『失恋冷蔵庫』(#ショートショートnote杯)
#ショートショートnote杯
「もう、何なのよ一体‥‥」
玄関に入ってすぐかばんを放り出して
ぺたんと地べたに座り込む私
いつもあっちから言われて付き合い始めるのに
しばらく経つと言われるお決まりの言葉
「君は僕がいなくても生きていける」
どうしてわかってくれないの?
私だってもっと頼りたいよ
でもできない、それが私
ホントはもっと一緒にいたいって素直に言えばよかったのかな?
それも多分、言えない‥‥
自分の気持ちをストレートにぶつけるなんてなんだかかっこわるいから‥‥
しばらく私は動けない
どんなにショックでもお腹は減る
私は何も入ってないはずの冷蔵庫を開ける
すると見覚えのないタッパーが入っている
なんだっけ‥‥
あ、そうだ、ママだ
昨日まで勝手に人のうちに上がりこんで掃除や家事をしに来てたんだっけ
「これ食べて元気だして」
そう聞こえた気がして、いつのまにかそのタッパーの筑前煮を一口食べていた
ほほをつたう涙
冷蔵庫って冷たいはずなのに温かい
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