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公取の「新規株式公開(IPO)における公開価格設定プロセス等に 関する実態把握について」

概要

詳細

まとめ影響を与えた決定↓

成長戦略実行計画」(令和3年6月18日閣議決定)「緊急提言~未来を切り拓く『新しい資本主義』とその起動に向けて~」(令和3年11月8日新しい資本主義実現会議決定)

主幹事引受実績の上位5社で90.2%のシェアを占めている。

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1 公開価格の設定

⑴ 証券取引所への上場申請まで

主幹事の選定,平均初期収益率等の公表

新規上場会社がより自主性をもって自らの価値を適切に理解すると考える主幹事を選択できるよう,公開価格の設定に関して参考となる情報が一覧で公表されることが,競争政策上望ましい。
日本証券業協会において,平均初期収益率のほか,新規上場会社及び投資家にとってどの時点の株価を踏まえた平均収益率を公表することが適切か等を検討し,公表することが望まれる。

⑵ 想定発行価格の設定

①プレヒアリングの実施

日本証券業協会において,プレヒアリングが法令等で禁止されていないことを明確化し,周知した上で,証券会社は,機関投資家が対応可能であればプレヒアリングを行い,投資家の需要を踏まえた想定発行価格を設定することが,競争政策上望ましい。

②IPOディスカウントの実施方法

想定発行価格の設定において,IPOディスカウント等の名目で,考え方を説明することなく,合理的な根拠に基づかずに価格を低く設定することは独占禁止法上問題となるおそれがあり,証券会社は,新規上場会社と十分な協議を行い,新規上場会社が十分に納得した上で設定することが,競争政策上望ましい。

⑶ 仮条件の設定

①実効性のあるロードショーの実施

需要を正確に反映した仮条件の設定を可能にするため,証券会社は,機関投資家から適切なフィードバックを受け,新規上場会社の企業の価値や成長性を踏まえた実効性のあるロードショーとなるよう努めることが,競争政策上望ましい。機関投資家の同意を得た場合には,特に支障がない限り,ロードショーの結果について,機関投資家を顕名で新規上場会社に開示することにより,透明性を高めることが望まれる。

②ロードショーにおけるヒアリング先の希望の反映

証券会社は,新規上場会社がより自主性をもってロードショーにおけるヒアリング先を選択できるよう,新規上場会社に対し,当該新規上場会社のロードショーに関心のある機関投資家のリストを事前に提供することなどにより,ロードショーにおけるヒアリング先の候補となる機関投資家について説明を行うとともに,ロードショーにおけるヒアリング先について,新規上場会社と十分な協議を行い,新規上場会社が十分に納得した上で決定することが,競争政策上望ましい。

③仮条件価格帯の幅の大きさに係る基準の設定

需要を正確に反映した仮条件の設定を可能にするため,証券会社は,仮条件価格帯の幅の大きさについて,硬直的で狭い幅の基準を設けず,ロードショーの結果を踏まえ,より需要に見合った仮条件価格帯の幅を設定することが,競争政策上望ましい。


⑷ 公開価格の設定,上場

①仮条件の上限額を上回る公開価格の設定等・仮条件の訂正

金融庁及び日本証券業協会において,仮条件の上限額を上回る公開価格の設定等について,制度上の制約がないことを周知した上で,需要を適切に反映するため,証券会社は,ブックビルディングの結果を踏まえ,仮条件の上限額を上回る公開価格の設定等や,仮条件を訂正した上での公開価格の設定をより柔軟に行うことが,投資家の需要をより反映した公開価格による資金調達を行うことを可能とし,競争政策上望ましい。

②公開価格設定プロセスにおける個人投資家向け営業部門の関与

個人投資家向け営業部門の意向が反映されることが,公開価格設定プロセスに不当な影響を与え,実需を反映させずに割安に公開価格を設定し,その割安な株式を顧客に配分することのないよう,証券会社は,利益相反管理のための体制を講じることが求められているが,多数の案件において,初値を含む上場後の株価が公開価格と比較して著しく高いなど,利益相反管理体制の実効性が疑われる場合には,その体制の見直しを検討することが,競争政策上望ましい。


