です。
思ったより多くの人に聞いてもらえて、感謝です。
2020年にApple Pencil対応(要はPencilKit)の話をしたんですが、このトークも当時は誰が聞いてんねんと思いながら話してた(特にオンライン開催で参加者見えなかった)んですが、最近になって、実は聞いてたという話を何人かからされて、すごく嬉しかったです。
PencilKitにせよwatchOSにせよ、中心地じゃない、辺境の話ばっかりしてるなあと思ってたんですが、それでもiOSDCぐらいの規模になると、同じテーマに挑んでる人がちょいちょいいて、なんかそういうの絆っぽくていいなって思いました。
反省
プレゼン自体はまああんなもんだとして、WristCounterというアプリ自体が弱かったんで、そこが残念でした。もっと「オッ!」となるようなアプリでプレゼンしたかったなあというのが正直なところ。
個人開発で一番重視してるのが、自分が欲しいと思ったアプリをつくるという点で、そこはできてるんですけど、次なんかつくるときはもっと強さがあったらいいなあ。
聞いたこと
今年、なんかセッション面白かった気がします。なんででしょうね。テーマが上手く散らばって、各時間帯で1つは気になるトークがある状態が続いてた気がします。
個人的に、硬派な大学教授とかがたまにやる、「ずっと何言ってんのお前」状態が好きなんですよね。もちろんわかりやすくて面白いセッションも好きで、どっちかっていうと僕が登壇するときはそっちに寄せますが、聞く側だと違ったりします。
自分にとって何個かそういうセッションがあって、良かったなと思います。仕事の役に立つ有益情報を求めてると、そういうセッションはハズレなんだと思いますけど……なんだろうな……知的好奇心というか……こう……パッションというか……なんかさあ……技術を純粋に楽しむ心根がさあ……
ふりかえってみると、なんだかんだで、このxR技術の話が印象残ってるかなあ。
何かの役に立つとかはたぶんないと思ってますが、他で聞けない話聞いたな〜という感じでした。満足はしましたけど、2時間はさすがに長尺でしたね。
あと、家帰ってほこりかぶってるOculus Quest 2触ろうかなって思ったんですが、ちょっとフィードバックとnote書かなきゃいけなかったので未だに触ってません。
懸念1: watchOS開発<<<PencilKitかも
登壇して、watchOS開発誰もやってないんじゃないか?と改めて心配になりました。
iOS開発者なら、Apple Watch持ってる人は多いと思いますが、watchOS開発まで行ってる人はそんなに多くない印象は元々ありました。
Apple Watch出始めのときは、ハード自体がお察しで、ハードが改善しはじめて評価上がってきたくらいは、開発環境が特殊すぎて入りづらかったというのがハードルだったと思います。
僕はこの辺の時期知らないんですが、watchOS 6あたりが分岐点だったぽいです。2019年、こんなセッションもありました。
2023年現在、やってみた感想としては、watchOS開発自体はめちゃくちゃやりやすくなってます。なのに、なぜこんなに盛り上がらないのでしょうか?
2つ課題があると思ってます。
1つ目はバッテリー。こちらのセッション聞いてても思いましたが、Apple Watchでやらせたい処理に対して、バッテリーが耐えられないんですよね。
Apple Watchを装着している人間の何らかの変化を継続的にモニタリングしたい、というのは、真っ先に出てくるニーズだと思うんですが、これをやるにはバッテリー性能が追いついてなく。そもそも普段使いでも一日使ってたらバッテリー切れるので、ワークアウト的に動き続けるアプリ稼働させると数時間の命になるんですよね。
2つ目の課題の方が深刻かもしれなくて、マネタイズの問題です。
watchOSアプリ、広告が入れられないので、マネタイズしたければ有料アプリにするしかなく、みなさん有料アプリってどれだけ買います?って話なんですよね。
ユーザーも、Apple Watchで欲しい機能って、純正アプリで事足りてる人がほとんどだと思うので、ニーズもない。
watchOS単体アプリのニーズは低いですが、メジャーなiOSアプリの補助機能として、watchOSアプリが欲しいという声はちょいちょい受けたことがあるので、ユースケースはあると思うんですが、なんかでもそういう感じ。
懸念2: iOS業界の高齢化問題
これは企業ブースで話したことでもあるんですが、iOS業界が高齢化してるなという印象があります。
別に若ければいい、という訳ではないんですが、新規が入ってこないジャンルというのは新陳代謝が止まって、絶対に停滞していく、というのはあるあるです。自分がいる業界が停滞してほしくないので、よくないなと思っています。
Twitterなどの観測範囲だと、iOS開発に興味持つ学生はそれなりに存在する気がしますが、多くが挫折してる気がします。ルーキーズLTやってる学生とかもいましたけど、スーパー学生過ぎて外れ値だと思った方がいい気がします。
ああうえさんの↑これとか、いい試みだなあと思いました。
iOS開発をやりはじめた当初、体系的に書かれた本が欲しいなあと思ったのをふと思い出しました。
「iOSアプリ開発をやりはじめてから、9ヶ月目」とのことなので、さすがにこの時期より格段にスキル向上しましたが、かわりにこのときの気持ちはだいぶ失われてしまったなあ。
iOSエンジニアとして職を得てから、ちゃんとカウントしてみたら4年たってることに気づいて、「iOS開発の教科書」みたいなやつを初学者に書いても許されるくらいにはなってきた気がするので、Zennの本で書いてみようかなとちょっとだけ思いました。
まとめ
やっぱビールあるといいなと思いました。ありがとうございました。
(了)