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May I help you
‘210228
最近よく思い出すことがある。
トロントに着いて間もない頃、近くの少しさびれたドラッグストアで、お菓子や日用品を買いに行った時。まだ、ホストマザーともうまく話せなくて、もうひとりいたハウスメイトの子には小馬鹿にされてた頃。
そのドラッグストアに行くのはもう何度目かで、自分の口に合うもの、どういうものを買えば良いか分かってきた。
プライベートブランドだから安くて、大量に入ってるウェーブカットの塩味のポテトチップス。キャップが小さくて薄くて、飲み終わった後簡単に潰せちゃうペットボトルの水。味がすぐなくなるガム。ピンク色のパッケージのあんまり甘くない、一粒ずつアルミを破って食べるタイプのガム。まとめ買いで安くなってたし、さらにそこから値引きされてた。手に抱えてレジに並んだ。
年老いたおばあさんが私が持ってきたものをスキャンしていく。ガムの番がやってきた。値引きシールが変なところに張り付いていて、読み込めないらしい。かなり手こずっている。
手伝いたいな、大丈夫かなと思った。こういう時なんて言えば良いんだ?分かった、教科書にもよく出てくるやつだ。でも使う場面合ってるか分かんないな。間違って伝わらなかったらどうしよう。しかも後ろに人並んでるから間違えたら恥ずかしいな。でも、おばあさん困ってる。もういいや、言ってみよう。
心臓が口から出そうなくらい緊張しながら言ってみた。多分声小さかったと思う。
その瞬間おばあさんが私の顔を見て、私が話したことを認識して、めっちゃ嬉しそうな顔した。手伝ってくれるの?ありがとう。
初めてお礼を言われた日だった。いつもお礼を言う側だった。
勇気を出して自分から話しかけた、最初の一歩を踏み出すのって大事だなと思った、って興奮して当時の日記に書いた。
ある特定の場面を、詳細に、唐突に、感情も添えて思い出すことがよくある。そういう話です。