⑸ その他

①共同主幹事証券会社の追加又は主幹事の変更及びその阻害要因

証券会社は,IPOプロセスの早期の段階から新規上場会社との間で,将来設定する公開価格の水準について協議を行い,必要な資料を提供するなど,新規上場会社が十分に納得した上でIPOプロセスを進めることが,競争政策上望ましい。必要な情報共有を妨げない観点から,証券会社は,新規上場会社が希望する場合には,新規上場会社に対し上場申請業務に係る資料を提供するなど新規上場会社が共同主幹事証券会社の追加又は主幹事の変更をしやすいよう配慮するとともに,新規上場会社が希望する場合には,特段の支障がない限り,共同主幹事証券会社の追加を阻害しないことが望まれる。

②セカンドオピニオンの聴取

公開価格設定プロセスにおいて,新規上場会社がセカンドオピニオンの聴取を希望する場合には,証券会社は,これを阻害しないことが,競争政策上望ましい。証券会社は,実効的なセカンドオピニオンを聴取しやすい環境を整備する観点から,新規上場会社が希望する場合には,特段の支障がない限り,共同主幹事証券会社の追加を阻害しないことが望まれる。

③主幹事による高い引受割合の要請

特段の支障がない限り,主幹事は,新規上場会社に対して,高い引受割合を,新規上場会社の意に反して要請しないことが,競争政策上望ましい。

④主幹事引受けに係る参入障壁

東京証券取引所において,「取引参加者における上場適格性調査体制等に関する規則」に基づき対応が求められる具体的事項を明確化し,周知することにより,幅広い証券会社が主幹事を引き受けることができるようにすることが,競争政策上望ましい。

2 上場のための選択肢の多様性に係る実態

上場方式の多様化,ブックビルディング方式以外の方式の実施の可否等

証券会社から新規上場会社に対して他の選択肢に関する事前説明が十分に行われ,新規上場会社がどのような上場方式を採るか選択できるようになることが,競争政策上望ましい。新規上場会社等にとって選択肢となり得るよう,上場方式の選択肢を多様化する観点から,東京証券取引所及び日本証券業協会において,海外の類似の方式について調査するなど,入札方式の在り方について,今後検討することが望まれる。

3 IPOに係る取引慣行における独占禁止法上の論点

①特定の証券会社を主幹事とすることの要請及び他の証券会社の主幹事引受けに係る不当な妨害

証券会社の関係会社である銀行やベンチャーキャピタルの新規上場会社への影響力を行使する等して,当該証券会社が,他の証券会社が主幹事を引き受けることを不当に妨害しているとすれば,独占禁止法上問題となるおそれがある(取引妨害)。証券会社は,独占禁止法上問題とならないようにするため,関係会社である銀行やベンチャーキャピタルの新規上場会社への影響力を行使する等して,他の証券会社が主幹事を引き受けることを不当に妨害することがないように留意する必要があるとともに,主幹事業務に関する自らのサービス内容等を新規上場会社に対し適切に説明することにより,主幹事の引受けに向けて公正に競争することが望まれる。

②引受手数料の料率に関する証券会社間の情報交換等

引受手数料の料率について,証券会社間で取決めを行うようなことがあれば,独占禁止法上問題となる(不当な取引制限)。証券会社は,発行規模の大きさ等を踏まえ,案件に応じて弾力化するなど,引受手数料の料率やサービス内容について証券会社間の競争が促進されることが望まれる。

③交渉力の強い主幹事により,公開価格が一方的に設定されるなどして,新規上場会社に不当に不利益を与えること

優越的地位にある主幹事が,一方的に公開価格を設定するなどして主幹事業務の取引を実施し,新規上場会社に正常な商慣習
に照らして不当に不利益を与えたと認められる場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある(優越的地位の濫用)。
想定発行価格の設定において,IPOディスカウント等の名目で,考え方を説明することなく,合理的な根拠に基づかずに価格を低く設定することは独占禁止法上問題となるおそれがある。

証券会社は,独占禁止法上問題とならないようにするため,
①想定発行価格の設定において,新規上場会社と十分な協議を行い,新規上場会社が十分に納得した上で設定すること
②共同主幹事証券会社の追加又は主幹事の変更をしやすいよう配慮するとともに,新規上場会社が希望する場合には,特段の支障がない限り,共同主幹事証券会社の追加を阻害しないこと
③新規上場会社がセカンドオピニオンの聴取を希望する場合にはこれを阻害しないこと
④セカンドオピニオンの聴取先確保の観点から,特段の支障がない限り,新規上場会社に対して,高い引受割合を,新規上場会社の意に反して要請しないことなどによって,一方的に公開価格を設定することがないように留意する必要がある。

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