日本企業の内部留保、過去最高555兆円!意味と課題を解説
日本企業の内部留保過去最高555兆円の意味と課題
2023年9月1日に厚生労働省が発表した「法人企業統計調査」によると、2022年度の日本企業の内部留保(利益剰余金)は、554兆7,777億円と、過去最高を更新しました。これは、2021年度の516兆4,750億円から12.9%増加した額です。
内部留保とは、企業がこれまでに得た利益を積み立てたものです。企業は、内部留保を新たな設備投資や研究開発、配当、株主還元などに充てることができます。
日本企業の内部留保が過去最高を更新したことは、日本経済にとってどのような意味を持つのでしょうか。また、どのような課題があるのでしょうか。
内部留保の増加の背景
日本企業の内部留保の増加には、いくつかの背景があります。
一つは、デフレの長期化によるものです。デフレ下では、企業は利益を積み立てることで、将来の不況に備えようとします。
もう一つは、円安によるものです。円安によって企業の輸出収入が増加し、利益が拡大します。
また、近年では、企業のM&A(合併・買収)が活発化しています。M&Aによって企業は新たな事業や技術を獲得し、成長を目指しますが、その際には多額の資金が必要となります。そのため、M&Aを行った企業は、内部留保を増やす傾向にあります。
内部留保の増加がもたらすメリットとデメリット
内部留保の増加には、いくつかのメリットとデメリットがあります。
メリットとしては、
将来の不況に備えることができる
新たな設備投資や研究開発に充てることができる
M&Aによる成長を支えることができる
などが挙げられます。
一方、デメリットとしては、
企業の成長意欲が低下する
株主還元が不十分になる
経済の活性化につながりにくい
などが挙げられます。
内部留保の使い道
企業は、内部留保をどのように使うべきでしょうか。
一つの考え方としては、内部留保を積極的に活用して、経済の活性化につなげることです。具体的には、
設備投資を拡大して、雇用創出や生産性の向上につなげる
研究開発に投資して、新たな技術や製品の開発を促進する
海外展開を強化して、輸出拡大や経済のグローバル化につなげる
などが挙げられます。
また、企業は、株主還元を充実させることも重要です。株主還元とは、配当や自社株買いなどを通じて、株主に利益を還元することです。株主還元を充実させることで、企業の価値を高め、投資家からの信頼を獲得することができます。
内部留保の課題
日本企業の内部留保には、いくつかの課題があります。
一つの課題は、内部留保の使い道が不透明であることです。企業は、内部留保の使い道を公表する義務がありますが、その内容は必ずしも具体的ではありません。そのため、内部留保がどのように使われているのか、国民や投資家は把握することができません。
もう一つの課題は、内部留保の偏在化です。日本企業の内部留保は、大企業に偏在しています。2022年度の内部留保上位100社で、全体の約47%を占めています。大企業の内部留保が偏在することで、中小企業や地域経済の活性化が阻害される可能性があります。
内部留保の改善策
日本企業の内部留保を改善するためには、どのような策が考えられるのでしょうか。
一つの策としては、内部留保の使い道をより透明化することです。企業は、内部留保の使い道を具体的に公表するとともに、その進捗状況を定期的に報告する必要があります。
もう一つの策としては、内部留保の偏在化を是正することです。政府は、中小企業や地域経済への支援策を強化することで、大企業と中小企業、都市と地方の格差を縮小する必要があります。
また、企業には、内部留保を積極的に活用して、経済の活性化につなげるよう、働きかけることが重要
内部留保のうち従業員に還元されたというもの
内部留保を従業員に還元する企業は、決して多くありません。
2023年9月1日に厚生労働省が発表した「法人企業統計調査」によると、2022年度の日本企業の内部留保は、554兆7,777億円と、過去最高を更新しました。しかし、そのうち従業員に還元されたのは、わずか10兆円程度に過ぎません。
内部留保を従業員に還元する方法としては、主に以下の3つが挙げられます。
賃上げ
賞与
福利厚生の充実
賃上げは、最も直接的な形で従業員に還元する方法です。しかし、日本企業は、賃上げを抑制する傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2022年度の平均賃金は、前年度比0.4%の微増にとどまりました。
賞与は、賃上げよりも柔軟に増額しやすい方法です。しかし、日本企業は、賞与も抑制する傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2022年度の賞与支給額は、前年度比1.2%の微増にとどまりました。
福利厚生の充実は、従業員の生活を直接的に豊かにする方法です。しかし、日本企業は、福利厚生費を抑制する傾向にあります。厚生労働省の調査によると、2022年度の福利厚生費は、前年度比0.7%の微減となりました。
内部留保を従業員に還元する企業が増えれば、国民の所得が向上し、経済の活性化にもつながります。しかし、日本企業の内部留保を従業員に還元する意欲は、高まっていないのが現状です。
シャープみたいになってはまずいし、困ったものです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?